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【#27】異能者たちの最終決戦 四章【相馬カオル 】

相馬カオルはここ数年目覚ましい活躍を見せる若手俳優の一人だ。身長182センチでバスケで鍛えられた肉体と彫刻のような綺麗な骨格の顔は多くの女性ファンを魅了している。しかし、浴室の鏡に映る今の彼の顔は青白く怯え、不安の陰が覆っていた。「後始末」の人間が来るまで時間があったので、シャワーを浴びていた。彼は考えていた。自分が犯してしまった過ちを。彼は何度も吐き気に襲われた。もう胃の中は空っぽで、嗚咽が響いた。浴室を出ると寝室の方から物音が聞こえた。まさか彼女が甦るなんてあり得ない。それとも連中がもうやって来たのか?彼は恐る恐る、物音を立てずに寝室を覗いた。そこには女子高生が立っていた。制服姿のロングの女の後ろ姿。彼は微かにあっと声を漏らすとパッとその姿を消した。薬の影響だと考えた。そして、また頭痛がぶり返してきた。ソファに身を横にした。それから眠ってしまった。

携帯が鳴って彼は寝てしまっていたことに気づいた。慌てて電話に出た。そして、彼らが待つドアを開けた。男が3人入ってきた。小柄な浅黒い肌の男。サングラスをした細身の男。コントラバスのケースを担いだ大柄のスキンヘッドの男。どう見ても音楽を嗜むような人間には見えない。カオルはこのケースに女の死体を隠すのかと思うと恐ろしくなった。同時に今の事態が片付く事に安堵もした。小柄な男は彼を睨み付けた。

「女はどこだ?」

彼は寝室を指差した。

男たちは寝室に入ると振り向き言った。

「女はどこにいる?」

カオルはきょとんとした。

「そこのベッドにいるだろ?」

細身の男はサングラスを外し、冷酷な目を彼に向けた。

「一体どういうイタズラなんだい?」

「?」

「俺たちはあんたの遊びに付き合ってる暇なんか無いんだよ」

カオルはワケわからなかった。が、寝室に入るとその意味がわかった。女がいないのだ。シーツのシワとゲロの跡を残して姿を消してしまった。彼は言葉が出なかった。一体どういう事なんだ?彼女は生き返ってここを出ていったのか?それとも最初から全て夢か幻覚なのか?彼が呆然としていると、小柄な男が肩を掴んだ。

「おい。いい加減にしろ」

「ちょっと待ってくれ。斡旋した人間に確認してみるから」

カオルは電話し話した。

「あのヒカリって子、戻ってますか?急にいなくなって。はい、戻ってない。連絡も無いんですか?急に消えちゃって、全部終わった後なんで、問題は無いんですけど、そうですねお金はまだ。そうですね。取りに来てくれると、はい」

三人の男達はこの会話を聞いて呆れだし、帰ろうとする素振りを見せた。
小柄な男はカオルの肩を叩き言った。

「あんたクスリ、程ほどにしときなよ」

彼らは部屋を出ていった。
カオルは混乱したままベッドに腰かけた。足に何かが触れた。あの女のハイヒールだった。ベッド下に片方の靴が隠れていた。部屋中探したがそれ以外に何もなかった。まるで誰かが連れ去ったかのように。

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