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中国シニア教育Bizの最新事情①

初めまして、中国シニア業界の第一線で奮闘中の国際派経営者の続です。今回から二回に渡り、中国シニア教育Bizの最新事情を伝えたい。皆さんの参考になれば幸いです。

前書き:
中国はすでに高齢者社会になっており、且つ速いスピードで高齢化を加速していることが下記の数字から伺えるでしょう。中国統計局によると、2019年時点では、60歳以上の高齢者人口は2.54億人で全人口の約18.1%を占めており、その全人口に占めるウエイトは年々高くなる。世界最大のシニア人口とシニア関連ビジネス市場を持つ中国では、近年来、シニア客層をターゲットとして展開したビジネスはあとが絶えない。が、独特な消費嗜好と消費傾向を持つシニア客層の本当のニーズに応えられ、成功を収めた事業者はまだ少ないようである。本文は今回の新コロナでオンライン教育分野での大発展を遂げたシニア教育ビジネスを、時間順で新コロナ前、新コロナ期間中とポストコロナの三段階に分けて歩んだ道を振り返りながら、新コロナ後の展望も語りたい。中国シニアビジネス市場に参入をお考えの日本の企業様にお役に立てば幸いである。

一、新コロナ前
1,中国シニア教育の始まり
この時期は80年代から今回のコロナ前までで中国シニア教育の黎明期と言えるでしょう。

中国のシニア大学のスタートは改革開放政策が実施された20世紀80年代頃からだと言われている。中国シニア大学協会によると、現時点では、全国においては7万校のシニア大学があり、教室に通う方式の登録生徒数は800万人超となり、オープン大学等の遠隔教育を受けるシニア生徒数も数百万人規模を持っている。

中国のシニア大学の運営主体はほとんど公立大学や国営企業或いは政府機構である。その背景には、80年代から、中国社会が高齢者社会になりつつ、世帯規模が小さくなり、‘空の巣‘の家庭(シニアの夫婦や独身者だけによる家庭)が大量に増えた為、政府はシニア世帯のリタイア後の文化や精神生活を豊かにさせるべく、各地でシニア大学を始めた。中国のシニア大学では、2005年頃から、発展のスピードを加速している。その理由は高齢化によるシニア人口の増加と政府のシニア教育への重要視と投資増加にあったと思われている。

シニア大学では、一般的に、健康関連、文化アート、料理講座などが設けられている。講師は各シニア大学が持つ自前の講師のほかに、社会からも専門技能と経験を持つ講師をアレンジしている。シニアの学費が政府の補助金や運営主体の企業や機構の補助金があるため、市場価格よりかなり安く設定されており、一コースの一学期(4ヶ月間)の学費は約400元(円換算で約8千円)となり、買い得感があるという。シニア大学の規模などにより、ファッション、歌、ダンス、撮影などの人気コースが募集開始間もなく、定員満了の状況がしばしばあり、そこからビジネスの機会と捉えた事業者が現れた。

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2,民営シニア大学の出現
約10年ほど前に、シニア教育におけるサービスと関連商品の供給不足から、ビジネスのチャンスが存在すると頭が冴えた事業者はこの分野に参入した。

提供するプログラムは上記シニア大学で人気のあるコースでなかなか応募できないコースに絞ってスタートした。例えば、シニアアマチュアモデルの育成コースやダンスコースなどが挙げられる。学費は一般的なシニア大学の価格に比べるとかなり割高な市場価格で設定されている。例えば、モデル育成コースでは受講12回で4,000元(約7万円弱)となる。この高い学費にも関わらず、需要が多いため、いつも満員状態という。こういう状況から、中国のシニアは従来の男性60歳から、女性50歳からという年齢基準より、“若返り”の現象が伺えたほかに、彼らの消費意欲と消費能力も前と比べて随分高まっていることが理解できた。

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3,中国シニア教育Bizの課題以下の課題が挙げられる
(1) シニア全体の消費意欲と消費能力がまだ低い水準にある(2) シニア向けのコンテンツに同質化の問題がある(3) シニアの独特な社交や交流ニーズから対面型の教育方式が好ましいが、事業者にとってコスト高

上記の(1)について、改革開放政策の恩恵を受け、市場経済で財を築いた一部の富裕層シニアを除いて大半のシニア層が年金生活者で年金月給は、北京の場合、約3,000元から8,000元(約5万円-13万円)。単価の高いコースの場合、 こういうシニア層の消費意欲と消費能力の中、需要が限られている。

(2)について、ファッション、歌やダンスなど人気コースに集中しており、且つ講師や内容も似たりよったり。同じ講師、特に人気講師が複数の民営位シニア教育機構でほぼ同じ内容を教えるケースも珍しくない。今後、オリジナルのコンテンツがもっと求められている。

(3)について、新コロナ前によく見られた光景である。シニアは知識の学習   だけのためではなく、社交目的でくる生徒も沢山いるという。なので、教室などでの対面式受講スタイルが主流となっていた。それは、2016年から中国でブームとなったAPPによるO2O(online to offline)ビジネスモデルがなぜシニアビジネスに向いていなかったかを上手く裏付けた根拠となる。高齢者はAPPを簡単にダーンロードできても、使用に慣れるまで教育のコストと運営コストがかかるからである。

一方、事業者は教室を確保するために、家賃のコストが発生するほかに、今回の新コロナの際に、生徒が教室に集まることができなり、教室をやむ得ず閉鎖しなければならいビジネス上の脆さも伺えた。

新コロナ前は、教室での対面式受講は絶対な主流となり、オンライン教育はあっても僅かである。

~次回は新コロナ中の課題変化について~

公式サイト:khyj -888.p-kit.com

 Twitter: 北京中国シニア情報最前線



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