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マクドナルドにおけるブランディング 【ILY, Designability cast】

Hello, people.

前回に続いて、日本マクドナルドを取り上げたpodcastの配信を記事化しました。今回のテーマは、「マクドナルドのブランド力」です。

2020年ブランドランキング世界第9位

マクドナルドは、世界最大のブランド資産データベース「BrandZ」による「世界で最も価値あるブランドランキング」で、第9位となっています。1位がAmazon、2位がApple、3位がMicrosoftです。

ちなみに、ブランドランキングは、ブランドの付加価値を算出する明確なルールに基づき、数式によって換算されています。

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参考:https://sustainablejapan.jp/2015/06/23/brandz/16683


純粋想起とソーシャル想起が強み

マクドナルドのブランド価値は、どこにあるのでしょうか。私は、マクドナルドブランドの最大の強さは、純粋想起されやすいところにあると思っています。純粋想起とは、「ハンバーガーといえばマクドナルド」「マクドナルドといえばハンバーガー」と、思い出されるということです。もちろん、マクドナルド以外のハンバーガーショップが好みだという人もいますが、ハンバーガーからの純粋想起率でいえば、マクドナルドがトップではないでしょうか。これこそが、マクドナルドのブランド資産だといえますね。ちなみに、「お昼ご飯どうする?」「マクドナルド行こう」みたいな、間接的な想起が、助成想起ですね。

ソーシャル想起が強いのも、マクドナルドの強みです。ソーシャル想起とは、Facebook、Twitter、YouTube等のソーシャルメディアの情報から、「あの人が食べていたから、私も食べてみたい」と思い出されることをいいます。特にマクドナルドは、YouTubeによって恩恵を受けているのではないでしょうか。いろんなYouTuberが、マクドナルドの新商品を食べたり、ハンバーガーの早食いをしたりして、動画をあげています。 

ソーシャル想起では、新商品を食べただけでネタにできるようなネタ提供、つまり、話題作りが非常に重要です。その点、マクドナルドは、話題作りに長けていますね。たとえば、2015年には「エッグチーズバーガー」「バーベキューポークバーガー」「ハムレタスバーガー」を発売し、それぞれ「エグチ」「バベポ」「ハムタス」というニックネームを付けていました。2016年には、ありえないほど長いネーミングの「北海道産ほくほくポテトとチェダーチーズに焦がし醤油風味の特製オニオンソースが効いたジューシービーフバーガー(仮称)」を販売し、「名前が長すぎるので、新しい名前を募集します」と、名前募集キャンペーンを行い、話題になりました。全国どこでも手に入る「マクドナルド」は、いまや全国共通言語になっています。新しいネタが提供されると、消費者は「食べてみたい」と店舗に足を運び、ソーシャルメディアを通じて勝手に拡散してくれます。広告の手法としては、非常に賢いですね。

コロナ禍でも業績が伸びた要因とは!?

マクドナルドは、コロナ禍において業績を伸ばしました。成功要因については、ドライブスルーやモバイルオーダーなどの手法ばかりが注目されていましたが、私は、「いじられ力」や「突っ込まれ力」こそが成功要因だったのではないかと考えています。言い換えれば、「純粋想起」「助成想起」「ソーシャル想起」を含むブランド力が功を奏したということですね。実は私も、コロナ期間中にYouTubeを見て、「そうだ、マクドナルドがある」と思い出して、店舗に足を運びました。特別に「おいしい」と思ったわけでもなく、ソーシャル想起によって買わされた感がありましたね(笑)。

仕事をしていると、「なぜ、ブランディングしないといけないのか」「なぜ、ブランド力を高めないといけないのか」という課題には、多かれ少なかれ、ぶち当たると思います。「ブランド力によって、何が得られるのか」というと、今回のマクドナルドのように、消費者とのエンゲージメントが、企業を救ってくれることもあるということですね。非常時において、ブランド力や、消費者とのコミュニケーションの蓄積が、総合的に働いた点で、やはりマクドナルドはすごいなと思います。

私は、カサノバ前社長がマーケッターだったことが、マクドナルドの強みにつながっていると考えています。カサノバ前社長は、いかに消費者とコミュニケーションすべきかを、常に意識していましたから。

カサノバ前社長が、グローバルな仕事を担当し始めた頃に、ロシアの店舗に立ち寄った際のエピソードがあります。カウンターでのオーダーに慣れていない客が、入店後にカウンターに向かわず、直接、席に座ったそうです。国や文化によって、あるいは世代によって、システムがどう受け止められるか、どう反応されるかは変わってきます。こうした経験が、カサノバ前社長の頭の中にはインストールされていたのではないでしょうか。そのギャップを埋めるために、消費者とコミュニケーションを実直に重ねていったことが、今のマクドナルドを作っていると思います。

そういえば、かつて、「マクドナルドは背徳感を売っているのではないか」とツイートされているのを見かけました。確かに、マックフライポテトを食べることには、罪悪感がありますね。「夜マック」のポテトはボリュームアップしていますが、マクドナルドは、マックフライポテトが罪悪感を抱かせる存在であることを理解したうえで、ちゃんといじられているわけです。ある意味、マジメな会社ですね。優しさや誠実さも感じられる、優れたブランドだと思います。こうしたブランドは広めていきたいですし、なんなら、私たちの手で、優れたブランドを創りたいですね。


ILY, Designability castは「ビジネスにおけるデザインの可能性を探求する」というテーマのもと、さまざまなビジネスやデザインの話題をお送りしております。spotifyから聴くことができますのでよろしければ音声でもお楽しみください。

Thank you, we love you!

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ILY, inc CEO
Business Designer

辻原咲紀

新卒でデザインプロダクトメーカーに就職、営業・マーケティング・商品企画・デザインの領域を横断し担当。インハウスでの広告制作やブランディング・アートディレクションに携わり独立。ベンチャー企業への技術提供・企業立ち上げなどを経て、0→1、1→100まで幅広いデザインに従事。2016年にデザインのコンサルティング&クリエイティブエージェンシーのILY.incを設立。経営・事業開発・コミュニケーションなど領域を横断した様々なデザインに取り組む。広島市立大学非常勤講師。

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Director / PR manager

服部麻優

WEBプロモーション会社でSEO・リスティング広告などの業務に携わった後、制作部門の立ち上げと部門 マネージャーを務める。 複数プロジェクトを同時に進行管理するだけでなく、品質管理のためのガイドライン・フォーマットを整備し、チーム内への実施を徹底。各ステークホルダーとの情報の連携についてもツールでの一元管理の方法を確立している。 経営PRなどディレクション領域を超えて業務に従事し、プロジェクトの範囲に留まらず、クライアントのビジネス全体への提案を実践。
私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。


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