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隣に座るのは格好良い初老の男性。

金曜の夜、彼女とニ人で焼肉店に行ってきた。

予約して、通された席はカウンター席。
店内はお客さんで溢れていて、僕たちの横には一席空けて仕事帰りのサラリーマンと思わしき男性ニ人組。

上質なお肉をたくさん食べて、お腹が満足してきた頃、僕たちニ人とサラリーマン男性ニ人組の間の一席に来客が。

そんな所謂"一人焼肉"をしにきたのは、地味な恰好をした初老の男性。

店員さんがその男性に「どうも、いらっしゃいませ。」などと親しげに声を掛けているあたり、常連客なのだろう。

その男性はお肉を一種類(ハラミだったかな...?)と生ビールを注文し、おもむろに文庫本を取り出して読書を始めた。

多くの客で賑わう喧騒の中、黙々と一人で読書をする姿はまさに『孤高の人』といった感じであった。

この時点で僕はこの男性の持つ雰囲気を気に入っていた。


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そのうちに男性のもとに一皿のお肉が運ばれてきた。

すると男性はお肉を一切れ七輪に載せると、また本に視線を戻した。読書の手を止めてお肉に集中するだろうとばかり思っていた僕は面食らった。

その男性の超然たる姿に、僕は完全に魅了されてしまった。お肉を一切れずつじっくり焼きながら読書に耽り、時々思い出したかのようにビールを口に含む。他のお客さんが大声で話していようとも、店員さんが忙しく動き回っていようとも、そのスタイルに変わりはない。

隠居生活を楽しむ老人が七輪で一切れのお餅を丁寧に焼き上げるような、そんな熟成された時の流れがそこにはあった。


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最後に、前回の記事で紹介した『孤独になれば、道は拓ける。』という本から、今回の体験にまつわる箇所を一部抜粋しておこう。

男性なら寿司屋や焼肉屋に独りで入れるようにすることだ。私もよく寿司屋や焼肉屋に独りで入るが、周囲に独りでいるのは成功していると見られる身なりで、たいてい有名人や組織のリーダーたちだ。
彼女たちから学んだことは、彼女たちも最初から平気で独りで入っていたのではなく、独りで店に入ることに挑戦するうちに、いい女へと成長したということだ。たとえば独りだと待ち時間に話し相手がいないから、本を読むようになる。本を読む横顔が、より一層輝いて知的に見える。本を読んでいるうちに本当に知的になるから、外面も内面も磨かれる。  独りだと騒がないし、長居しないために店からも好かれる。独りだと他の来店客の振る舞いをじっくり観察できるから、いい部分は自分に活かすことができる。このように人が独りで行動するのは、成功者になるための必須条件なのだ。


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恐らくあの男性も昔から一人で店に入る経験を通じて、今の揺るぎないスタイルを確立したのだろう。ただ単に年齢を重ねるだけでは、あんな風にはならないはずだ。

僕も経験を積まなければ。そして、あの男性のようになりたい。

また新しい目標ができた。

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