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ゲームディレクターには何が必要か?

開発者時代、私もディレクターを何本か担当した。あまり具体的な内容は書けないが、今後ゲーム業界を目指す学生にも伝えていく意味で備忘録として記しておきたいと思う。

ゲームディレクターは大変だ。己が考えた(若しくは担当となった)仕様やアイデア、その面白さなどスタッフに丁寧に説明しながら指示を出し、みんなに気分良く仕事をして貰わなければならない。この「気分よく」と言うのは大事でミーティングなどでは論理的かつ、私などは身振り手振りを交えてオーバーリアクションで笑い取りながら説明していた(つもり)。スタッフがノリノリで仕事をすると良い物が完成する確率がぐっと上がると言うのはゲームに限った話ではないだろう。

で何が必要かと言うと先ずは「胆力」。これは必須だと思う。自分の考えたものを多くの人の前で堂々と伝えなければいけない。あらゆるツッコミにも対応が必要で「これは面白いのだ!」という自信満々のアピールが必要だ。余談だがゲームの場合プレゼンの受け手もスキルが必要だと思う。映像作品ならまだしも、そのゲームの面白さを的確にイメージ出来る人が望ましい。有名なゲームを例えに挙げてもそれすら遊んだ事がない人に全身全霊のプレゼンを行っても馬の耳に念仏と成りかねない。(その時の悔しさも含め胆力となっていくのだけれども‥)ではその胆力をどうやって培うのか?これは役割は何であれ開発スタッフとしてそのプロジェクトに愛着を持って仕事をすると身に付いて行くのではなかろうか?ゲーム開発はとても複雑だ。プロジェクトに愛着を持っているスタッフは細部までよく見ている。誰が何を作っているのか?その人はどんなスキルを持っているのか?うっとおしがられる位、興味津々に仕事をするのが良いと思う。この様な経験を積んでいくと周囲からの信頼も得られ、みんなが彼の元で仕事をしたいと感じる様になって来る。(はずだ)もちろんしっかりと経験を積んでからの話だが。

次に必要なのが「伝達能力」で、定期的に自分達のゴールを明確にし伝えなければならない。今自分たちが乗っている船がどれくらいの大きさで何処を目指しているのか?最初から少人数で小さい船に乗っているのか?大きい船だが少人数の船員で出航し徐々に船員を増やしていくのか?などを伝える事は当たり前だけどとても重要。よくコミュ力が必要などと言われるが、ここはあえて伝達能力と言っておきたい。また、分かりやすい仕様書を作ることが出来るかも重要で、下手でも良いので相手に伝わる絵が描ける様にしておいて欲しい。個人的には一番お勧めするスキルだ。

最後に必要と思うのが「相棒」。ディレクターは孤独で常に各セクションの進捗状況も把握していないといけないし、どうすれば面白くなるのかを四六時中考えなければならない。しかしプロジェクトが大きくなるとそれらを把握するのは大変だし多くの仕様書も作成しなければならない。大きいプロジェクトに限った事ではないが自分の右腕になってくれる信頼できるアシスタントディレクター(と言う呼び方は余り好きでは無いが)を早い段階で見つける事も重要である。カーク船長に対するスポックみたいなものだ。この関係はゲーム開発において理想的だと断言できる。論理よりも感情優先のカーク船長に対して常に論理的で的確なアドバイスを送る役割だ。最終的には船長の無茶振りを解決する役割とも言える。現場では無茶振りも多々あるがディレクターから直接指示されるよりもアシスタントディレクターを介してやり取りをした方がスムースに進行する場合も多い。

アイデアや企画を考えるのは、良いか否かは別として誰にでも出来る。それらがプロジェクトとして立ち上がり、あなたがディレクターとなった時にこれらを参考にして頂ければありがたい。尚、これらは私の中の理想論であり、ベテランゲーム開発者からすれば「何を当たり前の事言ってるんだ?」と言われそうだがここは許容して下さい。

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