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『木曜日にはココアを』青山美智子

『木曜日にはココアを』青山美智子(宝島社文庫)

友だちにおすすめされて読んだ本。

甘いところだけ切り取った様な物語。人生の中の素敵な奇跡とか最高だった瞬間たちだけをギュッと詰め込んだような作品。

いつも毒だらけで、歪んだ物語がすきだから、人に勧められなかったら絶対読んでなかった作品。

まんまるでふわふわ。絵本を読んでいるかの様なことばのやわらかさ。こういうやさしさって嬉しいなとか、こういうロマンティックな恋っていいよなあとか、理想みたいな夢みたいなお話ばかりだった。と思ったけれど、実際の自分の人生にもそういう夢みたいなことや奇跡ってたくさんあったなあと気づいた。時々、立ち止まってそういう素敵なシーンのことを考える時間も必要なのかもしれない。ちょっとできすぎて息が詰まるような物語も愛せるようになれたらなあ。

この物語をすきって言える人は優しくて純粋な人なのかなあと思った。

失敗したたまご焼きを見て「菜の花畑みたいなの。すっごくきれいでおいしそう!」

って子どもが言うシーンはジーンとした。のに、さっと冷静に、実際の子育てってそんな甘くないよ、そんなこと言ってくれないよ、こういう最悪な時に更に最悪なこと言ってくるんだよ。みたいな穿った気持ちになってしまった。いや、この物語と同じように素敵なタイミングだって絶対あるはずなのに。

あと、おばあちゃんの話。

「私はそのとき、心がくすんでいたから、やさしい進一郎さんを傷つけたくなったのね。」

ってセリフの「心がくすんでいたから」って表現いいなあって思った。頭の中で心がくすんで、視界がぼやけてるような映像が浮かんだ。

読み終わって、数時間経って、ふとこの本のことを考えてみたけど、頭の中にどのシーンも鮮明に残ってることに驚いた。オーストラリアなんて行ったこともないのに。

綺麗なお話がたくさん並んでる綺麗な作品だったなあ。

汚いものとか欠けてるものがすきだけど。

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