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創業へ踏み出す前に、まず遊ぼう!机の上の“小さな社会”で資金繰りを疑似体験【ひろしま創業サポートセンター】

創業する“前”と“後”を手厚くフォローする公的機関、それが「ひろしま創業サポートセンター」です。
金融機関出身の創業マネージャーをはじめとするスタッフと、税理士や中小企業診断士、デザイナーにSNSアドバイザーといった創業サポーターが、事業計画書の作成から融資手続き、商品開発や広報、さらには確定申告に至るまで、あなたの創業の悩みに寄り添います。

そんなセンターが11月に開催したのは「資金繰り疑似体験セミナー」。財務や会計の知識を学べるだけではなく、“ボードゲーム”を使って“資金繰りを疑似体験”できるという珍しい試みです。

今回はこのセミナーをレポートします!

まずは財務の基礎知識をインプット!

中川公認会計士・税理士事務所の中川宏介さんが、財務諸表の基本的な仕組みに続けて、準備段階から創業後2~3年目までに必要な資金繰りのポイントを分かりやすく解説してくださいました。

「ここで引き返したら男じゃない!」ん、先生、何の話ですか!?
なるほど革靴で千光寺の山頂まで登られたのですね。
時折、笑いを交えつつ、参加者は真剣な表情で聞き入っています。

こちらは尾道会場(尾道市のコワーキングスペース「ONOMICHI SHARE」)。尾道水道の夜景が映える絶景のロケーション。夜のセミナーは落ち着いた大人の雰囲気に包まれておりました。

インプットは終わりましたね、では、さっそくアウトプットです!

ボードゲームを始めましょう

このセミナーで使用するのは「Founder’s Game」と名付けられたボードゲームです。founderとは、創業者のこと。4名程度のグループに分かれて、いざ“創業”です。
果たして無事に会社を軌道に乗せることができるのでしょうか。

「Founder’s Game」の開発者である藤井健史さんがファシリテーターを務めるグループにお邪魔しました。
参加者(=創業者)は、創業資金200万円を元手に3年間、事業を回していきます。

まずは創業の条件を設定します。
・開業場所は、駅前 or 郊外
・有料のセミナーで学ぶ or 独学
・社員を雇う or 自分だけで頑張る
など、自分の想定するビジネスを念頭に必要なものを見極めます。この時点で、早くも手元に残る資金に差ができましたね。

では、実際に模擬事業を始めます!

①経営者として、様々な決定を下します
設備投資や広報、研修(人材育成)などに投資していき、必要があれば銀行から融資も受けます。
「生産力」「顧客力」「人材力」のどこを磨くか、先行投資(借金)はどこまで許されるのか…「う~ん」リアルさながらの悩みが参加者を襲います。

②経営には思わぬ出来事も
計画通り物事が進まないのが世の常。“創業者”がカードを引くと「嬉しいハプニング」と「悪いハプニング」がランダムに発生する仕掛けです。
事業の協力者が現れたり、急に社員が退職したり…。「え~今、雇ったばかりなのに~」思わず笑いがこぼれます。

③さあ、決算です
給与を支払ってから売上が発生、つまり「支出が先」で「収入が後」なんですね!
この「給与を先に払う」ことが資金繰りの重要なポイント!実際の事業でも、ここのタイムラグを適切に考慮することが大切です。

こうしたやり繰りを3期分行いながら、事業のスケールを目指した結果は…?

ほとんどの創業者が赤字決算でした!(他のグループも同じような状況です。)

もちろん実際は、4年目以降もありますし、業種や地域によって条件も異なりますが、「自分がやりたい事業の場合はどうだろう?」と考えながら取り組むことで、ゲームを楽しみつつも、有意義な研修となったようでした。

「Founder’s Game」開発者 みらい株式会社 シニアマネージャー 藤井 健史さん

藤井さんは、元々大手通信企業にお勤めでしたが、広島県が主催する「イノベーターズ100」というプログラムに参加されたことを一つのきっかけとして転職され、現在はコンサルティング業務と並行して、創業者向けの事業も手掛けられています。

そして趣味でもあるボードゲームで、創業時の資金繰りを疑似体験できる「Founder’s Game」を開発されました。

――大企業を離れてコンサルタントになり、一番変わったことはなんですか?

仕組みの中でどう立ち回るか?という世界から、仕組みをどう作るか?という世界に変わったことです。
当社は小さな会社ということもあり、どの領域のどんな課題に対して、誰とチームを組み、どう取り組むか、全て自分次第です。メンバーそれぞれが小さな会社を持っている感覚で、自分や仲間の得意領域を活かし・補い合うことで、お客様に最大限の価値を提供するために模索する。そのための仕組みづくりそのものが一番変わったことであり、一番面白いと感じることです。一番難しいと感じることでもありますが(苦笑)。

――自分の特技を活かして新しい事業に取り組む面白さは、どんな点にあるのでしょうか。

海外では、「好きなこと」「得意なこと」「世界から必要とされること」「お金になること」が重なる領域を「ikigai=生きがい」と言うらしいのですが、まさしく生きがい探しができることです。
今まで好きでやってきたことが人から必要とされて、お金まで頂ける経験は、なんとも言えない充実感が得られます。
もちろん苦労・苦悩することも日常茶飯事ですが、それすらも前向きに捉えられるのが、一番の面白さだと思います。

――ボードゲームを通して、起業希望者や起業した人に感じてほしいことは何でしょうか。

ボードゲームは“小さな社会”であり、ボードゲームを遊ぶことはその小さな社会での“疑似体験”だと考えています。「資金繰りってこういうことなんだ!」と体感することで起業を前向きに捉えてもらえたり、起業して実際に資金繰りを考える時に「ゲームではああやって失敗したな…こうしてみよう」という判断材料にしてもらえたらなと思っています。
もちろん起業するにはお金だけでなく意志・事業内容・人の要素が重要だと考えているので、今後はその領域もボードゲームで表現できたらと考えています。

ボードゲームって遊ぶだけじゃないんですね!
新しいことに飛び込むときには大なり小なり不安がつきものですが、今回のセミナーの参加者はゲームでの疑似体験が創業に向けた自信につながったかもしれません。


EDITORIAL NOTE —小林のつぶやき

2年前、私も組織を飛び出して、創業という道を踏み出した一人です。
まさに当時は不安もワクワクもたくさんありました。いえ、今もあります。
「好き」「得意」「必要」「お金」が重なる領域…私にとっては「書く」という行為がそうでしたが、参加されたみなさんの「〇〇」が気になります。これから力強く一歩を踏み出し、その想いが形になったころ、ぜひまたお話を聞かせてください!

『いま、い“こ”』 小林祐衣

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