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なぜ今ワークマンは伸びているのか、急成長の理由を解く【ILY, Designability cast】

作業服の小売業だったワークマンが、2018年にカジュアル衣料品「WORKMAN Plus+(ワークマンプラス)」を出店して約2年。今ではユニクロの国内店舗数を超えるほどの急成長をしています。急成長の裏には、どのような要因があったのでしょうか。同社の業務変換、商品力など、様々な角度から考察し、3回にわたってpodcast配信をしました。
『ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか』(日経BP)を参考図書として、本の内容にも触れています。

今回は1回目の収録内容について、記事としてお届けいたします。語り手は代表・辻原です。

ノームコアの流れにのり、ユニクロ店舗数を超える急成長

作業服販売で知られていたワークマンの急成長は、2018年に街で着られるカジュアル衣料品ブランド「ワークマンプラス」を出店したところから始まります。2018年9月にワークマンプラスの一号店が東京都立川市「ららぽーと立川立飛」に出店。それ以降急成長し、2020年5月末時点で869店舗になり、ユニクロの国内店舗数を超えています。2025年に1000店実現を目標にしていて、今、とても伸びているアパレルだといえます。
ワークマンの成長を後押ししたのは、シンプル・イズ・ベストのノームコアのブーブメントです。それまで、ファッションの主流は装飾的なものが多かったのですが、2014年頃から、「シンプルがいいよね」という流れになってきました。スティーブ・ジョブズが黒のタートルを愛用したり、マーク・ザッカーバーグがパーカーを好んだり。Tシャツやジーンズがオシャレだとされ、「ユニクロでもいいよね」になったのも、背景にはノームコアの流行がありました。その流れの中でヒットしたのが、シンプルで機能性がよいワークマンの作業靴です。私がワークマンの商品ついて知ったのも、このシューズが最初で、実際に購入して愛用していました。

アパレル業界のブルーオーシャン「高機能・普及価格」を狙う

ワークマンプラスで売られているのは、Tシャツ、ズボン、アウター、シューズなどですが、実はこれらは、ワークマンプラスとして新しく開発したわけではなく、すべてワークマンの既存の商品だそうです。つまり、売り方を変えただけなのですね。
今、アパレル業界は様々なところでレッドオーシャン化していて、新規参入は難しい状態です。そこで、ワークマンがブルーオーシャンだと切り込んだのが、「高機能・普及価格(低価格)」のポジションです。ちなみにワークマンでは、彼らの商品の価格を「低価格」ではなく、「普及価格」と言っています。安く売るのではなく、普及させるために売っているというのがおもしろいですね。
本の中にも、590円のメリノウール素材の靴下がバカ売れした話がありました。メリノウール素材で590円は一般的には非常に安いですよね。でも、ワークマンのほかの靴下は100円で売っているだけに、自社の商品開発者たちが、「これでいいのか」という疑いを持ってしまう、とか。いろいろ葛藤を抱えながら商品開発していることがわかって、興味深く読みました。安さが自分たちの売りだということがわかっているから、先に値段を決めて、「絶対この値段を超えない範囲で開発する」という執念がすごいなと思います。

データを活用し、自動発注システムを導入

ワークマンがすばらしいのは、業態変換のスピード感やデジタルの活用です。2018年にワークマンプラスを出店して急成長し、3店舗になったものの、それ以降は出店を渋っていたという話があります。ニーズはあったのに出店に時間がかかったのは、今後、より拡大することを見越して、完全自動発注のシステムを開発していたそうです。長期的な成長を見越して、デジタル移行させるという戦略は、おもしろいですね。
では、ワークマンの完全自動発注システムはどういうものでしょうか。通常、「この店舗では、この商品が売れている」ということがわかると、売れ筋商品を一点一点追加発注するのですが、ワークマンの完全自動システムでは、一括発注ボタンを押すだけで、売れ筋の商品が届くようになっています。つまり、それを品出して並べるだけで、自動的に売り上げが伸びる仕組みです。
また、社員全員がデーター分析研修を受け、データをあつかえることも、ワークマンの特徴です。もちろん、全員がデータ分析までできるわけではありませんが、社員全員がエクセルのプロのようになっています。このように、長期的にデータを活用できる基盤を作り、データ結果に準じた売り場環境や、サプライチェーンとバリューチェーンの関係性をきちんと設計しています。

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ワークマンをテーマとしたpodcastは3回にわたり収録しました。2回目・3回目の収録も記事化予定ですが、是非podcastからもお楽しみください。

Thank you, we love you!

私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。

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ILY, inc CEO
Business Designer
辻原咲紀

新卒でデザインプロダクトメーカーに就職、営業・マーケティング・商品企画・デザインの領域を横断し担当。インハウスでの広告制作やブランディング・アートディレクションに携わり独立。ベンチャー企業への技術提供・企業立ち上げなどを経て、0→1、1→100まで幅広いデザインに従事。2016年にデザインのコンサルティング&クリエイティブエージェンシーのILY.incを設立。経営・事業開発・コミュニケーションなど領域を横断した様々なデザインに取り組む。広島市立大学非常勤講師。


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Director / PR manager
服部麻優

WEBプロモーション会社でSEO・リスティング広告などの業務に携わった後、制作部門の立ち上げと部門 マネージャーを務める。 複数プロジェクトを同時に進行管理するだけでなく、品質管理のためのガイドライン・フォーマットを整 備し、チーム内への実施を徹底。各ステークホルダーとの情報の連携についてもツールでの一元管理の方 法を確立している。 経営PRなどディレクション領域を超えて業務に従事し、プロジェクトの範囲に留まらず、クライアントのビジネス全体への提案を実践。

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