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「創業200周年を掲げて、故郷への想い」【天狗舞】車多酒造(石川県白山市)訪問記


歴史を感じさせる風格のある母屋

2024年3月の訪問。私達《IMADEYA北陸研修チーム》は能登半島地震の被災地である石川県の老舗蔵“車多酒造”さんを復興期に訪問して来ました。

次期蔵元9代目の車多慶一郎さん

創業1823年で今年の4/17には200周年の式典も控えている大事な時期にも関わらず、次期蔵元である車多慶一郎さんに丁寧にご案内頂きました。

蔵の周りにある五百万石の圃場

石川県は天候の晴れ日和が少なく、曇り日数が日本一らしいのですが、この日は非常に暖かく快晴でした。


蔵周辺にある圃場探索のため移動中

早速、蔵周辺の圃場へご案内頂き、地理的なご説明。

蔵の南西ある五百万石圃場。もっと晴れていたら日本三名山の白山が見えるらしい。。


地元の地形について丁寧に案内してくれる慶一郎さん

蔵の酒米としてメインで使用しているのは地元の白山市林中地区で収穫された五百万石です。

白山市は2023年にユネスコ世界ジオパークに認定された科学的に価値ある遺産の扇状地で白山市はその中心に位置しており、地下にはミネラルの豊富な硬度120を誇る手取川の伏流水が蓄えられており、この水を仕込み水として使用しております。

白山に降り積もった雪が溶けて地中に染み込んだ水が、地下の天然のフイルターを経て、100年の歳月をかけて流れてくる“百年水(ひゃくねんすい)”と呼ばれてる水です。(お水もティスティングさせていただきました。)


母屋前の水場


母屋の前にある水場からも同じ水が流れてきています。鉄分が少なくカルシウムやマグネシウムが多いミネラル水です。


CRAFT SAKE SHOP mau.の入口

母屋の隣に併設された『天狗舞 CRAFT SAKE SHOP mau.』は2022年10月にオープンしたお店で、元々は納屋だったものをリノベーションして、天狗舞の魅力をより多くの方に楽しんで貰えるように開発されたスペースです。

もう一つあるサブエントランスから店内へ


昔養蚕が盛んな地域だったことでも知られる故、地元の絹加工品オブジェ


この窓から見られる四季の移ろいがなんとも情緒があって良いとのこと


店内には五百万石や山田錦などの収穫した稲のオブジェもあり風情のある佇まい


蔵のお酒もズラリと並んで見せ方が雅な雰囲気

母屋に入り慶一郎さんから今後の蔵の方向性に関して熱くお話を伺えました。

素敵なプレゼンテーションルーム

天狗舞のブランドが1877年に立ち上げられて、現在のブランディングを整理して頂きながらこれからの車多酒造はどう進んでいくべきか?

天狗舞ロゴの右向きはTradition、左向きはTradhition+、プレミアムは顔を伏せているらしい。

慶一郎さんが200周年式典を前に、被災した故郷への想いや今後の取り組み、また伝統のブランド“天狗舞”や岡田杜氏ブランドの“五凛”の立ち位置を元に、共に関わる方々への幸福値へ繋げる(または貢献する)上での決めた2つテーマ【①自然×技】【②伝統×進化】に沿ってブランド価値を上げていく動きがあると話して下さいました。



自社精米機を持っている蔵は日本でも数少ない

【精米は自社のみ】精米は全て自社の精米機(2台)で行っていて、使用している酒米のメインは林中地区の五百万石でした。

蔵の全てを知り尽くす徳田さんが丁寧に説明

最近は石川県の期待の酒米“百万石乃白(ひゃくまんごくのしろ)”の使用割合を増やしているそうです。百万石乃白は心白が無く、精米しても割れづらい性質を持っているため酒米として扱いやすく、サッパリした酒質になるため非常に期待しているとのこと。

常務として、製造責任者としての経歴を思わせる職人気質なご説明

他にも兵庫県三木市吉川エリアの山田錦を使用していて石川県で縁の深い酒米。

糠(ぬか)は4タイプに分類され、それぞれに使用用途が異なる

平均精米合は56%。糠が44%出るので、環境にどのように配慮して活用するかが今後の課題(飼料、油、煎餅など)と考えられています。

仕込みのシーズンとして貴重な醪を見学しに上に

仕込みのシーズンということもあって、発酵している醪を見せて頂けました。

三段仕込みの初手“初添え”通称【添え】
仲添のタンクを開けて日本酒の三段仕込みについてご説明


三段仕込みの最終形態である"留”


馨しい醪の香りを堪能中

日本酒伝統的な三段仕込み(添え、仲、留)をそれぞれタンクごとに目で見て確認して、タンクの中に顔を近づけてみると芳しい香りがしました。酵母は金沢酵母かなと思って聞いたら、以外にも協会9号だそうです。


酛摺りなどに使用した半切桶など


昔の酒桶。

歴史的な振り返りとしての伝統な蔵内の設備のご案内もありましたが、実際の設備は最新式で洗米機はウッドソンやFUJIWARAなども導入しており、酒質向上のためには日々研究している姿が伺えます。

利き酒の説明をする慶一郎さん

【最後に皆で利き酒(ティスティング)】
その後速醸酛と生酛の酒母違い2種の利き酒をして、酒質の持つ共通性と相違点の共有をさせて頂き、改めて芯の通った酒質と体感できました。

速醸酛は爽やかな喉越しと水のミネラルがしっかりと感じられる酒質
生酛系酒母はしっかりした飲みごたえと天然の乳酸由来のミルキーな酸が特徴
素材の味を活かす伝統の味について説明

日本酒の構成は原料の八割が水なので、これには間違いなく地元が誇るミネラル豊富な“百年水”がとても良く反映されていると断言できます。


母屋の前で

伝統と革新、これらを併せ持つ蔵は歴史的な背景もきちんと残し継承しつつ、天狗舞の由来とも言える、天狗の太鼓を叩く音が聞こえる森のざわめきが私達に新しい風の到来を感じさせてくれようとしています。

蔵の前にあるシンボル

これからの蔵の姿勢にも益々注目していきたいです。

車多酒造さんのお酒一覧

復興に向けて、車多酒造さんから出荷されている復興支援酒もぜひご覧ください。


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