テト正月に一年の幸運を願い初詣に来るハノイの人たち

じわじわ広がる新型肺炎の不安と共に明けたベトナムのテト正月

現在世界の人々(特にアジア)の話題を独占しつつある新型コロナウイルスによる肺炎。一年の幸運を願うベトナムのテト正月(旧正月)が明けたばかりではありますが、その願いとは裏腹に、じわじわと広がる不安なニュースが増えています。

ベトナムにおいては1月23日に初めての新型肺炎患者が確認されました。確認されたのは武漢から息子を訪ねに来た武漢出身の中国人お父さんと、ベトナムで合流した息子さんの父子。これは中国国外で初めて確認された「人から人への感染」だとして大きく報道もされました。この患者の状況については、既にサンプル分析を行ったホーチミン市パスツール研究所や治療を担当したチョーライ病院の先生方などにより英語の詳しいレポートが出されています。

その後ベトナムは旧正月、テト休みに入り、新規患者報告はなかなか出てきませんでした。これに関しては「出なくて良かった」という思いと、テト正月で皆が田舎に帰ってしまった中で、多少体調悪くても「正月から病院には行きたくねえなあ」と思う人は当然多いであろうことは想像もでき、また全体的に正月のんびりモードに入った中で、感染者、或いは疑似患者の隔離などがどれだけできたのかは、多少疑問に思わずを得ません。ただ、いつものハッピーなテト関連の話題に加え、ニュースでは空港などでの体温検査、検疫強化、そして隔離患者が増えてきたことは報道されてきておりました。でも、基本的には平和なテト正月モード・・・。

そしてテト正月が終わり(と言ってもまだ雰囲気はお正月)、公的機関など多くが仕事初めの日となった1月30日(旧正月6日)、これまで南部でしか、そしてベトナムを訪れた中国人にしか出ていなかったという状況から、いよいよ北部でも感染者が確認されました。内2人はベトナム国立熱帯病病院のドンアン病院、一人はタインホアの病院で治療を受けています。三人は武漢に研修に行っていた日系企業工場の方たちということで、直接的に武漢でウイルスをもらってきてしまったものかなと考えられています。彼らは1/17に武漢からベトナムに戻ってきており、その後体調が悪くなるも入院するまで数日から10日間ほどは外で生活していたわけですから、その間にどれほど拡がったのか…?

そして今日(2月1日)に6人目となるケースが報告されました。ベトナムにおける最初の感染者となった中国人父子が途上訪れたニャチャンのホテルで働いていたベトナム人女性ということ。元々、この旧正月時期の中国人の旅行パターンとしては、東南アジアなのに意外と寒い冬を迎える(し、残念ながら観光地としてもやや劣る…)ハノイよりは、中・南部のダナン、ニャチャン、ホーチミンといった暖かいところの方が人気なはずだよなあとは思っていました。テト正月中のニュースでも隔離や中国人観光客が警戒された・観光客が返された等々のニュースはダナン、ニャチャンなど関連が多かったところなので、今後中部・南部での感染の広がりは懸念されるところです。

2月1日、ベトナム・グェンスアンフック首相は首相決定173号を出し、今回新型肺炎を「新型コロナウイルスによる急性気道炎(viêm đường hô hấp cấp do chủng mới của virus corona (nCoV))」として感染症宣言を行い、同病を緊急に対応が必要な人から人への感染のある「Aグループ」感染症と位置付けました。既に国家対策委員会のトップとしてVũ Đức Đam副首相を任命し対策にあたっています。これら正式な決定を経て、政府の対策も今後更にヒートアップしてくることが予想されます。既に様々な人の移動を制限する措置がなされてきましたが、そんな中で今日(2/1)はベトナムー中国間のフライトの停止が、ベトナム航空局から発表されました。

ビザ発給制限措置も中国人・武漢出身者のみならず、過去14日間に中国に行った人への観光ビザ発給停止にまで及んでいるようで、今後更なる色々な措置も発表されそうな雰囲気。ただビザ免除ができる日本旅券保持者の短期滞在者が、仮に入国検査でパスポート見られて「あ、最近中国に行ったね?」となったら果たしてどうなるか?など、このニュース一つとっても色々なことが起きそうと感じてしまいます。2、3月のベトナムでの各種の活動、ビジネスなどは大きな影響を受けそうです。移り行く状況の中、皆様是非各種ニュース・情報にアンテナを張っておくことをお勧め致します。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。