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古今東西甘々映画レビュー:第2回松竹版「八つ墓村」99点

1976年の角川映画「犬神家の一族」を皮切りに金田一耕助の大ブームが起きた。いや、横溝正史の原作がブームになって映画が大ヒットしたのかもしれない。石坂浩二演ずる金田一耕助もハマリ役でその後何作か金田一役を務めた。そんな中、松竹映画がウチも豪華スタッフで金田一シリーズを作るぞ!とぶちかましてきたのが「八つ墓村」である。

ショーケンこと萩原健一を主演に小川真由美、山本陽子、中野良子、山崎努・・など有名俳優の名前を挙げたらキリがないほどの豪華キャストも話題だったに違いない。ショーケンの金田一もかっこいいな!と思われた方!違う!違うのである!金田一耕助を演じるのはあの寅さんこと渥美清なのだ!劇中どう見ても寅さんにしか見えない金田一はさして活躍もしない裏方的な役回りとなっている。だが渥美清の語りが心地よく事件の歴史や複雑な背景もスッと入ってくる。石坂浩二の語りも良いけど存在感といぶし銀を放つ渥美清も流石だなぁと思ってしまう。この超絶ホラータッチの金田一映画では金田一が登場すると妙な安心感が生まれ緊張をほぐしてくれる一服の清涼剤となっているだ。

そう、この映画は正真正銘のホラー映画である。冒頭8人の落武者たちがとある村に逃げ延びて来るシーンから始まる。中でも夏八木勲の演じる落武者の頭がカッコいい。この映画の中心的人物であり、かつて32人の村人を惨殺した山崎努演じる多治見要三も凄まじいが、私は夏八木勲を推したい。のちにこの落武者たちは村人に騙され惨殺されるのだがこのシーンが凄い。角川版の金田一映画より残酷で凄いだろ!と言うスタッフの意気込みがビンビン伝わってくる。そして夏八木勲のこと切れるシーンも必見だ。8人が晒し首にされ夏八木の落武者が目をカッと見開いて不敵な笑みを浮かべるシーンはトラウマ級と言えるだろう。

スペクタル惨殺シーンばかり語ってしまったが最も怖いのは冒頭の弁護士事務所での毒殺シーンだ。ショーケンを訪ねて田舎から出てきた加藤嘉演じるショーケンの祖父がいきなり血を吐き出して死んでしまう。このシーンが映画の残酷さを物語っていると改めて思う。加藤嘉と言えば伊丹十三の「タンポポ」で食通の先生を演じていたと言えば分かって貰えるだろうか?その温和な老人がいきなり血と泡を吐いてのたうち回る。普段の印象からあり得ない俳優の熱演がこの映画の世界へ観る者を一気に引きずり込んでしまう。

まだまだ語りたい事はあるのだが尽きないのでこれくらいにしておこう。もちろんこの映画は大ヒットし「祟りじゃ〜」と言う流行語も生み出したと言う事も付け加えておく。

この夏自宅で鑑賞する夏休み映画の一本として如何だろうか?ノスタルジー溢れる昭和の夏へと誘ってくれることお請け合いだ。

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