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”誰もが平和で幸せに生きられる社会に” 西郷南海子さん

3人のお子さんのママでありながら、大学での研究や社会活動など多方面で活躍されている西郷南海子さんにお話しを伺いました。

プロフィール
出身地:神奈川県鎌倉市
活動地域:京都市を中心に、全国各地で精力的に活動中
経歴:
1987年生まれ、3児の母。
2015年に「安保関連法案に反対するママの会」を立ち上げた。
絵本に『だれのこどももころさせない』(かもがわ出版)。
現在の職業及び活動:
京都大学教育学研究科博士課程在学中。一人ひとりが平和で幸せに生きていける社会を目指して、講演やイベントなどを行っている。
座右の銘:“Small is Beautiful”
※“Small is Beautiful”=小なるものは美しい

記者:これまで大学における研究活動や講演・イベント活動を通じて、社会に様々な疑問を投げかけてこられましたが、これからどんな美しい時代を創りたいとお考えですか?

西郷南海子さん(以下、西郷):一人一人が自分はここにいていいんだと思える時代を創りたいです。
 大人になると、どれだけ稼げるかとか何々力があるとか、そういうものさしで測られるようになるので、自分はこんな役に立ちますというのを示せないと肩身が狭い世の中になっていると思います。
 私は、自分の子供が生まれて、本当は人って生まれてきただけですごいんだなということに気づかされました。だって、いなかった人がいるようになるわけですから。本当は生まれてきただけですごいことなんだよ、生きているだけでいいことなんだよということをみんなが実感できるような世の中を創りたいなあと思います。

記者:一人一人が自分はここにいていいんだと思えるようになるためには、どのようなことが必要だと思いますか?

西郷:人や物事の繋がりが見えて、みんなで生きてるんだなと感じられるようになることだと思います。
 例えば、この1杯のコーヒーでも、どこの国かはわからないけれど育てた人がいて、豆にした人がいて、運んだ人がいて、今そこのキッチンで入れてくれる人がいるように、すごくいろんな人が関わっていますよね。世の中はいろんな人の仕事で成り立っています。みんなが繋がり支え合っている、そういう網の目の上に生きているんだなと実感できるようになることかなと思います。
 また、今当たり前のように生きている時代が、実は誰かが生きたいと望んでいた未来であって、昔の人が頑張ってくれたから今がある。もしかしたら、100年後の時代の人から見たら、あの時代の人たちが頑張ってくれたから自分たちはこんな風に暮らしているんだと思えることがあるはずです。
 昔の人とも繋がっているし、今生きている人とも繋がっている、縦の軸と横の軸の両方の真ん中に自分がいるんだなと思えるようになることだと思います。

記者:もしみんなが人や物事の繋がりを見ることができるようになったら、社会はどんな風に変わりそうでしょうか?

西郷:一人一人がもっと自分の仕事に自信を持てるようになるんじゃないかなと思います。どんな仕事もまわりまわってみんなを支えているから、ちっぽけな仕事はないと思っているんですよ。自分はそういう網の目の上に生きていて、自分との繋がりがどういう意味を持っているのかなあって意識していけたら、みんなもう少し自分の仕事に自信を持てるようになると思います。

記者:人や物事の繋がりを感じて、みんなで生きてるんだなと思えるようになるために、どのようなことを心がけておられますか?

西郷:ひとつは、世の中がどうなっているのかを子どもにもわかるように説明するようにしています。いわゆる専門家や知識のある人は難しい言葉を使われるので、それを聞いた私たちは、「ああもう遠い世界だ」と自分と切り離してしまいがちだと思いますが、子どもにもわかる言葉で話せたらみんなにわかりますよね。そうすることで、自分の繋がりの中で物事が動いていると思った方が面白いし楽しいよということをアピールしていけたらと思います。
 もうひとつは、分かち合えるところを探していくことを大事にしています。以前子どもの友達が家に泊まりにきたときに、子どもたちだけでお風呂に入らせたら、私が大事にしていたバスソルトをたくさん使われてしまったんです。それで、子どもたちに「入れたやろ?」って聞いたら誰も「入れてません」って。これは犯人探しをしてもあかんなと思って「いい匂いになったやろ?」って質問を変えたら「うん!」って答えた子がいたんですね。子どもって面白いなと思いました。そこで叱ってしまったら、私の中で子どもたちと分かち合えるものが減ってしまうと思ったので、叱らずにこの子はバスソルトを入れてみたかったんだなということと、いい匂いになったお風呂に私も入らせてもらえるなっていうことと、分かち合えるものが増える方に切り替えるようにしましたね。

記者:様々な人・物事の繋がりを柔らかく広げていくことが、一人一人がここにいていいんだと思えるようになるためのポイントなんですね。
では、たくさんの人と繋がり支え合って生きているということを意識するようになったのには、どのような背景があったのですか?

西郷:私の両親は、私がピンときたことを調べて考えて書いたりすることを喜んでくれる親でした。自分の考えはちゃんと裏づけを取りながら世の中に出していくということを両親は応援してくれていたんだろうと思います。そうして調べていったら、物事同士の繋がりがわかるようになってきたんですね。私たちは知らない者同士が繋がってこの世界を成り立たせているんだということに興味を持つようになりました。
 これまでいろんな良い出会いがありましたが、中でも自分の子どもとの出会いは大きかったなと思います。今は何でもハイテクになって作れないものはないぐらいの世の中になってきていますが、どんなに技術が進歩しても、人はお母さんのおなかの中からしか生まれてこない。それってとても不思議で面白いことだなと感じます。お母さんのおなかの中で羊水に浸っていた赤ちゃんが生まれた瞬間、肺が開いて肺呼吸に変わって陸の生き物になるわけですよ。生まれてきてくれた息子を見て、息をしているだけですごいなあと思いました。
 本当は生まれてきただけですごいんだから、社会のものさしに囚われず、みんな好きなことをやったらいいはずです。でも、私自身も自分に能力を求めてしまって、「本当はいるだけでいいんだよ」って言ってやりたいんだけどなかなか言えない大人になってしまいました。そんな状態で私が頑張っているのを知っているのか、子どもが折り紙で紙飛行機みたいなのを作ってくれたんです。開けたら、小さな子どもの精一杯の字で「ママ好きなことやろう♡」って書いてあったんですよ。たぶん子どもはママがやりたいことをやっている姿を見たいんだなあと、なんだか胸にぐさって刺さりましたね。とてもいい言葉だと思ったので、それは冷蔵庫に貼っています。

記者:お母さんに自分が思っていることを素直に言えるお子さんと、それをちゃんと受け止めてあげられる西郷さんとの関係がとても素敵ですね。
それでは最後に、子どもたちに向けてのメッセージをお願いします。

西郷:私はどんな子でも好きなことをやってほしいと思っています。小学校の勉強がちゃんとできなかったら中学校で置いていかれるとか、中学校の勉強がちゃんとできなかったら高校で置いていかれるとか、そうやって自分が生きている意味を先送りするのは勿体ないことだと思うんです。もちろん将来を考えるのは大事だけど、本当にやりたいことを子どものうちにやっておかなければ、大人になってから何をやっていいかわからなくなっちゃう。突然夢を探せと言われたって探し方も分からないし。なので、たとえ親から見ればくだらないことかもしれないけど、子どもたちには、その時にやりたいと思ったことをやってほしいなと思います。

記者:お話を伺って、誰もがかけがえのない存在なんだということを改めて感じましたし、みんながここにいていいんだと思える安心の社会をともに創っていきたいと思いました。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
今回インタビューを担当した大村・古田です。
駄菓子を使った非常にわかりやすい説明など一言一言に優しさや深い想いが込められているようで、西郷さんのとても素敵なお人柄が伝わってきました。
今後の益々のご活躍をお祈り申し上げます。

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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