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第3話:米国の品目別非特恵原産地規則《化学品分野(HS第28類~第40類)》

(2021年3月、JASTPRO令和2年度 調査研究報告書『非特恵原産地規則 ~ 米国、EU及び我が国における主要製品分野に適用される非特恵原産地規則の概要と比較~』第3編第1章として公開。2022年1月2日、note に再掲。)

 日・米・EUの非特恵原産地規則の中で品目別規則を有するのはEUと米国のみです。そのうち、EUの品目別規則は法的拘束力のある附属書22-01とそうでない調和規則提案とに分かれます。一方米国は、NAFTAマーキング・ルールとして北米域内の貿易にのみ適用される表示用の規則とそれ以外の地域との貿易に適用される実質的変更に係る判例法とに分かれます。例外的に極めて簡素な規則を維持している我が国では、完全生産品に加え、原則としてHS項変更を伴う加工によって原産性を付与します。。

 本品目分野は、HS第6部(第28類から第38類まで)は化学工業(類似の工業を含む。)の生産品及び第7部(第39類、第40類)はプラスチック及びゴム並びにこれらの製品を含みます。

1.  実質的変更に係る判例法・事前教示事例

 化学品分野における税関の判定事例として、判例の引用も豊富な以下の医薬品事例を紹介することとします。米国税関は、医薬品分野の実質的変更判断において、一貫して加工の複雑さを精査し、かつ、最終製品が原材料の重要な性質及び特性を維持しているかを重視します。この観点から、米国税関は医薬品のバルク状態から処方された投与剤への加工は当該物品の実質的変更とは認めていません。その一方で、最終製品の効能を著しく向上させる加工に対しては実質的変更を認めているものの、単に薬品の投与手法の変更だけでは実質的変更を構成しないとしています。したがって、薬品の腸溶剤化は人体への投与時期を遅らせるものであっても、実質的変更があったとは認めていません。さらに、実質的変更の判断に当たって付加価値基準の使用を否定しないものの、ギブソン・トムセン判決由来の伝統的な「名称、特性及び用途の変更」テストを重視するとし、本件においては名称、用途の変更を認めず、特性の判断においても単に些細な物理的変更は化学式の変化がない以上変更があったと認めない旨の判断を下しました。

《米国税関による判断事例》 (米国税関のオンライン検索システム「CROSS」から引用)

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