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「ユニクロが売っているのは服ではない」UNIQLOの販売戦略とは【ILY, Designability cast】

Hello, people.

8月よりILY,では「ILY, Designability cast」という名前でpodcast配信を開始しました。「ビジネス×デザイン」をテーマに、代表の辻原とPRの服部がさまざまな話題をご提供します。

本記事は、記念すべき第一回の収録内容を、より読みやすい形にまとめたものです。今回はプレゼンターの辻原が語る形式でお送りします。音声だけでは捉えづらい箇所の振り返りなどに、お役立ていただけますと幸いです。

今回のテーマは「ユニクロの変遷と事業戦略」です。
今やユニクロは、あまりにも有名なブランドですね。本題に入る前にも「ファッションへの迷いを救ってくれた」、「特に子ども生まれてから、重宝している」など好意的なイメージがあるという話で盛り上がりました。ユニクロの変遷と事業のあり方について、改めて分析してみました。

「ユニクロでいい」から「ユニクロがいい」へ

ユニクロの歴史は1949年に現会長兼社長の柳井正氏のお父様が、山口県で創業した紳士服小売店から始まります。柳井氏が父親から引き継ぐ形で社長に就任したのは1984年です。同年、一号店を広島にオープン。当時はロードサイド店を中心に店舗を増やしました。1988年にフリースが出現した頃のことは、当時、小学生だった私も覚えています。ユニクロの店舗に入ると、カラフルなフリースがズラッと並んでいて、ワクワクしたのを思い出します。その後、2003年に発売されたヒートテックも、一世を風靡しましたよね。

国内市場で伸び続ける一方、2001年には海外進出の皮切りとしてイギリス進出。2006年には、ニューヨークソーホーに旗艦店を出店。今では世界18カ国にグローバル展開しています。

2009年には、ハイブランドであるジルサンダーとのコラボがありました。ジルサンダーは素材にこだわりのあるアーティストです。私は、ダウンのフードがついたウールコートに、「こんな風に素材を使うのか」と感動した覚えがあります。そのコートをかっこよく着たくて、髪をショートにしたぐらいですから。
初期のユニクロは、どちらかといえば、「安かろう悪かろう」「みんなが着ていてダサい」というイメージだったのが、このジルサンダーとのコラボをきっかけに、「堂々と着れる服」になったような気がします。

さらに、2015年秋冬シーズンには、元エルメスのデザイナーであるクリストフ・ルメール氏とのコラボコレクション『ユニクロ アンド ルメール』を発売し、成功。2016年に、同氏が手がけるユニクロの新ライン「Uniqlo U」誕生しました。この「Uniqlo U」の誕生こそが、「ユニクロでいい」から、「ユニクロがいい」に変わった節目だったのではないでしょうか。
柳井氏が就任してまだ35年ほどですが、こうした経緯があって、現在ユニクロは、アパレル製造小売業の時価総額ランキング2位というので、見事ですね(ちなみに一位はZARAです)。

衝撃的だったロゴ変更

2006年にアートディレクター佐藤可士和氏が手がけたロゴの変更も、ユニクロの歴史を語る上では、はずせません。新しいロゴが発表されたときは、「元のロゴと、ほとんどデザインが変わっていないのでは?」と話題にもなりましたが、よく見れば、フォントがドイツの工業規格にもなっているDINに変わり、カラーも、えんじ色が彩度の高い赤に変わっています。実はこの赤は、デザイン業界では「金赤」と呼ばれ、チラシで一番目立たせたい文字に使われる色ですね。広告代理店出身の佐藤氏には、馴染みのあった色のはずです。
このように、若干のチューニングのみで、スマートなユニクロに変身したわけですが、これができるデザイナーは少ないと思います。というのも、普通は、「ロゴを変えてほしい」と頼まれたデザイナーは、新しい世界観をつくろうとします。つまり、これまでの意図を組むのではなく、全く新しいデザインを提示しようと思うはずです。佐藤氏も、柳井社長の新しい構想を聞いた際は、新しいロゴが必要だと思ったのではないでしょうか。

一方で、フリースが売れたり、海外出店をするなど、すでに社会的認知が上がっていたユニクロが、全く新しいロゴに変えることは、デザイン資産を無駄にするリスクがあります。今まで認知されていたものを捨てて、新しいブランディングが必要ですから。

だからこそ、今までの資産を活かしながら、新しい世界観を創ることに成功した佐藤氏のロゴ変更には、「かっこいい」と感服したのを覚えています。
この時、グローバル展開に向けて、カタカナのロゴもできました。実は、ユニクロのグローバル旗艦店は、2006年まではほとんどが赤字で、2008にやっと黒字転換しました。2006年のロゴ変更が一役かったとすれば、デザインの力、すごいですよね。

ユニクロの販売戦略とは!?

ユニクロの販売戦略については、色んなところで語られていますが、ここでは5つ挙げてみます。

1.単純接触効果
人は、頻繁に目にするものを好きになる傾向があり、これを単純接触効果といいます。ビジネスでは、単純接触効果によってファンを増やすことが大切です。ユニクロは、チラシに力を入れていますし、街を歩いていてもロゴが目に入ります。もちろん、不愉快なロゴだと逆に嫌われてしまうこともありますが、好感をもたれるユニクロのロゴは、費用対効果が高いといえるのではないでしょうか。

2.チラシ通りの品揃え
ユニクロはチラシにこだわりがあり、地域ごとにチラシを刷りわけているそうです。地域によって売れ筋商品も異なるため、その特性に合わせているのですね。そして、店舗にはチラシ通りの商品を揃えて、お客さんを迎えています。

3.店舗を大切に
2020年に銀座に国内最大級の「UNIQLO TOKYO」ができました。これで、国内の3大旗艦店は、「UNIQLO TOKYO」、「ビックロ ユニクロ 新宿東口店」、「ユニクロ 池袋サンシャイン60通り店」となりました。店舗の作り方もすばらしいですね。ユニクロは店長の年収が高いことも知られていますが、それだけ店舗を大事にしているということだと思います。

4.本部の徹底したサポート
陳列やスタッフ教育について、いわゆるマニュアルはないものの、本部の徹底したサポートがあるそうです。

5.誕生感謝祭・創業祭
年2回、誕生感謝祭・創業祭と銘打った大規模なセールが行われます。新作アイテムが割引になったり、ノベルティグッズがもらえるため、人気のキャンペーンとなっています。
私は以前、たまたま誕生感謝祭の時期に、ネット通販でTシャツを購入したら、Tシャツと一緒にノベルティが送られてきたことがあります。「ネット通販で買っても、もらえるのか」と感動しました。ファンづくりにもつながっていますね。

社会貢献活動にも積極的

ユニセフとのパートナーシップ、難民雇用、製品回収とリサイクルの取り組みなど、社会、環境、文化に対しても、ユニークなアプローチを行っています。
2010年には、バングラディッシュのグラミン銀行グループとの合弁会社「グラミンユニクロ」を設立。世界の縫製工場と言われ、アジア最貧国でもあるバングラディッシュで、雇用創出を実現しています。
プラスチック製ショッピングバッグから紙袋への移行についても、早い段階から取り組んでいますし、2021年の秋冬シーズンから、アルパカの使用廃止を決めるなど、サステナブルな商品の実現にも尽力しています。

また、アート関連のコラボレーションにも積極的です。MoMA(ニューヨーク近代美術館)ともコラボレーションをしていますが、これはユニクロ・ユーザーがアートに触れられる機会をつくることも目的なのです。アンディ・ウォーホール、ロイ・リキテンシュタイン等のアートを柄にしたTシャツがありましたが、そうでもしないと、街中で彼らのアートを目にすることは、あまりないですもんね。
2019年のカウズとのコラボTシャツも大人気でしたが、ユニクロが売らなければ、カウズは一般に認知されていなかったかもしれません。こういう形で、文化支援をしているわけです。

ユニークな働き方

2017年に完成した有明オフィスは、「ユニクロ・シティ・トーキョー」とも呼ばれています。情報製造小売業への転換、働き方改革を狙いとしたオフィスで、企画、生産、マーケティング、物流、営業、陳列オペレーションまで、すべてのユニクロの仕事ができるようになっています。
私も以前、有明オフィスを紹介する映像を観ましたが、パソコンに向かう社員の隣に、縫製をしている社員がいて、「ユニクロらしくて、おもしろい」と印象に残っています。


以上、ユニクロの特徴についてザッと話してきましたが、まだまだ語りつくせない企業ですね。色んな取り組みをしていますが、すべてつなぎ合わせると、ユニクロはただ服を売っているのではなく「情報製造小売業」としてのバリューを発揮しようとしていることがわかります。ただの小売業ではない、ということです。

知れば知るほどおもしろい会社で、どの切り口で切ってもユニークで尊敬します。新型コロナウイルスをどう乗り越えるのか、次の手をどう打ってくるのか。今後も楽しみです。

Thank you, we love you.

私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。


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