ふと、おもいつきで

 ミステリー推理小説をいくつか読んでみて、ふと、おもいつきで自分も一つ何か書いてみたいなと思った。

 とはいえ、この分野はマニアも多くて、ふと、思いついたぐらいのアイデアでは、すでに誰かが先にやっていたり、そもそもミステリー推理と呼べるレベルに達していないといわれるに違いない。

 高校の時は思いついたアイデアをショートショートといわれる超短編にまとめて作品を作っていた。

 仲間たちで作品を集めて同人誌を作ったこともある。同人の一人が何を考えたかその同人誌を国立国会図書館へ納本した。一般に販売される書物は納本する決まりになってるそうだが同人誌はそういう必要はない。
 しばらくたってから国立国会図書館から納本の受取兼礼状のようなものが届いた。
 
 もうそれから何十年も創作した小説など書いていない。

 ミステリー推理と言えば、謎の殺人事件が起きてその謎を解き明かし犯人をみつけるわけだが、読者の裏をかいたり、なるほど!と思わせたりさまざまな工夫が凝らされている。そんなものは創れそうにない。

 まず犯人がいなければ始まらない。犯人が一人でないケースもある。そんな複雑な話を最初から創るのは無理だと思うので、まず犯人の数は一人としておこう。

 その犯人が一人を殺し、自分で警察に連絡する。

 到着した警官に犯人は
「わたしが犯人です。」
と真っ先に自首する。

 警官が救急隊員を呼び死亡していることの確認をする。しかし不思議なのは死因がわからない。

 死体はイスに座って苦しんだ様子もなく、まるで何気ない会話の途中でいきなり動きを止めたかのように見える。外傷はない。

 犯人と名乗る者は言う。
「わたしが殺したことに間違いありません。」

「どうやって殺したんだ。」
「思いつきです。」

 言ってる意味がわからない。
「思いつきでどうやって殺したんだ。」

「こうやれば人が殺せるかなとアイデアが思いついたんです。でもホントに殺せてしまうなんて自分でも意外でした。」

「だから実行してみたというのか。」
「そうです。ホントに殺せるなんて自分でも不思議なくらいです。簡単なんです。先ず最初に、、、」

「話しは署で聞くから一緒に来て、、、」

 警官の動きが止まった。犯人以外のその部屋の全員の動きも同時に止まった。

 「ほら、言ったじゃないですか。簡単なんです。」

 犯人はまた警察を呼んで、駆けつけた警官にこう言った。
「わたしが犯人です。」

 と、ここで終わるのだが、この犯人の思いついた方法というのは実は国立国会図書館に送られた同人誌に書いたのである。

 知りたい人は探してみてほしい。
結果としてミステリー推理小説にカスリもしなかったことはお詫びする。

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