見出し画像

【仕事日記】一週間の孤軍奮闘

0.仕事のときのボクはボクじゃないと思ってた

まずはじめにどうして仕事について書こうと思ったのかを序文としてお伝えしようと思います。

ボクは普段プライベートでは仕事の話をまずしない人間です。友だちからその手の話題を振られても、専門的な仕事だから話しても分からないよと言って、その場を流します。

仕事の話をしようと思えば、たとえ相手がその専門用語に疎くても砕いて話すことはできます。でもやらないのは、今の仕事が自分がやりたかったものとは全然違うものだからです。学生時代、就活がはじまる直前までボクは持病を抱えていて、思うようにやりたいことができず、就活解禁がされたときも手術入院をしていてスタートダッシュに遅れました。

結局は安定性を求めていまの会社に入りました。でも心から誇りに思えない仕事のことを自分の口から「これがボクの仕事です」と堂々と言うことは、したいと思えませんでした。仕事の自分とプライベートの自分を完全に区切って、プライベートで行うことの中に(noteに投稿することもその一つです)承認欲求を見出そうと藻掻きました。いまもそれは変わらないと思います。

だけど、仕事がボクの時間の大半を占めていることは否定できません。仕事をするなかで変化する自分を振り返り、ときに言語化することをしなければ自分の発展可能性はごく限られたものとなってしまう。     

時間は加速していて、カレンダーをめくったらもう最後のページでした。師走の冷気が漂い、街にはクリスマスソングが流れています。もうすぐで一年が終わる。その前にまるで仕事の時の自分は偽りの姿だといっているその考え方を棄てて、仕事の自分も自分として受け入れよう。仕事の中で気付いた発見や、怒り・喜びもこうして文章の中に紡いでいこう。そう心に決めてこの文章を書き始めました。

別にたいして難しくないことでした。ボクにとって文章を書くことは自分自身を発見するための自己との対話です。この場所では周囲に見栄を張る必要なんてないからすごく気楽でした。

1. 11/26(火) 案件着手

まずは簡単にどんな仕事をしているかをお伝えします。

ボクの仕事はクラウド(ITシステム基盤)の構築/維持管理業務で、手短に言うとお客さんの依頼に応じて、クラウド環境を(建築で例えると)リフォームしたり増築したりするような仕事です。

増築のほうは設計から開始するので1〜2週間規模の期間を要しますが、リフォーム的な案件は既存のものに少し手を加えるだけなので1,2日で大抵済みます。ボクが先週いっぱい携わってたのは後者で、サーバーの動く場所をA機器からB機器へ引越しさせるみたいな案件でした。

着手し始めたのは火曜日。リリース日は土曜日。水曜日には全て完了して1週間の残りは溜めた雑務をゆっくり出来ると高を括ってましたが、結局その案件に1週間全てを奪われることとなり、金曜の夜は満身創痍な状態と化しました。

これは所謂定型業務で、レベル1くらいの難易度のものです。しかしそれは引越しする台数が指で数えられる程度の場合でした。今回の引越し台数は100台前後という鬼畜ぶりで、引越し先がいくつも分散しているという内容でした。それでも量が多いだけでやる事はいつもと変わらない。一つ一つ丁寧に手順を踏めばできない事は全然ない。
この日は順調に進み、定時ごろには全ての設計を終えられました。残りは明日にしようと余裕な気持ちをぶら下げて帰りました。おいしいビールを飲んでゆっくり眠れました。

2. 11/27(水) 欠陥だらけのデータベース

サーバーの引っ越し方法は昨日の時点でまとめられたので、次に考えることはデータベースの更新についてでした。データベースにはサーバーが動いている番地の情報も記録されていて、これにズレがあってはいけないということで、引っ越し先の番地名へ書き換えてやる必要がありました。

意気揚々と業務を開始しはじめたところで、信じたくない実態が目に移り、思わず「はっ…?」と言葉をこぼしてました。調べてみるとそのデータベースが正しい情報(サーバーの番地)を記録していなかったのです。もちろん大半は正しいデータを記録していて、間違っているのは3~4割ほどです。しかし、それだけ間違っていれば安易に更新するわけにはいきません。更新する量はサーバー数×4であり、その数は400を超えていました。ひとつひとつデータベースを洗い出し、正しい情報へ更新するために正確に見取り図をまとめあげなければならなくなりました。

データベースを洗い出す作業と更新を正しく行うための見取り図づくり、更新用SQLコマンドを作成・テストするのに丸一日を要しました。どうしてこんなひどい事態になっているのか上司に訊くと、データベースの更新作業はつい最近まで、いつ・どこのチームが実施するかの運用ルールが定まっていなかったという。その上司が上の責任者に進言して、今回うちが受け持つ案件で行うこととなったらしい。

まったくいい加減なもんだ。

3. 11/28(木)~11/29(金) 最大のピンチと仲間の助け

木曜日の朝、最大のトラブルが発生しました。あとはまとめた資料を手順書に集約させてやるだけだと、のんびりした気持ちで出社したのもつかの間、いつものようにメールをチェックすると昨晩主任から送られてきたものを見つけました。

そこには急きょお客からの要望で要件が変更になった旨が書かれていました。変更といっても少しだったらいいのです。そんなことは日常茶飯事で修正にも時間はあまりかかりませんから。しかし、内容をみるとそれはボクのこの二日間の奮闘の7割が水泡に帰すほどの変更でした。

まず引っ越しするサーバーの台数が増えました。ただ増えるだけならよいのですが、引っ越しの方法に条件がつけられました。

これまでの話は、例えると一軒家Aに住んでいた家族4人が全員で一軒家Bに引っ越すといったようなものでした。4人分の荷物を箱に詰めて何も考えずにBへ運べばよいだけだったのです。

しかし新たに提示されたのは、家族4人のうちの3人は一軒家Bへ引っ越して、長女だけが一人暮らしを始めるためにアパートCへ引っ越すといったような話でした。その場合、何も考えず運ぶということはできません。Bへ行く3人の荷物とCへ引っ越す長女の荷物を区別してやり、長女の荷物がBへ行ったりすることは絶対起こしてはなりません。

ボクはそのような引っ越し作業を既に社会で利用されている100台ものサーバに対して遂行しなくてはいけなくなったのです。当然、1台でも運ぶ場所を間違えたらアウトです。

泣きそうな気持ちでした。2日間の努力の半分以上が無駄になり、これから再び立ち向かう案件の複雑さと責任の重さを考えると、絶壁を目の前にした心地になりました。だからといって立ち止まるわけにはいかない。岩場に手足をひとつひとつかけて登るように、また一から設計をやり直しました。設計は午前中にある程度やり終え、そこでやっとボクはチームのメンバーに協力を仰ぎました。

手を挙げてくれたメンバーにはデータベースの更新の手順作成をお願いしました。設計書と過去の参考資料を渡し、あとは任せますといってボクは引っ越しの手順書づくりに着手しました。上司や先輩に相談しながら少しずつ形を作り、最後は一人で残って黙々と手を動かし、結局手順書が最低限の質に達したのは終電間近の時間でした。もうオフィスには誰一人残っていません。

荷物をまとめた後、要件変更によって各方面に事務連絡を行う必要があったことを思い出し、その対応と手順書のレビュー依頼をやってくださいとだけ書置きを残しました。「これで昼の会議には間に合う」「オレはやりきった」。自画自賛を唱えて精神を奮い立たせずにはいられませんでした。

翌朝目を覚ますと左腕が持ち上がらなかったから驚きました。1,2分かけて持ち上げた腕は棒のようで、少しだけプルプル震えていました。右腕は特に変わりなかったから、単に寝相が悪くて血の巡りが悪くなったせいでしょう。

1週間の最後の日は比較的のんびりしていました。まさにエピローグのようなものです。それでもサブリーダーから手順書のミスを指摘されて、それらをひとつひとつ直したり、会議で案件の説明をしたり、どうこうしたりしているうちに日が暮れていました。

夕陽に黄昏ていたらまた主任から連絡が来て、また要件が変わったと言われました。昨日の疲れが重くてその日はずっと元気が出ていなかったんですが、ここまでくると笑えて逆に元気が出てきました。

さすがに一人じゃ対応できません。引っ越しの本番は翌日に迫っていましたから。ボクはチーム全員に手伝ってくださいと声を上げて、キビキビと作業を振りました。そのとき出した声の大きさと迅速な立ち回りに自分自身が驚きました。もうなにがきてもやり切ってやると開き直っていたからでしょうか。

全員総出で動いたのでものの2時間でやり遂げました。仕事を終えたこと自体に達成感は感じませんでした。ただひとつ嬉しかったのは最後にサブリーダーからもらった言葉です。

「よくこんな仕事をやってのけたね。要件を確認したけど、ボクだったら一時間で発狂するよ。てかしたよ。だってこんなのパズルじゃん。間違えないでできるはずないじゃん」

また別の人は「これ一人でやるのは気負いすぎだよ」と心配してくれました。

これらの言葉を聞くまでは自分の仕事が誰でもできる難しいことではないと思ってました。ここまで手こずるのは自分のスキル不足・やる気不足で(実際それもある)、このくらいは1人でやってのけねばと気負っていました。

仕事を他の人たちに分配しはじめたのも、急な要件変更が発生してからでした。はじめから案件の難易度を見切って、協働して対処すべきだったのかもしれません。

まあこれも一つの経験です。気負い過ぎず任せる部分は信頼して任せる。それが最終的に最良の結果を生む。今回ボクが積んだのはそういう教訓を含んだ経験だったと思います。

ちなみに翌日別のメンバーがサーバーの引っ越し作業に取り掛かった所、お客さんが望んだような手順になっていなかったとのことでした。ボクらがずっとにらめっこしていた要件資料は古いもので、お客さんが新しく作った資料がこちらに渡されていなかったということでした。(ボクらが対処した変更は主任から直接指示を受けていた部分のみだった)

結局、ボクの苦労のほとんどはいい加減なお客のせいだったというオチです。周囲がちゃんと仕事できていれば誰も夜遅くまで残業せずに済んだのです。

この仕事をしていて、誰かのちょっとしたミスのせいでたくさんの人の残業時間が膨らむことがよくあります。でもミスをする側にボクがなることもいつかあるだろうし、そのときのために修羅場をくぐって成長したり、偉い人に恩を売っとくのが得策と考えることにします。

こうして文章に書いたらだいぶすっきりしました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?