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クレジットカードおじいちゃん

少し前に銭湯に行った。

入場チケットがもうすぐ有効期限が切れそうだったので、連日行ってやろうと意気込んだのに億劫になり、数枚を無駄にしてしまった。
どなたかにマッチ売りの少女のように「受け取ってください…あのぉ…(街行く人々は足を止めない)」と店前で配布活動してもらえたら良かった。寒くなってもすぐにお湯に浸かれるから問題もない。

浴場からあがると、おじいちゃんが着替えの真っ只中で、ズボンとパンツを勢いよく下ろすと、お尻にトイレットペーパーが挟まっていた。

お尻に挟まるトイレットペーパーの平均は分からないが、思ったより面積が大きいトイレットペーパーで、おおよそクレジットカードほどはあったと思う。スキャン途中のクレジットカードを想像して貰えば、おじいちゃんのお尻を想像出来るはず。

おそらく1ミシン目分くらいは挟まっていて、もしお尻を拭いて捨てる過程で、1ミシン目分残ってるなら、トイレに流した紙は綺麗で、残っているクレジットカードに主役が付いているんじゃないか?と頭をよぎった。

まったくおじいちゃんったら…と思いながら、ロッカーで着替えて髪を乾かしていると、隣にそのおじいちゃんが綿棒を取りにやってきた。
後ろからやってきたせいで、モノマネ番組の本人登場パターンのように、「え!あのクレジットカードの?!」とテレビスターに会ったみたいに驚いてしまった。

当たり前のように目線を落として、お尻を見てみると、もうクレジットカードはスキャンした後でどこかに消えていた。

あの日の男湯には、根元に主役がついた1ミシン目分の落とし物があったのかもしれない。

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