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島医者が誇りにしているものと、犠牲にしているもの

最近は毎週のようにコロナ対策関連の会議があり、その度に資料作りに診療所で遅くまで没頭する。。家に帰って一息ついても、オンコール携帯が鳴るとその度に緊張で心拍数が20ほど上がる、そんな毎日を過ごす。


離島診療所で家庭医として働いていることに誇りとやりがいを感じている反面、日々溜まっていく疲れやストレスを、未だ効率よく発散できない。


365日24時間オンコール携帯を持っている僕のような島医者にとって、島はある意味大きな「病棟」で、僕は何かあればすぐ対応できるよう毎日当直しているようなものである。


少し大げさに言うようだけど、でも決して大げさとは思えない、当事者にしか分からないしんどさがある。コロナ渦で島から容易に出られない、家族に会えないことは、そんな自分に追い打ちをかけている。


つい先日、村との「コロナ感染対策会議」で僕は、沖縄本島でCOVID19感染が急速に拡大していることに危機感を抱いて、離島版「ロックダウン」を提案した。


県外からは来島中止、県内からも来島自粛を要請、それでも来島する人には、来島後2週間は密な場所への出入りを控える、などである。


村は早速、村内放送で村民に注意喚起し、村のホームページに掲載してくれた。これから全世帯へチラシを配布してくれることになった。


村の対応に感謝する一方で、自分で自分の首を締めている、そんな感覚になった。毎週末会いに来てくれる妻に、今は来島を控えるようにと伝えることはとても苦しかった。


家庭医のいる小さな離島は、一次医療システムとしては、ある意味「理想的」だと僕は思っている。そこには1人(あるいはごく少数)の医師がおり、島に住む人は、体調に異変を感じたら、まず島の診療所を利用する。


土日や時間外救急も、最初に対応するのはその人をよく知るかかりつけ医である。


地域のこともよく知っているので、世の中の動きに応じて行政へ必要な提案もする。コロナ渦においては、地域の特性に応じた対策をタイムリーに普及啓発することができる。


このようなシステムは、離島といういい意味でコンパクトな環境で、1人(あるいはごく少数)の家庭医が地域をまるごと診療し、自治体や関係機関と目の見える関係を築いているから可能である。


でもその分、その医師にかかる負担は正直かなり大きい。。コロナ渦になって、その重さが更に増した。


僕は昨年、一度体調を崩した。「体調」と言っても些細なことだが、ストレスによる、就寝中の強い歯ぎしりから歯髄炎を起こし、神経が壊死し、根っこの神経を取る治療を余儀なくされた。このようなことは稀で、歯科医にちょっと驚かれた。


ちなみに、ちょうどCOVID19の最初の流行期だったので、治療開始まで半年近く待った。万が一自分が感染してしまうことによる島への影響と、歯科治療を遅らせるリスクを天秤にかけて、自分の治療を遅らせることを選んだ。


COVID19と闘っているのは、何も大きな病院のICUや専門医だけじゃない。地域で奮闘する地味な医療者もいる。今感じている不満、弱音、ネガティブな感情は、今しか書けない。。そんな色々な思いがふと溢れてきて、書き残しておきたくて記した。将来生まれる子どもに、父親がこんな風に頑張ってたんだなって少しでも誇りになれば、という願いも込めて。



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