長野県の山に登る前に知っておいて欲しい7つのこと
長野県の緊急事態宣言が解除されました。都市部も順次解除されていき、越境の規制も緩和されていくと思います。
ずっと登山に行きたくてうずうずしていた方も多いでしょう。「これでやっと登山に行ける」と思っている方も多いでしょう。
ただ、長野県の山に登る前に知っておいて欲しいことがあります。
1.登山自粛の要請が出ている山域があります
日常生活での「外出自粛」は解除されました。ただ山域によってはまだ「登山自粛」の要請が出ています。主には北・中央・南アルプスや八ヶ岳といった山域になります。
地方自治体や地域の要請にしたがいましょう。大きな看板を無視して横を素通りするような登山者にはならないでください。
状況は日を追って変わりますので、最新の情報を確認しましょう。
2.営業していない山小屋があります
「登山自粛」の要請が出ている山域では、まだ営業を再開していない山小屋があります。これは登山者の身を守るためでもあり、従業員自身の身を守るためでもあります。
今、山小屋には従業員さんが入っています。小屋を維持管理するためであり、営業を再開するための準備で頑張ってくれています。
山小屋が営業していないので登山自粛をお願いしている、とも言えます。
登山の途中で天候が急変した場合、思っていた以上に天気が荒れた場合、怪我や体調不良で予定通りに行動できなくなった場合、山の上でそんなピンチな状況に陥ったらどうしますか?山小屋は「宿泊施設」であるとともに、「緊急避難場所」としての役割を担っています。宿泊の予約をしていなくても、行動できなくなった登山者を受け入れる施設でもあります。その施設が今営業していません。
「日帰りだから関係ないや」「テント泊ならいいんじゃない?」と考えないでください。
3.登山口の駐車場が閉鎖しています
県からの要請を受けて、閉鎖している駐車場があります。主には「登山自粛」を要請している山域の登山口の駐車場にあたります。こちらも事前に確認してから出かけるようにしてください。
無視して侵入したり、路上駐車したりしないでください。良識のある行動をしてください。
残念ながら閉鎖している駐車場に車を停めたり、路上駐車の列ができているというのが現状です。関係者の方が悲しんでいます。
4.登山道の整備が行き届いていない可能性があります
多くの登山者はあまり意識していないかもしれませんが、私たちが安全に登山できているのは「登山道を整備してくれている方」のおかげです。
残雪期にトレースをつけてくれる、ステップを切ってくれる、ルートがわかるように紅がらやリボンをつけてくれる、そうやって安全に歩けるようにしてくれている方がいます。また雪解けや雪崩などの影響で毎年道が崩れたり、落石や倒木があったりするのを整備してくれている方がいます。
多くは山小屋関係者の方々なのですが、今年は十分に整備が行き届いていない可能性があります。例えば県外に住んでいるので、県外移動が自粛のため小屋に入れていない従業員がいたりします。また小屋の改修に精一杯で、道の整備にまで手が回っていない可能性があります。
いつも通りに整備されているわけではない登山道では、いつもなら起こらなかったかもしれない転倒・滑落・落石・道迷いといった事故が発生するかもしれません。
5.地震が群発しています
4月下旬から長野県中部の岐阜県境付近で地震が続いています。県内の方は新聞やニュースで報じているのでご存知でしょう。ただ県内でも北信や南信の方は、大きな地震のことは知っていても、小さな地震のことは知らないかもしれません。実はかなり頻繁に揺れています。
地震の影響で雪崩、落石、地割れなどが発生しています。倒木や崖崩れの可能性もあります。登山道だけでなく、登山口へ通じる道路にも影響があるかもしれません。
6.救助体制が従来通りではありません
長野県には長野県山岳遭難防止対策協会(長野県遭対協)という仕組みがあります。警察の救助隊に加えて、山小屋、山案内人組合など、登山に関わりのある人たちが協力して遭難時に救助活動にあたる、というものです。つまり、もし山で遭難し救助要請があった場合、県警の山岳救助隊の他に常駐隊や山小屋従業員なども現場に駆けつけて救助活動をします。
現在コロナの影響で、例年のような体制が整っていません。したがってもし救助要請があっても、例年のような救助活動ができない可能性があります。また感染予防対策を十分に取ってから出動するため、時間がかかる可能性があります。
7.地方の医療現場は困窮しています
地方の医療現場はもともと医療従事者が不足している状態です。コロナ対応のための医療資材も不足しています。つまり地域医療を維持するだけで手一杯、というのが実状です。
また地方は「高齢者が多い」というのが特徴です。通院している方も多いです。
山で遭難・救助された場合、地域の病院に搬送されます。その病院が、医療従事者が大変な状況の中日々働いていることを知ってください。
これらは長野県や地域の自治体、関係者が発表している内容をまとめたものになります。また医療従事者、山小屋関係者、救助隊である私の知人から聞いた話をもとに加筆しています。立場上、個人的な思いや声を上げられずにジレンマを抱えている方が多く、私が代わりに発信している部分もあります。
“自粛”とは「自分から進んで、行いや態度を慎むこと」です。つまり強制や禁止ではなく、罰則があるわけでもありません。個人の判断に委ねられています。
その判断をする際に、「山に登りたいから行くんだ」という個人の欲求を優先するのではなく、長野県の状況、要請、背景、現場の思いもぜひ考慮してください。
登山は「自力」のようで、実はかなり多くの方の「他力」によって成り立っていることを知ってください。
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