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もう集まらない四人

 できれば、似た人と友達になりたいと思っている。無意識にというか、ほとんど意図的だ。

 二人組、あるいはグループになってください。と言われると、自然と仲いい友達のところに行ってしまう。それでも余ってしまうときはある。

 確か高校二年のとき、家庭科の授業で調理実習があった。そのグループを作るときは困った。仲いい友達は他クラスだし、クラスメイトと話せるには話せるけど、移動教室で一緒に行くほど仲良くはない。ほとんど苗字呼びで止まっている。
 案の定、私は余り、結果的に珍しいメンバーのグループに入れてもらえた。サッカー部の男の子、あんまり話したことない不思議な男の子、クラスの中心にいるような女の子、私。
 正直、場違いだと思った。私が普段話している友達とはかけ離れているし、上手くやっていけるだろうかと不安もあった。

 前日に、母と一緒に調理実習の予行練習をした。足手纏いになりたくなかったし、何もできずに浮くのも嫌だった。何となく、頑張っているところを見せたくないという思いはあったのかもしれない。
 しかし、そんな心配はいらなかった。今期のドラマ「いちばんすきな花」に登場する男女四人も料理は苦手だった。私たちもそうだった。思い返すと少し嬉しい。予行練習の甲斐あって、「次どうするの?」と聞かれては指示していた記憶がある。人を引っ張るようなタイプではないため、不思議な気分だった。素直に嬉しかった。

 グループワークは苦手だけど、みんなで分担して片付けるのは楽しかった。
 男女二人ずつで分担した。一組は、机を片付けて。もう一組は食器を洗う。私は後者。あんまり話したことないから、どう会話を続けたらいいか分からない。そんな流れで、ふと身の上話をしてくれて、ああ、この人も努力を見せない人かもしれないと思った。遠くにいると思ってたけど、意外と近かった。この会話が今でも頭の片隅に残っていて、たまに思い出しては励まされている。

 同じメンバーだった女の子とのLINEを読み返すと「美味しすぎてみんなに自慢した!」「また同じ班になれるといいね」って書かれていて、当時の光景が映画みたいに流れていく。知らぬ間に、彼女のアカウントは消えて、高校生の私達だけが取り残されていた。

 クラスメイトでも合わない人はいるし、無理に仲良くする必要はないけど、遠くから眺めて羨むだけではなく歩み寄るのも悪くないなと思う。

 調理実習がなければ、話すことなどなかったかもしれない四人の集まり。

 もう集まれないだろうけど、私の人付き合いのヒントになっている。私は、あの三人に勝手に憧れていた。上手に、それぞれの良いところを取り入れて生きていきたい。

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