【小説】異能者たちの最終決戦 【1】

プロローグ

【叫び1・とある男子高校生の叫び】

俺は決して悪い人間ではない。
では、罪を犯したことがあるかって訊かれれば、イエスと断言できる。即答で。
雨の日に学校に置きっぱなしのビニール傘を頂いたり、見逃した深夜アニメを違法サイトでダウンロードしたり、タヌキ寝入りをしてお年寄りに席を譲らなかったこともある。おっと、昨日トイレの大を流し忘れたな。あの時は急いでいたんだ。ごめんよ掃除当番の菊池。気分を悪くさせて。
もちろん、こんな些細なことだけじゃない。俺は嘘もつくし、顔色変えずに人を欺くことさえあるんだ。そのときにはすばらしい演技力を発揮する。まあ、そう思い込んでるだけかもしれないけどな。それから、気に入らないヤツをぶん殴ったこともある。確かに、漫画やドラマであるようにこぶしの痛みは今も覚えている。そういう時は、やっぱり人並みに良心は傷つくし、うしろめたくなるし後悔もする。
そう、俺はくだらない理由のために、くだらない多くの罪を『人並み』に犯してきた。きっと、俺とその他大勢の人たちとの罪の差はそれほどないはずだ。人は多かれ少なかれ罪を犯しつづけるというのが世の常なんだ。こういうのは多くの小説や映画、あるいは哲学なんかのテーマにもなっているし、決して特別なものではない。それは誰も気には留めないくらいにそこらじゅうに転がっていて、そいつが罪だとさえ気づかないのがほとんどなんだ。
繰り返す。俺は決して悪い人間ではない。これは弁解じゃない。事実だ。
うん……、俺は正直に言っているつもりだ……。
なぜか確信がもてない。それもこれも、このやっかいな「病」のせいなんだ。理解してほしいとは言わないけど、同情は幾ばくかほしい……。

告白する。

俺は勃起し続けている。一瞬も萎えることなく。
そうだ、常にだ。
えっ?なぜ勃起し続けているかって?
そんなの知るかっ!

普通、正常な男子は、性的興奮や物理的刺激によって「立つ」ことになっている。だが俺のムスコは違う。そういった世間の常識を抗うかのように、俺のは常に硬く屹立している。まるで反体制派のリーダーって感じである。寝るひまさえないんだ。俺のムスコはなにゆえそこまで存在を誇示し、何をがんばって主張しようとしているのか?この革命戦士たる彼のメッセージを俺は受け取ることが出来ない。当たり前だが、彼には口がないからだ。態度でいくら頑固に示されても俺の日常生活上では大いに邪魔でしかなく、しかも君の高尚な思想に残念ながら全く興味がないんだ。うん、そうだ。すごく迷惑している。それに、……とっても恥ずかしいんだ。本当に。

俺は強調したい。この「病気」をのぞけば普通の高校生であることを。俺はもっと、普通に、リラックスして、自由な高校生活を送りたいんだ。もてたいとか、注目を浴びたいとか考えたことすらない。俺が望むのは普通であること。ただそれだけだ。高望みしてるわけじゃないだろ?そんなつつましい俺がどうしてこんなものを背負ってしまったのか?俺は激しく問いただしたい。神様というものがいたとしたらその神様ってやつに。

「神様、なぜ俺のアソコは勃起し続けているのでしょうか?」
「俺はこの罰を負うほどの罪を犯したのでしょうか?神様!」
「神様ぁ、どうして無言なのですか?」
「神様ぁ、答えて下さい!」


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