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1歩進んだつもりが、崖で足を踏み外していた話

以前書いたこちらの記事。

沢山の反応をいただき、自分たちでも無駄にせずに済んで良かったと思って喜んでいたのですが、実際に蒸留してみると、思いもよらぬ落とし穴が…

商品化されているワインは、刻一刻と酸化していくためそれを防ぐため、特に長期熟成を目的としているワインには「酸化防止剤」というものを添加します。
ナチュラルワインが人気になってからこの言葉をよく聞くようになり、一部ではまるで悪のように言われることもありますが、健全なワインを造るためには、酸化防止剤が必要な場面が多々あります。確かに必要以上に入れるのはあまり良くはありませんが、私も酸化防止剤は必要だと思っています。
ですが、それはワインを商品として販売する時の話。
今回造ったのはブランデーで、そこに盲点がありました。

ブランデーはワインを蒸留して造るものですが、そもそも、始めからブランデーを造る目的で造っているワインで、すぐに蒸留してしまうため、酸化防止剤を使用する必要がありません。私たちは、ブランデーの成り立ちや、どういったワインから造るのかということを一切考えず、ただ単に「ワインを蒸留したもの」として考えていましたが、これが、大きな間違いでした…。

私たちが蒸留をお願いしたのはコロナ禍に販売し損ねたカジュアルな価格帯のワインですが、カジュアルな価格帯のワインには、量の違いはありますが酸化防止剤が使われていることが多いです。
そのワインを蒸留してもらったmitosayaの方からある日電話があり何かと思ったら、蒸留したブランデーが、とても飲めたものではないという内容。
蒸留して樽で熟成させればちゃんとしたブランデーになると思い込んでいた私たちは、そのことを聞いても理由が全く分からず、疑問が湧くばかり。
現物を確かめるために慌ててmitosayaに行ってブランデーをテイスティングしようとしたところ、命に危険を感じるほどの刺激臭が…!その刺激臭の正体こそが酸化防止剤だったのです。

なぜそんな風になってしまったのか私たちはよく分からず、とにかくどうにかして飲めるようにしないと…という焦りが生まれ、そういったことに詳しそうな方を探してアドバイス(あわよくば助けてほしい)をもらおうと思っていたところ、お取引先である大阪の河内ワインで、イタリア製の蒸留器を購入し、今年からブランデー造りを始めるとの話を聞き、早速河内ワインに行ってきました。

河内ワインの高性能の蒸留器

河内ワインに行って、社長の金銅さんに今までの経緯を話していると、「酸化防止剤が入っているワインなんて蒸留したら、飲めたもんじゃないですよね~」と言われてしまい、その理由を教えてくれました。
酸化防止剤が添加されたワインを蒸留することで、酸化防止剤が純化され、それが刺激として感じられるそう。その時に初めて、そもそも、ブランデーにするためのワインはすぐに蒸留するため酸化防止剤を入れる必要がないということを知りました。

でも、造ってしまったものはどうしようもできないため、それを生かして何かできないかを河内ワインの方に相談したところ、河内ワインではブランデー以外に酒精強化酒を造る予定があるので、そういったものを造ってみるのはどうかという話に。
酸化防止剤の刺激も、緩やかではあるが徐々に減ってくるので、まずは今年のブドウを使って、何か酒精強化酒か甘味果実酒を造ってみようとおっしゃってくださいました。

私も以前から、このブランデーを使ってヴェルモットのような甘味果実酒を造ってみたいとは思っていたのですが、ブドウの入手が困難になる中、ワイナリーの方はそういったものを造るよりもまずはワインを造りたいだろうなと思い、なかなか話せませんでしたが、まさかワイナリーの方からそんな話が出てくるとは!と驚き、金銅さんさえ良ければぜひお願いしたいとお伝えしました。

結果として、河内ワインで全面協力してくださることになり、今年仕込む河内ワインのワインを使って、ヴェルモットのようなものを造ってみることになりました。

酸化防止剤の刺激臭を嗅いだ時は、このブランデーを一体どうやって飲めるようにすればいいのだろうか…と崖から突き落とされた気分でしたが、河内ワインの社長の金銅さんのお陰で明るい見通しが立ち、少し気持ちが軽くなりましたが、素人考えで、勢いで何かをやるものではない、と深く反省しました…。

せっかく貴重なブドウを分けてもらって新たなお酒を造るので、今度こそは失敗できません…!慎重に、ちゃんと知識を持っている方に相談しながら進めていこうと思いますので、完成を気長にお待ちいただけると嬉しいです。

本当にありがとうございました!!

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