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マーケットは生まれてくるものではない、創るものである。IMADEYA AGING LABORATORYの挑戦

代表小倉秀一の考えるIMADEYA AGING とは

1:日本酒を取り巻く現状

日本酒のピークは昭和48年、そこから比べると現在消費量は7割減まで減っている。希望の光としては、大きく減っているのは大量消費のパック酒、特定名称酒は健闘している。ただ大手が非、というわけではなく、日本のマーケットがシュリンクして行っている。

その中で世界に誇る日本の輸出産業の一つ、日本が誇る水と米、匠の技術、麹の発酵文化から成り立つ日本酒があまりにも安すぎる。日頃から伝えているが日本酒はもっと適正評価されるべきだ。

商品の価格が安すぎるため利益が少なく、蔵人への労働条件に反映されないため業界から人がいなくなり働けない業界になってしまっている。どこの蔵も常に蔵人を募集している状況が当たり前になっている現状。

全ての課題は利益の幅がないこと、だから蔵は利益率を上げるべき。何も無下に高くしようという事ではなく、もうベースを上げないと続かない業界になっている。蔵元は毎年設備投資が必要、支払いが必要、どこも大変な状況で経営をしている中、量が売れない時代になったのであればリッター単価を上げないといけない。

日本酒はワインと比べてリッター単価の大きな差が存在している。海外の方から見れば、スタンダードの純米酒と純米吟醸酒が2ドルしか違わない理由は?

ブルゴーニュワインならACブルゴーニュとプルミエクリュの差は何倍?今後リッター数で売る時代ではなくなっていく。

今の飲食店はデフレを通り越して、昔よりも安い値段で商売している。社長が40年前新入社員の頃、初任給11万前後だった時代に社内飲み会の会費は5,000円だった。今は飲み放題付きで3,000~4,000円の業態もあり、お酒が異常に安い、安すぎる。

かねてより、飲食業界での致酔飲料であるアルコールを飲み放題で提供することは、先進国として、あまりに無責任な販売方法であり、止めるべきと考えている。

これが、飲食業界の労働生産性を下げる大きな要因となっているし、提供されるお酒の価値を伝えるチャンスロスとなってしまっている。しかし、飲食店現場では、宴席でのドリンク提供・アルバイト確保問題など課題が多いのも事実であるが、、、

海外視察に行く中で、飲み放題というのはありえない、1杯10ドルが当たり前。日本が生み出すお酒の価値を下げたくない「適正飲酒」という言葉を使うべきだ。

先の未来、地酒流通が今の半分になる時代が来ると思っている。それに危機感を強く感じている。今、蔵はどこの層に販売をして欲しいかビジョンが明確になってきている。フラッグシップはトップレストランに販売してほしい、と蔵元から要望がある商品もあり、IMADEYAはそのブランディングのサポートをさせて頂いている。

今までの地酒業界は蔵から酒屋へFAX1枚送るだけで全量売れていた、これは異常な事だったと理解するべきだ。何故なら、そこには蔵元&パートナー特約店とのマーケットでの役割共有の欠如があるからである。

地酒流通は世界から見るとおかしい、1本も1,000本も同じ価格で販売をしている。どこで買っても同じ価格というのは素晴らしい反面、我々は小売業として仕入れたものに対価をオンして行くべきだ。

IMADEYA AGING LABORATORY テイスティングルーム

2:エイジングにトライする理由

匠の技で出来上がっている日本酒の価格は現状あまりにも安すぎる。蔵元のステージをさらに上げて行くことを使命としている我々はマーケットクリエイターとして文化創造を担うべきだ。

その1つとして5年前にテストの為の熟成庫を作った。かねてから「マーケットクリエイターとして銘柄軸だけの商売で終わってしまって良いのか」と考えていた。

マスからハイエンド商財まで幅広く扱っているが、すでに商流のクラフト化は始まっている。このチャレンジで適正対価はもらうが、それは単純に日本酒が安すぎるから。純米吟醸酒で1,500円なんて、クオリティを考えたらありえない。(もちろん高価格帯が売れやすい東京市場と地方を比べて地域性があるのは理解した上で)

でもそのチャレンジをすれば、会社は生き残れるのでは、と思いトライしたことが今回のIMADEYA AGING LABORATORYに繋がっている。

熟成温度に関して、氷温熟成は時間がかかり過ぎてしまうので4〜8度で味わいをある程度進め、4年ぐらいでリリースが理想的。1年間熟成させて2割の対価をのせる。

熟成できる酒質の方向性はある程度わかっていて、晩稲、多酸系、オールド系酵母は可能性があり、カプ系、生酒は向かない。でも例外もあるので可能性を狭めすぎるのも良くない。定点観測しながら将来性があるかを探り、その先の熟成年数は都度考えていく。

IMADEYA AGING LABORATORY 熟成庫

IMADEYAは現在5000軒強取引先がある強みを活かして、飲食店向けAGING試飲会などを行い、営業が提案して行きながらアンバサダー店を増やしていく。AGINGの文化をつくるのに飲食店の力を借りないと伝えられない。

感覚的に特定名称酒は7,8割飲食店で飲まれているのではないかと思う。店頭でもアクションも頑張るが、アンバサダーの飲食店に伝えてもらうことで、よりマーケットに落とし込める。よって飲食店にはワイン業界では当たり前である二重価格の概念・アンバサダー価格を提案している。

なぜならマーケットフィーがかかるから。定点観測にも費用がかかるし、飲食店もスタッフ教育で試すのにフィーがかかる。

AGINGを体感してもらい経験値・実践知を積む。せっかく試して頂くなら、おもてなしとしてより良い環境でAGING体験をすることが付加価値に繋がる。その為に作ったのがこのIMADEYA AGING LABORATORY。

3:弊社が担う役割

IMADEYAが担うべき役割とは「マーケットは生まれてくるものではない、創るものである」

大衆酒場からミシュラン店までを顧客に持つ弊社の「味わいのポートフォリオは多くあるべき」。

我々がトライする次の価値創造は「時の経過」。
日本酒は「時の経過」による価値創造がもっと必要だ。

重要な事は、嗜好品なので「美味しくなります」ではなく「時の変化を楽しんで下さい」と伝えること。是非ポジティブな捉え方をしてほしい。

ワインの香りは熟成を経てトリュフに変化したりするが、日本酒はそこまで大きな変化はしない。100人に良い!と言って欲しい訳ではない、嗜好品なので楽しみの一つに育てたい。

熟成によって柔らかなタッチになり、複雑さが現れる。日本酒単体で楽しむのはもちろんだが料理と合わせる可能性を考えるといくらでもステージがある。日本は良いものがわかる文化なので、適正価値で時の変化を楽しんで頂ける市場をクリエイトしていく。

また日本ワインの場合、ワイナリーの資金的な問題で熟成用に残さずに全てリリースしてしまう所が多い、なのでそれを弊社が代行する。売上の8割が輸入ワインの中、日本ワインへもっと取り組んで行きたい。

IMADEYA AGING LABORATORY テイスティングルームの日本ワインセラー

4:ポジティブ評価

減点法である日本酒に対して、加点法であるワイン。ワインは良いところを見つけてあげる文化、これは日本酒に欠けている部分。ソムリエ文化は熟成した日本酒を評価してくれる。我々流通業はアラ探しではなく「ネガティブを上回るポジティブ」を提案しなければならない。

もちろん非の意見も出ることはわかっている、しかし受け入れる素地は前より広がっていると感じている。ポジティブ評価の文化を作りたい

ナチュールワインが良い例。オフフレーバーがあるものも多いが、マーケットが出来ている。日本酒は精米歩合競争はもう終わった、その先はAGINGが一番の可能性だと感じている。

ものには適正な価格、対価がある

すでに高額である田酒のバックヴィンテージもIMADEYA GINZAでは有料で試飲して、納得して買って行ってくださるお客様がいる、これが評価だと思う。

日本の食卓は世界に類を見ないほど多様化している。高い水準で様々なジャンルの料理を食べている。多彩な食卓に合わせるお酒の幅も広い民族、つまり活躍できるステージが多く、可能性に満ちている。

5:将来に繋ぐもの

日本酒はシュリンクマーケットにある中で、トレンド変化の消費だけで終わっている世界。我々は日本の匠、文化の衰退を止めなければならない。発酵文化、味噌、醤油、酒は日本の素晴らしい文化である。それは適正な価値で残さないといけない。

マーケットクリエイターしか今後生き残れない。だから必要とされ、対価がもらえる。流通としての生き残りがこの取り組みにかかっている。

今後生産者がフラッグシップは自分たちで売る時代になるかもしれない、なら小売流通が何を担うのか?オリジナリティを追求しなくなると、会社は衰退していく。

ものづくりは造り手のプロに任せて、我々は流通業として、その商品に付加価値をどうのせられるか、対価に反映させることは何ができるのか、を考えて行くべきだ。我々はやれることは全て行い、ファンを探す、アンバサダーを増やす、後はマーケットが判断してくれる。

トライしないと活性化はない、活性化のない所に成長なし。
IMADEYA AGINGは「要説明商品」だと理解してほしい。

小倉秀一の最後の仕事、次の世代への投資、マーケットクリエイションがこの取り組み。

意地でも取り組んで行きたい。

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