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『ボードゲームよもやま話』バリアントルールはどう作られているのだろう?

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■はじめに

いつも記事を書くときには頭の中に結論めいたものがあり、それを説明するために前段の文章を書いたりしているんですが、今回はいつもと違って具体的な結論が無い形で書いています。

今回のサブタイトルは「バリアントルールはどう作られているのだろう?」ですが、実際にどうだったかを追って調査するのはなかなか骨が折れる作業になるので、ここは大雑把にバリアントルールやハウスルールについてつらつらと書き出してみています。

■アグリコラのドラフトルール

アグリコラ

バリアントルールの有名な例として『アグリコラ』のドラフトルールが思い浮かびます。『アグリコラ』ではカードをドラフトしてプレイするルールが一般的に親しまれていますが、そのルールは最初から『アグリコラ』で採用されていたわけではありません。

自分の持っている『アグリコラ』の版では職業・進歩カードはただランダムに配られるだけという記載だけで、ドラフトルールについては記載がありません(後の版ではどうなってるか確認していません)。

アグリコラのカード

ボードゲームギークのアグリコラのフォーラムの中でカードドラフトについての記事が初めて書かれたのが2009年2月の事のようです(それ以前のものは単に発見できなかっただけかもしれません)。
アグリコラの発売は2007年の事なので、この事実からアグリコラのドラフトルールが初めから備わっていたものではないことがわかるかと思います。また、プレイヤーの要望によって始まったバリアントである事も同様です。

アグリコラ-チェスタードラフト |boardgamegeek.com

BGGのアグリコラのフォーラム

*ロチェスタードラフトとはピックされるカードが全てオープンされている状態から、そのカードを誰がピックしたか分かる形式で行われる様なドラフトの形式のひとつ。

『アグリコラ』のような有名なタイトルであっても、このようなバリアントルール生成の経緯があるという事実は、色々な示唆を与えてくれると思います。
例えば、一つ考えられる事としてどんなに面白いゲームであっても改良すべき点があるということ。アグリコラのような名作と言われているタイトルであっても、そういった部分があるということ。
もう一つ考えられる点では、バリアントルールは実プレイの試行によって磨かれるということ。先のアグリコラの例では、BGGのフォーラムが先行してバリアントルールが形作られて行ったと仮定するならば、まず最初にロチェスタードラフト形式が想定されていた様子ですが、現在ロチェスタードラフトが採用されている例はあまり聞きません。
発端のアイデアがドラフトを採用するという考えでしたが、そこから試行する事で最適と考えられるバリントが採用されているものと考えられます。

■いくつかのタイトルのバリアント

⚫️GWTのスタート・バリアント

GWT

自分の記憶に残っているバリアントとしてグレート・ウェスタン・トレイル(以降GWT)のスタートバリアントがあります。
GWTではバリアントの一つとしてゲームスタートの手番順によってスタート時の手札枚数を増やすバリアントが存在します。このバリアントは好評だったのか、GWT第二版のルールブックからは記載がある様です。GWTには初版から第二版へ細かな変更点がいくつかあり、プレイヤーの実プレイによって強弱のある部分が見出されて調整されたといったところです(初期都市のカンザスの得点とお金とか、盤上のルートの変更とか)。
GWTのスタート時の手札枚数バリアントはとても良くバランスが出来ていて、1stプレイヤーが好きなアクションタイルから選べる事から強めで、所持金の傾斜がかけられていましたが「そうは言っても強いよねぇ」と言った感じでしたが、バリアントでは後手番はデッキのめぐりを組み立てる事でバランスが取れるようになったと思います。

GWT
カーネギー

⚫️カーネギーのスタートバリアント

カーネギーではバリアントと言っても良いのかわかりませんが、発売当初からのルールにつく拡張ルールとしてスタートバリアントがあります。

カーネギー

カーネギーではスタート時に資源をどれだけ持って始めるかを初期の所持金から支払って始めるバリアントがあります。
タイルを購入する為に使う商品キューブや自分の会社で働かせるワーカーの数やその移動回数を、全プレイヤー固定の所持金から支払って決められるというものです。さらに、そこで多く支払ったかによってスタートプレイヤーを決める事ができます。
残念ながらカーネギーをこのバリアントで遊んだことはありません。セットアップから考える事が多すぎることや、スタートプレイヤーを取れるかどうかでドラスティックに変わりそうなことから、このバリアントで遊ぼうとはなりませんでした。

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