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元けん玉日本1位の卒論はやはりけん玉だった:どうリアルなけん玉の練習をバーチャルに落とし込んでいったか

こんにちは!イマクリエイトエンジニアの久保田です。
けん玉日本1位であり、大学の卒論でもけん玉について書くほどけん玉好きです。その卒論では、VRの中で、「ふりけん」というけん玉の技を練習すると、現実でもできるようになる仕組みを開発して論文にしました。

なぜVR??

と思われた方もいるかと思いますが、それはこの記事を最後まで読んでいけばわかるかと思います。

それと今回が僕の初めての記事になるということで、せっかくなので卒論以外にも自己紹介も含め今までのけん玉人生についても書いていこうと思います。

ただ、実際書いていったら卒論以外の部分のほうが多くなってしまったので卒論についてだけ読みたいという方は目次から卒論についての部分まで飛んで読んでください。そこにはどうやってリアルなけん玉の練習をバーチャルに落とし込んだかについても書いているので気になった方はぜひ。


けん玉との出会い

僕が最初にけん玉に出会ったのは5歳の時でした。当時保育園の年長で滑り台で遊んでいて、上から落ちて左腕を骨折したのがきっかけでした。
なんで骨折が原因なの?と思うかもしれませんが
骨折して数か月外で遊べなくなった時、なんと保育園に大量にけん玉があったんです。

実は僕の生まれ育った、広島県廿日市市はけん玉発祥の地でもあり、その影響で保育園にもけん玉がたくさん置いてありました。
最初部屋の中ではできることがあまりなく、しょうがなくやってみたのですが、何度も練習しているうちにいつの間にかけん玉の魔力に取りつかれてしまいました。
そこから結局18年間けん玉を続けているので、今振り返ってみるとあそこで骨折しておいてよかったなぁとしみじみ思います(笑)

初めての大会

けん玉を初めて1か月ぐらいしたとき、近くで小さな大会があったので、その大会の5歳以下の部に初めて出場してみました。
結果は準優勝で、当時初めて大会というものに出場して賞をもらったのでめちゃくちゃうれしかったし、正直めちゃくちゃ天狗になっていました。
練習しなくても勝てるじゃんと思っていた本当に生意気な5歳児でした(笑)

天狗の鼻をへし折られ暗黒期へ

天狗になっていた保育園時代でしたが、小学校に入学し、けん玉の大会でも小学生の部門に出場するようになって、初めて自分が井の中の蛙だったことを思い知らされました。
周りや全国の小学生は僕よりも多くの時間毎日何時間も練習しているので当たり前のことなのですが、当時の僕はいくら練習して何をやっても勝てない状況にだんだん嫌気がさしてきて徐々にけん玉を触る時間が減ってきました。

そして中学校に上がった時にはバスケ部に入ったこともあり、ついにほとんどけん玉を触る時間が無くなってきました。

バスケ部退部、本気でけん玉の道へ

中学校に入学し、部活一筋であまりけん玉をしない生活が1年ぐらい続いていたのですが、中学2年のある日の朝、ふと

バスケ部をやめてけん玉を本気でしたい!!

と思いました。
本当にいきなりそう思いました。
一時の気の迷いの可能性はありますが、自分の直感を信じてみようと思い、その日の朝学校の公衆電話で親に部活をやめることを伝え、昼には顧問や部員のみんなにも伝えました。
みんな突然のことで驚いていましたが、一番驚いていたのは自分でした。
まさかバスケ部をやめるなんて昨日は考えもしませんでしたから。
しかし

とにかくバスケ部をやめて時間を作ってその時間で全力でけん玉をしたい

その時はそれで頭がいっぱいでした。
それからひたすらけん玉に没頭していました。一時期けん玉をやっていなかった時期はあったものの、やっぱり自分はけん玉が好きなんだなとその時再確認しました。
そして練習の成果もあり、そこから全国大会でも徐々にいい成績が取れるようになってきました。

ジャグリング部発足!?

高校に上がり、僕は高校でやりたい目標がありました。
それは、高校でジャグリング部を作ってけん玉やジャグリングを仲間と一緒に練習できる場を作る事です。
当時一人で黙々とけん玉の練習をしていた僕ですが、たまたまYouTubeで他の高校のジャグリング部PVを見て、こういう風に仲間と一緒に高校で練習できたらいいなと思い高校でジャグリング部を作ろうと思いました。
(ちなみにけん玉はジャグリングにも含まれます)
そして入学してすぐ担任の先生に

   部活作りたいです!!

とお願いすると、

   無理だね~

と一瞬で断られてしまいました…
部活や同好会はすぐ作れるものだと思っていたので(現にその2年前にはダンス同好会が作られていた)なんでだめなのか聞いたところ、うやむやな答えしか返ってきませんでした。
色々と考えた結果、これは僕の実績や実力がないからだと思い、まず全国大会で優勝してもう一度お願いをしようと思いました。
そしてけん玉の全国大会のパフォーマンス部門で優勝することを目標にしました。

かけ合わせで自分だけのスタイルを作る

このパフォーマンス大会は他のけん玉大会とは違い、特に細かいルールはなく、3分の時間制限の中で好きな曲に合わせて審査員を楽しませれば勝ちというルールです。
ジャグリング部を作るため、僕自身もジャグリングの練習をしており、その経験からジャグリング×けん玉として糸なしけん玉でのパフォーマンスをやろうと考えました。
ちなみに糸なしけん玉とは↓の動画のように糸がないけん玉スタイルです。

ジャグリングは、部を作るために一通り練習していたので、それでさらに糸なしけん玉を強化して、紐がないけん玉を2つ使った技など、お手玉のようなジャグリングの技をいくつも開発しました。
誰もまだ踏み入れていなかった領域なので、すでにあったジャグリングの技をけん玉に当てはめるだけで新技になり今までのけん玉界にはなかった技をどんどん作ることができました。

そして、その新規性の高さからついにけん玉パフォーマンス大会で優勝することができました。

新しいものや、自分だけの強みは今あるもののかけ合わせで作ることができると本気で思いました。

そうして、無事全国大会で優勝すると、先生方に認めてもらいジャグリング部の創設も許してくれ、なんと全校集会でパフォーマンスもしていいことになりました。

パフォーマンス後、全校集会で部を作りたい思いを話すと、そのあと20人ぐらいの人が一緒にやろうと言ってくれ、無事、部を作ることができました。

高校での目標が叶い、仲間と高めあいながら練習することで確実に上達していき、高校3年間ではパフォーマンス大会で3連覇を果たすことができました。

これも全て高校時代一緒に練習してくれた仲間たちのおかげです。
感謝してもしきれません。

ちなみに今でも部は続いているようで、うれしい限りです。

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VRけん玉師との出会い

そして大学に上がると、将来のことについて考える時期になってきます。
けん玉のプロや大道芸人として生活している人もいる中で、その人たちから誘いもあり、高校まではあまり深く考えずけん玉のプロとして生きていこうと思っていました。
しかし、実際大学に上がって将来のことについて真剣に考えると、やはりけん玉は続けていきたいが、けん玉だけで食べていくとなると安定した生活はできないためどうしても将来に不安を覚えました。
なので当時大学で専攻していた情報系の職業に無難に就職しようと考えていました。

そんな中出会ったのが弊社CTOの川崎さん(VRけん玉師)です。
川崎さんについてはこちらの記事をぜひ読んでみてください。

川崎さんはある時僕が出場したけん玉の大会でVRけん玉というけん玉の「もしかめ」という技をVR内で練習することで現実でもできるようになるトレーニングツールの体験会を開いていました。
ちなみにもしかめは↓のような技です。


あまりIT関係の絡みが少ないけん玉界でまさかの最新技術、VRだったのでめちゃくちゃびっくりました。

しかも実際体験してみると、ほんとにVR空間でけん玉ができるんです!!
僕自身情報系の学科だったのでここまでのクオリティーを出せて、なおかつ本当にけん玉が上達するものを作れていることに感動しました。
しかも川崎さん一人で作ってますからね。
正直化け物です。

そのあと、また違う縁で偶然再会したときに、川崎さんのほうから「VRけん玉の開発を手伝うインターンをしてみないか」と誘われ、そこからVRけん玉の開発に携わっていきました。

しかし、情報系といったものの、まだアプリやゲームも作ったことがなく、しかも僕が学校で習っていた言語とは違う言語での開発だったため、不安も多かったです。
そんな中で川崎さんが僕にチュートリアルとして、VRゲームの作り方の資料と1冊の本を貸してくれました。

この資料と本で勉強することで、ある程度の知識をつけることができ、ある程度まで開発をすることができました。

それと、僕は今までアプリやゲーム開発は、めちゃくちゃ敷居の高いものだと思っていたし、プログラミングコードでゲームなんて本当に作れるのか??
と情報学科だったのに本気で思っていました(笑)

しかし、VRけん玉で川崎さんが僕に最初にくれた仕事がパラメータ調整という、比較的コードを書かない作業でした。
これは、玉の速度をどれぐらいにするか、球が上がる最大の高さをどれぐらいにするか、などの数値を変更して、なるべくリアルな動きに近づけていく作業です。

これが僕にとって衝撃的なほど面白かったです。

数値を変えるだけでそれがVRでの動きにわかりやすく反映されているのがとても新鮮で、やっているのは数値を変えているだけなのに、とんでもない速さで球を動かせるようにできたり、少しの力でとんでもない高さまで球をあげることができるようにしたり!
とにかく数値を変えるだけでここまでいろんなことができるのは本当にすごい!
しかもVR内だと現実のように感じてしまうので、自分が調整したとんでもないけん玉が本当にリアルに目の前にあるように感じることができ、その時は鳥肌が止まりませんでした。

そんな感じで初めてパラメータ調整した日は楽しすぎていつの間にかリアルには程遠い、面白い動きをするけん玉を作ってしまいました(笑)

ただ、この出来事をきっかけにゲーム開発、そしてVRの世界にどっぷりとはまってしまいました。

卒業論文開始

そんな、けん玉とVRに魅了されてしまった僕は、必然的に大学の卒業論文もVRけん玉でやることになりました(笑)
幸い、僕の配属された研究室は自分のやりたい研究があるなら分野問わず研究していい研究室だったので、先生と相談してVRけん玉について研究することになりました。

しかし、「もしかめ」ができるようになるVRけん玉はもうすでに川崎さんが開発している。
なのでどういう研究にしようか悩みました。

そこで、その当時のVRけん玉は紐がなく、紐を使ったけん玉の技がまだ実装されていない状況だったのに対し、けん玉には紐を使った技が多いことから、今のVRけん玉に紐を実装して、紐を使った技ができるようになればもっと幅広い技ができるようになるんじゃないか!
と思い、VRけん玉に紐を実装し、紐を使った技のトレーニングツールを作ることを研究内容に決めました。

そしてトレーニングさせる技として選んだのが「ふりけん」という技です。

「ふりけん」とは↑の動画のようにけんを持って球を一回転させて入れる技で、僕の経験上初心者が一番脱落しやすい技です。
実際この技は教え方も難しく、複雑な動きをわずかな時間で正しく行わないとできない技なので正直口でいくら伝えてもうまく伝わらないことが多いです。

この教えるほうもやるほうも難しい技をVRを使ってトレーニングするだけでできるようになればいいなと思って研究を始めました。

紐の再現

研究の序盤はけん玉の紐の実装を行いました。
まずVR内でのけん玉の動きが現実と一致しないとそもそもトレーニングにすらならないので、紐の実装含め、紐揺らしたとき、引っ張った時の挙動もなるべくリアルになるように実装しました。
実装の詳しい内容は書いていくと結構長くなってしまうのでここでは省略します。(もしかするとどこかで記事として出すかも)
ただ、この実装がめちゃくちゃ大変で紐の実装とリアル化だけで半年ぐらいかかってしまいました。
リアル化の難しさを目の当たりにしましたね…

しかし、そのおかげで技によっては現実のけん玉とVRけん玉の完全一致もできるようになりました。

さて、紐の再現とリアル化が終わったことでこれでやっと本来の研究に取り掛かれます。

動きの細分化

改めて、研究で扱う技は「ふりけん」という技なのですが、これがなかなか難しい技で、「もしかめ」ができるようになるVRで主に使われていた速度調整、お手本表示だけでは難しいと考えました。

なのでふりけんを構える、玉を離す、膝の曲げ伸ばし、玉を回転させる、けん先に玉をさすの5つの要素に分解し、それぞれの要素ごとにVRならではのトレーニングを行うことでふりけんができるようになるのではないかと考えました。

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具体的には

構える・・・VR空間の構えのお手本に重なって最初の構えを体で覚える。

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玉を離す・・・「ふりけん」では玉を離すとき押し出してはいけないので手元に壁を置いて気持ち的に押し出せ辛くさせる。

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膝の曲げ伸ばし・・・リズムが大事なので、VR内で聞こえる「1,2,3」という音に合わせて膝を曲げ伸ばしする。

玉を回転させる・・・けんの軌跡によって玉が回転するかどうか決まるぐらいけんの軌跡が大事なので、理想の軌跡をなぞって練習してもらう。

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けん先に玉をさす・・・最後にさす穴が早すぎて見えないので、最初はゆっくり穴が回転してくるようにして、徐々に穴の回転を現実のように戻して穴の回転速度に慣れてもらう。

というVRならではの練習メニューを5つ作りました。

研究の結果

そして実際6人の初心者の方に体験してもらった結果、30分のトレーニングで1人ふりけんができるようになりました。

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体験していただいた人数も少なく、結果としてはサンプル数が少ないものの、実際にこうして1人の方にVRけん玉でトレーニングしてもらってふりけんができるようになってとてもうれしかったです。
しかも、普通このふりけんという技は初心者の方が独学で練習すると1週間~1か月ぐらいかかるレベルのものなので、それを30分のトレーニングでここまで上達させることができたことで、VRってこんなにすごいんだと改めてVRの可能性を感じました。


ふりけんという初心者が挫折するような技でもできるようにしてくれたVRの可能性を信じて、また僕自身がその可能性を広げていけるようなエンジニアになるために今はイマクリエイトのエンジニアとして日々精進しています。
そして微力ながらけん玉以外にもゴルフ、溶接のトレーニングツールの開発にも携わらせていただいてます。今後もっといろんな分野のトレーニングツールを開発していく予定ですので、今後のイマクリエイトの成長にご期待ください。

#自己紹介 #VR #バーチャル #けん玉 #スタートアップ #卒論




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