見出し画像

「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和三年(2021)2月1日(月曜日)〜2月10日(水曜日)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021) 2月10日(水曜日)   通巻第6793号 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~パキスタン、中国と借金免除、利払い延期、条件緩和など再交渉へ
   一帯一路プロジェクト、いまや暗礁に乗りかけている
*************************************

 ブルームバーグなどが報道している。
パキスタンにおける中国主導の一帯一路プロジェクトが頓挫中。理由は中国とのリスケ、救済、利払い凍結。返済条件の延期と緩和などで中国側は救援する姿勢がなく、交渉は暗礁に乗りかけているという。

 グアダール港の工事がテロや住民の抗議などで遅滞し、また西側は偵察衛星から撮影した写真を掲げ、「軍港」としての施設建設が進んでいるなどと疑惑を呈示してきた。問題は現地の漁民への保障、現地日雇い労務者の過酷な条件やピンハネ、不払い。当局者達の汚職などで工事が停滞していることである。

 鉄道、道路建設に110億ドルが注ぎ込まれた。
ところが、鉄道は途中でレールが盗まれたりして完成は覚束ない状態。道路も区間区間で部族や住民との衝突、機材やセメントの盗難などがつづき、工事は大幅に遅れているが、この間、利息は上乗せされて行くのである。

 パキスタン政府は中国に依存した電力網の建設について、「造りすぐ」の怖れが高いとして、計画の縮小も検討を始めた。なにしろパキスタンの電力網増強には発電所、ダム、変電所、送電線などに220億ドルが投じられた。

 パキスタンは戦後13回、債務不履行に陥っており、IMFは救済に乗り出してきた。しかい、CPEC(中国パキスタン経済回廊)プロジェクトに関してはIMFの救済マターではないとして、中国とパキスタンの二国間交渉に委ねられたという。
      ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆    
  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ニニギノミコトの天孫降臨と同時期にニギハヤヒミコトの降臨があった
  第十代の崇神天皇は「第二の神武天皇」ではなかったのか?

  ♪
田中英道『決定版 神武天皇の真実』(扶桑社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 古代史の謎にいどむ本書はその辺の推理小説より遙かに面白い。
 やさしい平明な文章で綴られてはいるが、古代史の知識がないと何を書いてあるのか、若い人には理解不能かも知れない。大胆な、あまりにも大胆な推理仕立ての古代史論だからである。
 考えてみれば、歴史の検証では科学的思考には限界がある。反面、推理する思考空間がふんだんに残された分野が古代史である。
 天皇譜によれば第十六代仁?天皇まで、歴代天皇があまりに長寿過ぎること、神武天皇の即位が紀元前660年といえば、まさに縄文時代であり、したがって、戦後長きにわたって神武天皇はフィクションという左翼学者の珍説が歴史論壇を沸かせた。
しかし明治以来の錯覚的な歴史認識は、年表が中軸になってキリストの生誕を以て紀元とする暦を日本が無思慮に採用したことである。
日本は天智天皇あたりまで農業暦であり、現在の一年は当時、半年であったから、歴代天皇の長寿を半分と考えると、霧が晴れるように、この謎は先ず解ける。
 また世界史の年表と『古事記』、『日本書紀』の年代との照合は、雄略天皇のときにピタリと一致するようになった。ここから逆算すれば、神武天皇の即位は西暦180年頃となると田中氏は唱える。
 半世紀前に林房雄が『神武天皇実在論』(復刻はハート出版)を世に問うてから、さすがに神武天皇が不在だったという根拠のない珍説は弱まった。いずれそうした暴論は消え失せるだろう。
なにしろ各地に神武東征の事蹟の跡が濃厚に残っており、考古学的検証からも、実在したことは明らかである。
しかし学校では日教組教師が今なお、「あれはフィクション」と断定的に講義しているし、津田左右吉が唱えた「欠史八代」説がいまも影響力をもつ。大学入試に記紀の文章から出題されることはないから、若者は古代史に興味がない。
 そんなおりに本書は神武天皇の実在は当然のこととし、『古事記』、『日本書紀』などの記述を丹念に辿りながら、日本古代史最大の謎、すなわち神武天皇は誰か? を推理する。
 評者(宮崎)も二年前に『神武天皇「以前」』(育鵬社)を上梓し、神武天皇の実在はもちろん、天皇制の原型は縄文時代中期だったとする林房雄説を演繹した。
 そのなかで、保田輿重郎が言ったことを数行、紹介した。すなわち保田は重要なことを言っているのである。
「神武天皇は襲名されたのではないか」
いまでも評者の耳元に残るのだ。
 
これらのことを前提に、田中説の紹介を急ごう。
 仮説の基幹となるのは、縄文、弥生時代に関東に日高見国があり、神武天皇の即位とは天孫降臨したニニギノミコトの孫が大和を支配した。
 つまり田中英道氏の持論は「高天原は関東にあった」とする基本認識である。
 ということは「日高見国が西方に送った勢力が、大和国を新たに日本として建国したと考えられる」との推定に繋がる。そして「神武天皇と崇神天皇の関係、長髄彦(ナガスネヒコ)とは何者か」を考察し、「箸墓古墳こそが真の神武天皇=崇神天皇の墓である」と説かれる。
 論拠、その一。初代神武天皇はハツクニシラススメラミコト(始駄天下之天皇)と『日本書紀』は書く。そして崇神天皇を「初肇国天皇」を書いたが、『古事記』も第十代崇神天皇を「所知初国之御真木天皇」(ハツクニシラスミマキスメラミコト)と表記している。
 『古事記』は、崇神天皇を御真木入日子印惠命(みまきいりひこいにえのみこと)とし、三輪山を信仰し、疫病を抑えたので、「天の下平らぎ、人民栄えなむ」。将軍を十二カ国へ派遣し、とりわけ高志の国を従えたことが特筆されている。そして世の中が平らになり、まさに「初国知らしし御真木天皇と謂う」とある。

 論拠 その二。饒速日命(ニギハヤヒ)の天孫降臨は、「天磐船」でなされたとあるが、根拠地から大和へ船で移動し、多くの随神、随臣を伴っていた。香取、
鹿島神宮が日高見国の核にあって、のちに『日本書紀』が「ヤマトタケルが蝦夷を平らげられ、日高見国から還り、常陸を経て甲斐国にいたり」とあるように東北一帯が日高見国だった。つまり饒速日命(ニギハヤヒノミコト)は、「古墳時代前に、関東・東北を中心とした日高見国、つまり記紀が高天原として神話化させた時代から続く物部氏と深い関係を持ち、大国主命(オオクニヌシノミコトが率いた出雲勢力から権威の移譲(国譲り)を受けた後、伊勢から大和に進出していた当事者」だったと田中氏は推論する。

 論拠 その三。ニニギノミコトとニギハヤヒミコトは「兄弟だった」と田中氏は推論し、「欠史八代」とは、その「初代饒速日命以降の天皇を想定したものではないでしょうか。(中略)この隠された饒速日命の王朝こそ、高天原が支えた大和朝廷だった」(64p)。
 ちなみに『古事記』はニニギノミコトの兄を天日明命(あめのほあかりのみこと)としていてニギハヤヒミコトの名はない。

 論拠 その四。「饒速日命系は、かなりの前から大和国を支配していたことが推定されます」という。
神武天皇の父親はウガヤフキアエズノミコト、かれはニニギノミコトの孫である。したがって田中氏は「ニギハヤヒ(饒速日命)とカムヤマトイワレビコ(神武
天皇)は「同等の天津神であった」のであり、神武東征以前にニギハヤヒ系が大和の統治者だった。神武に最後まで抵抗したナガスネヒコは、このニギハヤヒ系である。だから欠史八代の天皇はニギハヤヒ以後の天皇ではないかと推定される。つまりニギハヤヒが自陣営にありながらも最後まで楯突いたナガスネヒコを殺し、神武天皇に国譲りをしたことになり、「このニギハヤヒノミコトが第一の神武天皇であり、第二の神武天皇が崇神天皇だ」と、飛躍的とも言える推論を展開されるのである。

 古代史を舞台に大胆な推理と記紀いがいの古文書を縦横に駆使して緻密な論理立て。結局、評者この本を二回読んで、ようやく言っている中味を咀嚼できた。
 それにしても多くの挑戦的な著作執筆で歴史学界に波紋を拡げている田中氏に対して既存の歴史学界が反論一つ、声を挙げないのは何故なのだろう。
これもまた古代史の現代的謎である。

     
  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)森さんに関して、もっとも情けない発言は、菅首相が国会で「国益にとって芳しくない」と述べたことです。
森発言をバッシングするだけというのは、そのバッシングする一方の勢力がヨーロッパ諸国だというではないか、ヨーロッパ諸国は、フランス小話が、どれほどポリティカリーインコレクトな内容に満ちているのかご存じなのか。
また現役の自民党総裁が、バッシングされている先輩を一緒になってバッシングするとは菅という人のエスプリという教養もなく、先輩を気遣う人情もない。
こんな人に首相をやっていては欲しくありません。    (関野通夫)

(宮崎正弘のコメント)現代日本の政治家にエスプリを求めるのは、無理筋ではないでしょうか。

  ♪
(読者の声2)以下のサイトに近藤大介さんのミャンマー報告があります。じつに有益な情報が満載で、しかもスーチーは「1980年代の化石」と比喩しています。宮崎さんの分析と似たところがあります。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80061
 蛇足ですが、このコラムの最後に貴書「バイデン本」の批評もありました。
   (JJセブン)


(宮崎正弘のコラム)御指摘有り難う御座います。昨年から決まっていたのですが、この近藤さんと、小生の生番組があります。25日1600.未来ネット「宮崎正弘の生インタビュー」で一時間、ふたりで中国、朝鮮半島、台湾そしてミャンマー情勢の分析をする予定です。ご期待下さい。

  ♪
(読者の声3)貴誌の「声」欄で、いつも鋭く参考になる「PB生、千葉」様の以下の投稿について。
『ミュージシャン・俳優の故デヴィッド・ボウイは死の直前に「グーグルこそイルミナティ。イルミナティはグーグル」という言葉を残した。「グーグルが支配する未来はファシストのディストピアだ。反体制派の居場所はなくなり、言論の自由も存在しない。グーグルは我々の顔を永遠に踏みつけ続けるだろう」「グーグルは闇の国家だ。従来の戦争、スパイ、諜報機関は全て忘れろ。全ての問題はグーグルが支配するインターネットにある。奴らは人々の感情、思考から、我々が得るべき情報の選択、果ては、誰に発言権があるかまで決めているのだ」』
 
 自分はボウイのファンで、興味深かったです。興味を持って、関連する英語ニュースを探しましたが、それらしいのをみつけることはできませんでした。
しかたないのでfacebookの英語版ファングループに投稿して訊きました。質問内容は、「ボウイのグーグルへのコメントを知っている方、教えてください」という簡単なもの。その結果がどうなったか?
「いいね」がすぐに一個ついたので、当初はグループ上に反映されていましたが、すぐにどこに投稿したのか自分でもみつけることができません。おそらく削除されたか? 我々は今、言論の不自由な世界に生きていて、これは日本だけではなく、アメリカ・西欧を覆っているんだと実感しました。ボウイの楽曲に「1984」という曲がありますが、現代はまさに「1984」の世界に陥ったようです。なぜ、GAFAの大企業が主観的な価値判断をするのか?「危険」です。  (R生、逗子)

  ♪
(読者の声4)東日本大震災から10年。あの時、何が起こったか? あれから何が変わったか? 東日本大震災発生時に総務省消防庁長官として史上初の指揮権を発動した人物と、東京消防庁消防総監として福島原発への注水作戦を指揮した人物とが、大いに語ります。
貴重な機会ですので多くの方々の御参加を待ち申し上げております。よろしくお願い申し上げます。
  記
【日時】令和3年3月12日18時
【場所】憲政記念館(国会議事堂前)
【費用】2000円
【講師】久保信保元総務省消防庁長官:福岡県生まれ。東京大学法学部卒。自治省入省、広島県副知事、総務省大臣官房審議官(地方行政、選挙担当)、総務省選挙部長、総務省総括審議官(政策企画担当)、総務省自治財政局長、消防庁長官を歴任して退官。現在、自治体衛星通信機構 理事長。

 新井雄治元東京消防庁消防総監:東京都生まれ。法政大学卒。昭和50年東京消防庁入庁、調布署長、防災部長、警防部長、同庁次長兼人事部長。平成21年7月消防総監。東日本大震災における福島第一原発注水を実質的に指揮。平成23年7月東京消防庁消防総監を退任後、公益財団法人日本防炎協会理事長等を歴任。平成27年6月より公益財団法人東京防災救急協会理事長。
【定員】30人(席の間隔をあけております。マスクの着用をお願いします。)
【共催】 グローバル・イッシューズ総合研究所/一般財団法人尾崎行雄記念財団
【協力】 株式会社産経デジタル「iRONNA」/株式会社近代消防社 
【申込】以下の申込フォームから必ず事前お申し込みください。
https://ozakiyukio.jp/information/2021.html#0203
   (グローバル・イッシューズ総合研究所)
   ◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021) 2月9日(火曜日)   通巻第6792号 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~中英関係も「黄金期」から「氷河期」へ
  英国、中国テレビの免許取り消し、メディア偽装のスパイを摘発
*************************************

 中英関係が揺らぎ始めたのは、香港問題である。
 2019年の香港大乱、民主活動家への弾圧は、その後「香港安全法」の制定となって、事実上「一国二制度」を崩壊させ、香港は中国の植民地となった。1997年の返還条件だった約束は見事に踏みにじられ、英国は怒り心頭となった。

 英国は香港市民300万人に特別滞在許可を認めるパスポート(BNO)を発行したが、中国はこのパスポートを無効とした。英国の方針転換は、カナダ、豪、NZへ跳ね返り、いま一番派手な喧嘩は豪と中国の、はてしなき貿易戦争となっている。

 さて英国はさきに中国CCTVの英国における英語版放送局CGTNの放送免許を取り消したが、2月7日にはジャーナリストを偽装して英国で諜報活動をしてきた中国人三名を摘発し、追放した。さらに英国メディアは、「英国国会がスパイ規制の新しい法律を立法する動きがある」と伝えた。

 この日、バイデン大統領はインドのモディ首相と電話会談にのぞみ、日米豪印の四ケ国が軍事演習などで共同する「クアド」が極めて重要とのべ、また「もっとも深刻な競合車としての中国の挑戦が、米国の利害を侵害すれば、ためらくことなく対応する」とし、トランプ前政権以来の対中強行策の堅持を訴えた。

 この米・英が、豪、加、NZと高度な情報を共有する「ファイヴ・アイズ」に日本を加えて、「シックス・アイズ」とする方針が示されている。しかし、日本はスパイ防止法がない限り、この要請には対応できないのが、今の実情である。
      ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎   
☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ことさらしかつめらしく構えないで、かえって伝えごとの中から
生き生きと心を打つものを採り上げることに熱心な『古事記』

  ♪
蓮田善明『現代語訳 古事記』(岩波現代文庫)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 原本は昭和九年に出た。蓮田善明、まだ三十一歳の時である。その若い歌人としての才能が輝いていた頃であり、すでに多くが語られているが、後年の蓮田が、十六歳で王朝文革の余韻を巧みな文章でものにして登場した若き日の三島由紀夫の才能を見出したことでも知られる。
 評者(宮崎)、この現代語訳本をながらく古書ネットワークで探していたのだが、なんと復刻されて2013年に岩波文庫に入っていたことを知らなかった。
ようやく入手した。
 蓮田は『古事記』の魅力をこう言う。
 「いわゆる民族文学として叙事詩的性質や香気を大いに発揮している英雄の神武天皇、倭建命、あるいは雄略天皇その他の方々の古伝説、すなわち、当然はなばな
しく歌謡を多く交ぜて、叙事詩風に『古事記』で描かれているところも、『日本書紀』では全く削らないまでも、急に冷たい部屋にでも入ったような書き方に変えら
れてしまっています。これに反して『古事記』は、現在のわれわれが考えるような歴史的記述ということには案外のんきで、そのとき手に入った資料にある限りの興味の多い古伝説を欲張って載せています。すなわち、ことさらしかつめらしく構えないで、かえって伝えごとの中から、生き生きと心を打つものを採り上げることに熱心であった古事記のほうにつくろわぬ姿が見え、今のわれわれにも、興味と感動とを併せての、つつみきれぬ魅力をそなえている」(岩波版268p)。
 現代語訳と言っても蓮田の訳本は昭和九年が初版。当時は、カタカナ全盛時代ゆえに神々の名前は変体漢字をとっぱらったカタカナ表記になっている。これは林房雄の名訳もそうだ(『現代人のための古事記』、人物往来社)。
 やはり蓮田善明は国文学者にして歌人だったので、歌の訳が爽やかに、かつ明るく翔んでいるのである。
 スサノオが新妻を迎えて詠んだ詩は、

 「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を」

 これを蓮田はこんな風に訳した。

 「雲が立つ立つ 八雲立つ 出雲は雲が垣をなす 妻と籠もれと垣をなす 夫と籠もれと垣をなす」

新婚の灼熱で哀切な恋歌に見事に変貌しているのだ。
また神武天皇がイスケヨリヒメを娶り、入内したときの歌は

 「葦原の 湿(しけ)こき小家に 管畳 弥清(いやさき)敷きて わが二人寝し」。

 蓮田の訳詞は、

 「犀川べりの葦原の 湿けた小家に管畳 いと清らかに敷きのべて われら交せし新枕」

 このように蓮田は『古事記』に載っている百種あまりの歌謡を現代風和歌に解釈し直した。これだけでも愉しくなる訳本である。次の機会には石川淳の訳本を取り上げたい。
     ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎    

  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@   【知道中国 2195回】       
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港77)

   ▽
 ビールは事前に用意して船に乗ったわけではない。酒に肴、それに軽食を売る小舟が行き来しているから、必要になったら声を掛けて呼び寄せる。貧弱な構成のバンドにソロ歌手を乗せた歌艇が近づいてきたら、一曲お願いすればいい。

 じつに優雅なクルージングを楽しみながら波よけ突堤に近づくと、船縁を接した小舟が舳先をこちら側に向けて停泊していた。その数は10艘ほどだったような。舳先には若い女性が座っている。彼女の後ろに下がった色鮮やかな幕の間から、同じく色鮮やかに設えられた室内が垣間見える。
「花艇」と呼ばれる娼妓船であり、媚びを振り撒く彼女たちに向かって、花艇の前を行き来する小舟に乗った嫖客からヒヤカシの声が掛かる。一帯には、なんとも艶めかしく不可思議な雰囲気の漂う。

よく見ると彼女たちは目をつむっている。同行の年配の友人は麻雀牌を手に、ポツリと「盲妹だよ」。
じつは、そこは海上に浮かぶ遊郭だった。

 盲妹について、中国政府の招待を受け1955年の4月から5月にかけて中国各地を歩いた火野葦平は中国最初の訪問地だった広州の街を歩きながら、兵士として中国
各地を転戦した15年前を思い起こし、「盲目の売春婦だ。逃げないために、客のえりごのみをしないために、房事に専念させるために、楼主が人工的にかかえの女の眼をつぶすのだった」。「(広州近郊の)仏山鎮には盲妹がいる妓楼が軒をならべ、街ではよく盲妹が杖をひいて歩いているのを見た。四、五人一本の杖につながって歩いているのなど、哀れをもよおした」(火野葦平『赤い国の旅人』朝日新聞社 昭和30年)と綴っている。

 ということは、花艇にせよ盲妹にせよ香港独特のものではなく、中国南方の水辺に生きてきた蜑民の文化──《生き方》《生きる形》《生きる姿》──の一部と見るべきだろう。

1960年代末期の香港で蜑民社会を調査した可児弘明は『香港の水上居民 ──中国社会の断面』(岩波新書 1970年)で、蜑民を次のように概括した。

「中国の『蜑民』はもともと広州を中心にして、三水、南海、順徳、中山、新会、番禺、東莞など珠江デルタでもっとも知られ、ことに省都である広州には戦前
一〇万人以上が集中していた。広州の『蜑民』のわが国におけるイメージは、日が西に沈むと女たちが化粧し、服をととのえ、船にランプをともして歌をうたい、
あるいはなまめか嫖客に媚をふりまく娼妓船(花艇)であるが、それは花艇が世俗的な注意をひくまでのことであたって、実際には漁業のほか渡船、水運、物売り、運尿、ゴミ投棄、棺運びの船がその何倍もあったのである。さらに同じ意味でわが国ではよく知られていないが、都市を離れた地方に水上集落をつくる『蜑民』が分布し、広東、広西、福建三省の河川と沿海に、合計一〇〇万をくだらなかったといわれている」。

 だから元来が広東省に属し漁村を主として成り立っていた香港には蜑民が住んでいたわけだが、国共内戦から共産党政権成立前後にかけ、多くの蜑民が大陸から移り住むようになったということだろう。
だが、人民共和国だからといって中国から蜑民が消えたわけではない。広東省を流れる珠江とその支流では、現在でも蜑民が船上生活を送っている。

 ところで火野は広州のホテルの窓から昔と変わらぬ船上の風景を認め、夜の広州の「暗い川っぷちにたくさんの淫売婦がいた。どの女にもやり手婆がくっついていて、客を引くありさまは昔とすこしも変わらなかった。相当な人数である」
と書き留めている。
やはり、この道は毛沢東思想を活学活用学しても簡単には止められそうにないようだ。

閑話休題。ここで可児の指摘する「棺運びの船」だが、そこに地球大に広がる華僑・華人社会のネットワークのなかで香港が果たしてきた不可思議な役割が浮かび上がってくる。
    ○△□◇ヒ◎○△□イ○△□◇ズ◎○△□ミ△□◇◎   

  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)コメントの返信をありがとうございます。私が「日ユ同祖論」(古代イスラエル人の日本渡来説)を知ったのは10年程前でした。
当初、私も「トンデモ説」「こじ付け説」として一笑に付していました。実際、その説明には何ら裏付けもありませんでした。時間の無駄だと思い、一切見向きもしませんでしたが、5年ほど前に、娘が研究論文の調査をすると言う事で、家族全員で京都に約半年間滞在しました。
交通費を出すから孫娘たちの面倒を見てくれと言われ、その甘言に乗って私もフィンランドから京都に行くことになりました。
ある日、鞍馬山にダビデの紋あると言う事を思い出し鞍馬山に登り、頂上の前の広場を見たら、そこにダビデの六芒星があり驚きました。
また貴船方面に向かって下山していたら、途中の小さな神社の前にもダビデの六芒星が彫られてありました。そのうちに、京都市のロゴマークも形を変えた六芒星であることに気が付きました。これが出発点で、その後「日ユ同祖論」に再び関心を持つようになりました。
ところで、小林隆利さんという牧師さんをご存じでしょうか?小林牧師は明治天皇の内親王・仁(しのぶ)様の長男として、大正14年に生まれました。明治天皇は自分の娘の仁様を呼んで、「日本は神道と言っているけれども、本当はユダヤの流れを汲んだキリスト教である。そこで、仁が結婚して男の子が生まれたら牧師にしなさい。」と言われたと証しています。
また証では、「皇太子(平成上皇)は割礼を受けている。」、また、三笠宮殿下(髭の殿下)も皇室の男子は皆割礼を受けていると言われた事があります。
(ユダヤのラバイの証言)また、小林牧師は「高松塚の古墳にはダビデの星があります。ダビデの星はそこだけではなく、伊勢神宮にもあります。伊勢に行くと、表参道があって、たくさんの灯篭が立っていますが、一番上に16枚の菊のご紋、その下にヘロデ大王の紋があって、一番下にダビデの星があります。」「天皇家はレビ族であり、大祭司の立場です。そして、日本の天皇家はダビデ王の直系である」と言われています。
これらは、ほんの一部であり、多くの証拠が出てきていますが、未だ整理されていないのが現状だと思います。
 宮崎先生がご指摘された「カムヤマトイワレビコは神武天皇が即位後のお名前です。」
私もその様に理解しています。私が書いた「神倭伊波礼昆古命」は「大和民族はユダヤ人だった」からの引用であり、古事記では「神倭伊波礼毘古命」であり、日本書記では「神日本磐余彦天皇」になっていました。
 今、私は古神道と旧約聖書を比較検討しながら、日々を過ごしています。正直言って、そこは「宝の山」です。
70歳を越えた老人の楽しみになっています。  (AS生)


(宮崎正弘のコメント)古事記、日本書紀そのほかの古文書が「宝の山」。まったくその通りですね。

  ♪
(読者の声2)しつこい陰湿な「森おろし」のマスコミ・左翼・キリスト教界主体の陰謀めいたキャンペーンの、平等主義論に対して怒りをぶちまける。
 男女の比率をロクヨンにつまり40%女性を政治家にとか理事にとかいうこの発想のアホらしさ。まさに白痴の発想だ!
 男女が結果的に男が80%でありまた別の場合は女が80%占めることに誰も反対していない。最初から男は60女は40%占めるべきだと!
まさに由々しき結果平等論だ。僕の子供たちが幼児の時代運動会に行くとゴールの前でみんなで手を繋いでゴールする。まさに偽善と欺瞞の競争社会を嘲笑った最低の思想を目の当たりにしたのを見た。
キリスト教発祥のこの思想 それに悪ノリした共産主義。20世紀にこれほど害悪をもたらした結果平等思想だ。聖書に葡萄園の労働者ってのがあり、朝一番にならんで日雇いで生活の糧を稼ごうと目を輝かして列にならぶ人々、それに比べグウタラ者はもう1日のなすべき労働者の仕事が終わった頃に現れる。当然、そんな不届き者にはもう今日の日雇いの枠はおしまいです。
それが競争社会の当たり前のルールであり作法である。
しかしこの葡萄園の園長さん、聖書ではイエスと解釈すべき園長さん、最初から働いた労働者からこいつらを含んだ結果、何もしなかった連中にも同じ一律の同額日当をあげるのだ。丸出しの偽善、これは競争社会を否定する罪悪だ!
現代世界を覆っている偽善と欺瞞の男女平等。そしてまともなことを言うとリンチ制裁。まさにこの世はまともな人間が生きる価値はないかもね? あほらしい言葉狩に徹するこのヒステリー状況 紅衛兵時代の到来だ。  (AO生、世田谷)

  ♪
(読者の声3)貴誌前号「嘗て(森嘉郎元首相が)『日本は神の国』と本当のことを発言したらバッシング、森嘉郎は『しんきろう』と呼ぼうなどと、ひどいものでした」とあります。
英語と日本語の翻訳ミスがあるとおもいます。私が中・高生の頃、街の片隅でよくモルモン教の宣教師が「あなたは神を信じますか?」とやっていました。
神とゴッドはまったく別のものです。ゴッドはオールマイティで一神教です。神は複数で、アニミズム的な精霊・象徴のようなもの。天皇陛下の人間宣言の前に、陛下がゴッドだなんて考えていた日本人は皆無でしょう。
欧米人にこれを理解させるのは無理なのだろうか?  (Z生、逗子)


(宮崎正弘のコメント)キリスト教のゴッドは「造物主」。中国語は「天帝」ですから、天の安の河原に八百万の神々があつまって天照大神のときから民主主義だった日本の「神々」とは異なるのも当然でしょうね。そもそも日本の神道は布教しませんし、聖典もありません。

 
  ♪
(読者の声4)知人がフェイブックに「いろいろな評価があるが、森さんが7年間無報酬でガンと闘いながら御老体に鞭打って御国の為にご奉仕してくださったことに対する心からの労いの言葉が一言もない。物事に対するバランスのとれた総合的に適切な評価をする能力を日教組教育とマスコミ各社が奪ってしまった」
に対して
 或る先生「ほぼ無給でボランティア状態でお勉めになったことは、今は国民に伝えない方がいいです。亡くなった時に詳らかにする方が、森氏のためにいいです。きっとご本人もそう思っていらっしゃるでしょう。亡くなっても言わんで欲しいとも思っているかもです。それが日本人です。でなければ、森さんの価値が下がります。今は口が裂けても言うべきことではないですね。今は潔く退場された方がいいと思います。自ら出処進退をお決めになるべきで、大方の声で辞めるのは辞めさせられた感が強すぎで、あれだけの方に恥をかけさせてはいけません」と。
これを読んて宮崎さんもメルマガ配信を有料になさらず、毎日配信、誰もが頭さがると。   (FF子、小平)
◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021) 2月8日(月曜日)弐   通巻第6791号 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ジョー・バイデン政権はどこまで反中なのか?
  ジェイク・サリバン大統領補佐官の言動に注目する必要がある
*************************************

 ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)に注目である。このポストは大統領に国家安全保障上の政策助言をする司であり、嘗てのキッシンジャー、ブレジンスキーに相当する椅子だ。

 サリバンはバーモント州でうまれ、ミネソタで育った。父親はミネソタ大学教授だった。
 彼自身はエール大学からオックスフォードへ留学、再びエールへ戻り博士号。ヒラリー・クリントンの側近として外交問題を助言し、オバマ政権ではバイデン副大統領の安全保障担当副補佐官となった。もし、2016年にヒラリーが当選していたら、当然、大統領補佐官になっていただろう。

 バイデン当選が決まると、順当に大統領補佐官に任命され、ただちに行動を開始した。
 11月21日に日本や仏独英の当局者と電話会談。中国、イラン、ロシア、北朝鮮の問題や新型コロナウイルスへの対応を巡って意見を交換した。

 11月29日には記者会見を開き、欧州との同盟関係強化を確認すると同時に中国問題に言及し、「新疆ウイグル自治区でのウイグル族迫害や香港の統制強化、台湾への圧力に対し責任を取らせると厳しい姿勢を明らかにした。

 政権引き継ぎに際しては前任者のオブライエン氏と会談し、中国を念頭に日米とオーストラリア、インドで形成する枠組み「クアッド」の連携を重視するとし、「中国は米国が分断しているなどと批判して民主主義は機能していないのだから中国モデルが米国より優れていると主張したが、不平等や経済格差などを是正して民主主義の基盤を立て直すひつようはあるだろう」と述べた。
 またサリバンはハイテク戦争を捉え直し、同盟強化と同時にAI、量子コンピューター、バイオテクノロジーなど最先端技術で米国が世界をリードするために大胆な投資を実施すべきだ」と発言した。

そして2月4日、サリバン補佐官は「トランプ前大統領のイラク、アフガニスタンからの撤退計画を中止する」と明らかにした。
2月6日にバイデン大統領は「イエーメンの武装集団フーシをテロリストリストから除外する」とした。

 サリバンは日米豪印のクアッドを重要視しており、「これはアジア版NATO構築へ向けての『ミニNATO』である」と述べていることに注目すべきだろう。

      ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎   

  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)宮崎先生が小名木善行氏の『日本建国史』(青林堂)についての書評を書かれていたので、コメント致します。
書評の後半で、『さて本書で吃驚仰天した箇所は、光明皇后が景教に深く帰依したとしていることで、これはキリスト教ネトリウス派。西欧では異端視され、迫害
された歴史がある。
文献が明示されていないので、真偽は不明だが、この景教をもたらしたのが秦氏で「日本各地に大避神社と号する神社を建立します」という。「だいひ」はダビデと
読んだ(143p)。これは牽強付会、大避神社は秦河勝を祭り赤穂にあるが、景教との関連はひとつも語られていない。景教はペルシアから唐に伝わったうえ、禁止されてもモンゴルには拡大していった。空海が唐に留学の折、影響を受けた形跡はあるものの、神格と人格をわけて考える宗教解釈は、日本の仏教に都合の良いように解釈されて混じった可能性があるとしても、年代が合わない。これまでの歴史文献で、このような指摘は無かった。光明皇后は深く、熱く仏教に帰依し、疫病防疫に活躍されたとされてきたのだから』とあります。
 この部分の出どころは、「日ユ同祖論(古代イスラエル人の日本渡来説」にあります。
光明皇后が景教に深く帰依したと言う根拠の一つは皇后が「悲田院」、「施薬院」を作り庶民に奉仕した事で、その精神はキリスト教の奉仕精神と同じだと言う事です。
 キリスト教ネストリウス派は仰るように異端派として当時糾弾されました。ネストリウス派は「アッシリア東方正教会」(東方アッシリア正教会)ですが、431年に「エフェソス公会議」で異端とされました。その理由は見解の対立によるものでした。ネストリウスは処女マリアの名として、「神の母」という語を使う事を拒絶し、「キリストの母 」を提案したからでした。
今日では既に、多くの人がネストリウスの提案を受け入れることが出来るのですが、当時のカトリック教会は彼を追放したのです。追放された信徒たちはローマ帝国の東部で伝道を続け、福音をペルシャ、インド、中国にまで伝えたのでした。事実、中国の開封にはユダヤ公会堂があります。
 また秦氏は北イスラエルからのイスラエル人であり、キリスト教に改宗したイスラエル人と言われています。(北イスラエル10部族、南ユダ2部族)通常ユダヤ人は南ユダ。
秦氏は「新撰姓氏録」によると、応神天皇の時代の応神天皇第14年(283年)に「弓月国の王巧満」の子と民18670人を連れて渡来したとあります。彼らは高度な土木技術を持ち、また、養蚕技術で絹織物を献上したと書かれています。京都は聖徳太子の側近の秦河勝の所領であり、その土地を「都」にするために献上しました。
また、秦氏の氏寺である太秦広隆寺は元々景教の寺であったと言われています。
この秦氏は本来「弓月国」の出身であり、現在の中央アジア、カザキスタン東部と中国西部にまたがり、現在でも「弓月城」があります。
日ユ同祖論の提唱者の一人であるユダヤ人のヨセフ・アイデルバーグ氏は著書「大和民族はユダヤ人であった」の中で、多くを語っていますが(個人的は賛同できない部分もあるのですが・・・)、中でも注目すべきは神武天皇についてです。
『神武天皇は日本民族の創設者で、最初の統率者と考えられているが、彼の称号【カム・ヤマト・イワレ・ビコ・スメラ・ミコト(神倭伊波礼昆古命)】というのは日本語では満足な説明が出来ない。』
この長い称号の小さな訛りを修正してみれば、意訳出は『サマリヤの皇帝、神のヘブライ民族の高尚な創設者』を意味する論理的な王としてふさわしいヘブライの称号に到達する。
サマリヤとは古代北イスラエルの首都であり、10氏族を統括していたエフライム族の中心地です。そして、エフライム族はイスラエル12氏族の創始者であるヤコブの孫であり、ヨセフの子です。つまり、エフライム族は全イスラエル民族の中心なのです。
もし、日ユ同祖論が正しければ、日本の天皇・皇室はエフライム族の血統(イスラエル)であり、神によって選ばれた選民になります。正に、森元首相が言われたことは正論になります。
因みに、京都御所の門や神社には獅子と一角獣の文様や狛犬像がありますが、獅子はユダ族のシンボルであり、一角獣はエフライム族のシンボルです。
また、千葉県の芝山古墳群の中には「ユダヤ人埴輪」が出土したことは日本の古代史を知る上で重要ではないでしょうか。   (AS生)


(宮崎正弘のコメント)なるほど、出典はそれだったのですか。十日に書評予定の田中英道先生の新作(『神武天皇の真実』)も酷似した筋立てです。
 御指摘の論は牽強付会はなはだしく、一点だけ。カムヤマトイワレビコは神武天皇が即位後のお名前です。原典の漢字の意味はまったく異なっています。『古事記』は変体漢字ですが、『日本書紀』は「神日本磐余彦」となって縄文時代からの原日本人の信仰「磐くら」を示しています。

  ♪
(読者の声2)「光秀とトランプ 3日天下と4年天下」
 2月7日(日曜)に、NHK大河ドラマ「麒麟が来る」が最終回を迎えた。ドラマは、史実通り明智光秀の3日(7日)天下を描いて放映が終わった。
一方、前米国大統領のトランプは、1月20日に4年天下を終わった。
 ここで無理を承知で強引に両者を並べてみたい。
 ドラマの初回に印象的なシーンがある。
 駒:「・・・その人は麒麟を連れて来るんだって」
 光秀:「旅をして、良く分りました 何処にも麒麟はいない。・・・何かを変えなければ、誰かが。 ・・・美濃にも京にも 麒麟は来ない!」
 筆者は、光秀は要するに足利幕府による(若しくは同様のテーストの)秩序再興を目指しており、信長の天下布武の理想と実力を認めつつも、最後はその強引さと残虐さに着いて行けなかったというように理解している。
 さて、一方のトランプだが、軍産複合体、CIAとFBIを中心とした官僚組織、国際金融資本、左翼的指向勢力、主要メディア、巨大インターネット企業、中国との内通勢力との拡大複合体に対して無謀な戦いを挑み、志半ばで1期4年で敗れ去った。
 筆者は、かつて9.11同時多発テロの数年後、まだイラク戦争が燻っている中、NY、ワシントンDCを旅した。
 ホワイトハウス、キャピトルヒル、ワシントン記念塔、スミソニアン博物館等一連の施設を巡った後、アーリントン墓地を経てリンカーン記念堂に着き、次のような雑体漢詩風の歌を詠んだ。
 「大義」
 聖堂の対岸 小高き丘
整然と並ぶ 白石の墓標
 願わくば王道たれ 祖国の政(まつりごと)
 古来壮士 大義に死す

 リンカーン坐像を眺め、当事泥沼に陥ったイラク戦争とアフガン戦争について思いを巡らしていると、直前に訪れたアーリントンの戦没兵士の霊が墓の中から出て訴えかけるような感覚に襲われ、自然発生的に言わば降りてきた。
 戦争に行く以上、死ぬ事もあるだろう。また、傷痍軍人として障碍者となる事もあるだろう。それは軍人として覚悟の上だ。しかし、その戦に国家としての大義が無くてはならない。
 その後何年か経って、イラク戦争の筆頭の開戦理由とされていたイラクによる大量破壊兵器の保有は、開戦当時から噂されていた通り無かった事が確認された。ここに軍産複合体と国際金融資本の思惑は無かったのか。
 ドラマ「麒麟が来る」は、山崎の戦い後の光秀の生存について多少の含みを持たせて終わった。後に南光坊天海になったとの伝説は在れど、少なくとも歴史の表舞台からは姿を消した。一方のトランプは、復活を目指しまだまだ生臭い。
 取り止めの無い文章となった。天下りが約束された軍上層部と、中級以下の将校、下士官、兵士の志は根本的に違う。英霊に恥じぬ大義は在るか、もしトランプの復権の可能性があるとすれば、畢竟その一点に係ると思われる。
  (佐藤鴻全、千葉)


(宮崎正弘のコメント)ユニークは比較論でした。大河ドラム『麒麟が来る』の最終回のことですが、一言総括でいいますと、初めて通俗論をこえて、明智光秀を前向きに評価した点で、65点くらいはつけたいと思います。福知山の御霊神社が光秀を祀っていることもちゃんと紹介されていましたね。
テレビには、架空の登場人物が多すぎるのは、ながく引っ張る意味で彩りを添え、また彼らの台詞でそれとなく時代背景を説明して次に繋げるという小道具で遣われています。それにしても町医者(架空の設定)が正親町天皇と碁をさすことなど、当時の環境からいってもあり得ません。
 最後に鞆にいる足利義昭を排除せよとする信長の明智への命令ですが、これは暗殺工作員を送り込めば済むことであり、長曽我部征伐への伏線は軽視されています。拙著『明智光秀 五百年の孤独』(徳間書店)で指摘したように、足利将軍は、あの時点で既に『過去の人』でした。
 朝廷の権力状況では、近衛前久は失脚しています。ストーリーに無理がありますね。
 また決行前の重大なイベントは愛宕神社の連句会ですが、これもすっ飛ばされ、文化人の招巴も吉田兼見卿も登場せず、ただし細川藤?が秀吉と通じていたことは、最近手紙が発見され、秀吉の迅速な「中国大返し」に繋がったことが史実に近いと言われるようになりました(拙著でも少しだけですが、この点を指摘しました)。
 もうひとつ。信長の遺体が発見されなかったことですが、大河ドラムは、このあたりはすっ飛ばしています。その前夜の『歴史探偵』という番組では、1200度の火災だったから、黒こげ死体の判定が難しい、と学者が分析していた。これも拙著では、2000度の高熱で本能寺は焼かれたので、信長は遺灰になっていたと推量しました。

  ♪
(読者の声3)世界の軍用機のフライト動向を見ることができるサイトがいくつかあります。
https://globe.adsbexchange.com
https://www.radarbox.com
 ほとんどが米軍機ですがC-17大型輸送機やKC-135空中給油機はほぼ毎日のようにアラスカやハワイ・グアムから横田基地や嘉手納基地に来ている。6日(土)には米軍最大の輸送機C-5Mが横田に飛来。米軍V-22オスプレイも関東上空で旋回していると思えば仙台方面に移動したりで忙しい。自衛隊機はすぐに信号を切るので見つけるのはむずかしい。
 先週は弾道ミサイル監視のRC-135電子情報収集機やP-8哨戒機も沖縄に飛来、さらにCー5輸送機がハワイ・グアム・バシー海峡・南シナ海を南下しマレーシアからインド・バンガロール近郊の基地まで飛んでいた。対中包囲網の一環でしょうか。
 中東方面ではカタールを拠点に米軍を中心にNATO各国の輸送機が欧州と頻繁往復、P-8哨戒機がペルシャ湾を回っている。6日には黒海でP-8とRC-135がギリシャからブルガリアを経てクリミア半島の南を通過、ロシア領手前で引き返すなど活動中。
 米国本土は各種輸送機・給油機が毎日数十機も飛びフロリダ半島周辺ではP-8哨戒機とE-6対潜通信・空中指揮機が複数機稼働中。先週末にはB-52爆撃機がノースダコタからテキサスまで往復していた。西海岸ではロッキード事件の本命だったとされるP-3哨戒機が現役。アメリカ軍は予算の制約からか近年は新型機よりも現行機種の延命が多いよう。給油機などB-52と同世代のKC-135(B-707のベース)が圧倒的に多く1957~63年製がほとんど。機体の補強やエンジンの換装、電子機器の更新をしているとはいえ機齢60年以上には驚きです。
 欧州は1月は軍用機だらけ。ベルギー・オランダは自国のF-16戦闘機やヘリコプターが、イタリアも米軍のF-16やCH-47大型ヘリが毎日飛び回っていた。旅客型の軍用機も頻繁にアメリカ本土と往復していたので人身売買・麻薬組織撲滅作戦の一環ではないかとネットで話題になっていた。フランス在住の日本人からは城壁で有名なカルカソンヌの上空もヘリが飛び回っているとの情報も。ベルギーやオランダは人身売買と麻薬の巣窟、スイスやリヒテンシュタインは裏金で有名。
 ルパン三世カリオストロの城(1979年)というアニメ映画では国営カジノの金庫から盗んだ紙幣がすべて偽札、途中で出会った姫様を救うべく乗り込んだ山の中の城
が偽札工場だったという話でした。モナコのグレース公妃が1982年に自動車事故で亡くなったのも夫であるレーニエ大公が麻薬取引のピンはねをやめなかったため見せしめにブレーキに細工された事故との噂があります。1971年の映画フレンチ・コネクションはトルコからフランスを経由してアメリカに持ち込まれる麻薬密輸組織との戦いでした。トルコ~イラン~アフガン・パキスタンは黄金の三日月地帯と呼ばれる麻薬の産地、欧州の違法麻薬市場取引の8割を支配するのがクルド労働者党(PKK)と主張するトルコ。麻薬のバルカンルートです。
 英国がインド帝国時代からアフガニスタンを執拗に確保しようとしたのはアフガニスタン産の麻薬が最高品質だったからという説があります。満洲ではイラン産のアヘンをめぐり三井・三菱が争う事態もありました。
 自らの悪事を相手のせいにするのはアメリカも中国も得意技ですが、アメリカがアフガンに介入して麻薬生産が増えたとイランから批判されているのはなんともおかしな話です。
https://parstoday.com/ja/news/asia-i64989
https://parstoday.com/ja/news/asia-i69483
  (PB生、千葉)

  ♪
(読者の声4)先般、御教示いただいた『青空の下で読むニーチェ』、『アクティブ・ニヒリズムを超えて』、あらためて読ませていただきました(2冊ともに、既に保有していました)。
 あらためて感じ入ったのは、数多い三島作品のなかで、もっともニーチェ的色彩の濃い小説は『絹と明察』であり、この延長線上にあるのが『宴のあと』だという御指摘です。
 私が三島小説の中で最も好きな作品がこの二作なのです。遅まきながら、ニーチェを勉強しなければと思っているところです。自からの浅学菲才、あらためて恥じ入っています。
 ところで、数多ある三島論の中で、私の心に強く残っているものに、「松浦寿輝インタビュー;三島という大きな謎」(『三島由紀夫と戦後』中央公論新社;2010年)があります。    
 このインタビューの中でも話題とされている松浦寿輝著『不可能』(講談社;2011年)も読みました。JNNのTVドキュメンタリー「三島由紀夫に魅せられた人たち」の中で、三島氏とほぼ同年齢の新井和子さん(91歳)が、「92歳まで生きてみればよかったのに」と語っていますが、私もそう思います。
 その松浦寿輝氏は、上記インタビューでは、「三島の存在の不可思議さにずっと魅惑され続けるばかりです」
「本当に怖い人だったと思います」と語っているのですが、雑誌『文學界』2021年3月号の末尾で、「三島小論」と題して、次のように述べておられます。以下に、紹介させていただきます。
 (引用始め)「『虚無』を現実に転じようとした彼の最期を江藤淳は『病気』と呼んだが、わたしに言わせれば『茶番』である。不可能に取り憑かれた人生は悲劇と言えば悲劇だが、あの鉢巻、あの白手袋、あの日本刀にはどこか喜劇的なものがあるとしか見えないからだ。不可能を可能にし、自身の『文学』を完結させるための乾坤一擲の、悲愴な身振りと人目に映ることを期して自裁するのは当人の勝手だが、『虚無』は『虚無』として残り、糊塗されようがない。」(引用終わり)

 なお、前掲書で、宮崎氏は多くの三島論のなかで、石原慎太郎、野坂昭如氏のものを「失敗、主観と思い込みが激しく醜悪でさえある」と評されています。私も、特に石原氏による『三島由紀夫の日蝕』(新潮社;1991年)については、読後「感」はよくなかったです。好き嫌いで言えば、私は石原氏自身をあまり好きではないし、この著作についてもあまり好い感情を抱けません。
 ただし、「主観と思い込みが激しく醜悪でさえある」とまでは思いませんが。
 石原氏は、『老いてこそ人生』(幻冬社;2002)のなかで、「私はいろいろ恩顧も被り啓発もされた三島由紀夫という人について、こと肉体論に関しては手厳しい批判をしてきましたが・・・・」と述べています。
 私も、三島さんの肉体論というか、肉体への執着には、無理があったと思わざるを得ないところです。
 河野多恵子氏は、三島氏について「正面から見ると立派な筋肉がついているけれど、後ろ姿は貧相」と言っていますが、上半身を鍛えて表面だけは見栄え良くしても、足腰の脆弱さは素人目にも明らかで、隠しようがなかった。
 石原氏は、前掲『三島由紀夫と戦後』(2010年)の中(インタビュー)では、「結局、あの人は全部バーチャル、虚構だったね。最後の自殺劇だって、政治行動じゃないしバーチャルだよ。・・・・・・・・・・・それでも、やっぱり僕にとっては。三島さんは懐かしい」と語っています。    (椿本祐弘)


(宮崎正弘のコメント)日本文化チャンネルの討論番組『三島特集』で、竹本忠雄、松本徹、中村彰彦、富岡幸一郎氏らと一緒に三島論を論じたことがあるのですが、最後にそれぞれが、「どの三島作品が好きか、三つ挙げよ」という司会者の質問に答えるかたちで、小生、御指摘の二つに加え、三番目に『天人五衰』をあげたことがありました。

  ♪
(読者の声5)森さん発言で騒がしいけれど、「女賢しゅうして牛売りそこなう」。
長期的視野に欠けた小賢しい女を揶揄したこの諺を子供の頃から祖父に言われていたし、森さん発言は、別になんとも思わない私。出版社勤務でしたから、長年男女平等の職場環境でしたが、男性社員の優しさは、女性社員より勝っていましたし。
  (深澤文子)

  ♪
(読者の声6)テスラのイーロン・マスク氏は、IT企業家には珍しいトランプ支持者で、「すべての政府の規制には反対」と言うが、A I だけは規制しないと危ないと警告している。
 物理を専攻し、ITに直接開発し、車の自動運転というAIの開発にも直に深く関与してきた者の意見である。AIには倫理も義理も人情もない、らしい。
だから危ない。
 テスラは既に自動運転のトラックを開発し、大量の運転手の職が無くなる。タクシーも自動化される。アマゾンの運送業では多くの人間が倉庫で梱包をしているが、日々AIの新型ロボットに職を奪われている。単純労働のみならず知識労働者の職も急速に奪われている。生存に必要な食料は、既に機械化自動化され人口の2%ぐらいで十分供給可能。では、仕事を失った人間は?
 そこで、ベイシック・インカムが当然と言う風潮になった。マスク氏も予想している。左は勿論当然と言う。
 AIには倫理観がないが、人間、特に神を信じない指導者どもは、平気で人民を大量に犠牲にした、と言う恐ろしい歴史がある。かつて人民は奴隷として、労働者として、消費者、役人、兵士、「有権者」として「有用」であったが、その「価値」が疑問視される。政治・指導者を管理・規制・邪魔する「投票者」も必要なくなった。
 結論として、「費用ばかりで価値のない膨大な人口」は少ない方が良い。消費を減らし環境にも優しい。CO2の削減にもなる。
無意味・無駄な人生は、予め減らしては?
そんな論理が世界的に共有され秘密裏に非公式に合意され、では試しにやってみよう、と言うのが今回の、如何にも非科学的、非医学的な、非倫理的な、しかし正確に計画された、人体実験の裏、ではなかろうか。急速な「全体主義化、思想・報道・真実の統制」は、単なる布石、序奏なのだろうか。
今回、「直訴・嘆願」は聞き入れられない。では、竹槍も鍬もない人民には、いかなる「百姓一揆」が可能なのか。  (KM生)


(宮崎正弘のコメント)チェコの作家カルル・チェペイクが世界で最初に、人造人間を「ロボット」となづけ、喜怒哀楽のない機械の危険性を指摘しました。
拙著『エリートビジネスマン・ロボット』(1982年、山手書房。絶版)と、『軍事ロボット戦争』(1983年、ダイヤモンド社。絶版)で、小生もこの点を強調したことがあります。
◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○

🐧

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021) 2月8日(月曜日) 通巻第6790号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~内乱やまぬアフガニスタンへ異常接近を続ける中国の思惑
  ISとタリバン、アルカィーダに潜むウイグル戦士の撲滅へ梃子入れ
*************************************

 米軍はアフガニスタンからの撤退を急いでおり、間もなく2500名規模となる。ほくそ笑むのはIS、タリバン、両派にまたがるアルカィーダ。これらの組織にぶら下がるETIM(東トルキスタン独立運動)などだ。

 西側の仲介で、アフタニスタン政府とタリバンの停戦合意が成立してはいるが、局所的な戦争は続き、また米軍兵士、アフガニスタン治安部隊を狙うテロは影を潜めていない。
 人口3000万人の山岳国家、面積は日本の1・7倍もあるが、山岳、曠野、そして砂漠。ここに主力のパシュトー、ハザラ、タジク、ウズベク族が共存する。タジク族はタジキスタンと同じダリ語後を喋り、シーア派である。スンニ派のパシュトーとは水と油の関係である。

 地図を凝視されたし、このアフガニスタンから細い回廊が、直接中国へ繋がっている。北がタジクシタン、南がパキスタンで両国の国境をこの「アフガン回廊」が遮断している。
 
 アフガニスタン政府はカイザイを引き継いだガーニー大統領が率いるが、治安が悪く、経済は最貧状態のまま、国民一人当たりのGDPは700ドル以下。なにしろ輸出品と言えば絨毯、葡萄、ピスタチオくらいであり、産油国でもない。

鳴り物入りだったアイナク銅鉱山は治安最悪で、中国企業は開発を言いつのりながらチンタラちんたら工事。それを守るのがアフガニスタン政府軍で、しかもその費用を拠出してきたのが日本からの援助だった。
じつに矛盾した話である。

 さて西側メディアはウィグルにおける中国共産党のイスラム教徒の弾圧、強制収容所、不妊手術、米国はジェノサイドと明言した。
しかしなぜ中国がこれほどの過剰反応でイスラム原理主義の跳梁を防止しているのか、その背景説明がない。

 アフガニスタンを経由してIS、アルカィーダで訓練を受けたイスラム原理主義の活動家を中国は「テロリスト」と識別しているが、かれらの新彊ウイグル自治区への潜入を防ぎ、潜入前に拘束するために、中国はアフガニスタンへの治安方面への支援を惜しまないのである。

 アイナク鉱山はアレキサンダー大王の頃から知られる鉱物資源の宝庫であり、この開発を中国国有企業が受注したほか、北部鉱区も中国企業が受けおい、またアフガニスタン支援のため、中国はマスク外交を展開し、医療品なども供与した。
習近平はBRI(一帯一路)プロジェクトでアフガニスタンのインフラ建設に協力する等と豪語し、光ファイバー網建設も始めているが、工事は治安上の理由からまったく進捗していない。


▲カブールのスパイ細胞を摘発したのだが。。。。

さて『ヒンズスタン・タイムズ』に拠れば、アフガニスタン警察はカブールにある「テロリスト細胞」拠点を急襲し、十名のチャイナ国籍を「テロ容疑者」として拘束し、中国へ送還したとしたが、これは逆で中国のスパイだったとした(同紙、2020年12月25日。この新聞はインドの英語新聞)。

この「中国人スパイ達は中国国家安全部所属で、カブールではアルカィーダの情報を集めていた。アルカィーダの潜り込んだ中国籍ウィグル人を洗い出し、囮作戦を準備中だった」(米国ジェイムズ財団発行『チャイナ・ブリーフ』、2021年2月4日付け)。

 この「スパイ」摘発事件が示唆するのは米軍撤退後のアフガニスタンにおけるバランスが中国偏重になる予兆であり、また協力を要請しているアフガニスタンの治安部隊の訓練を中国の基地に招聘して行っていると前掲チャイナ・ブリーフは分析している。

 中国の諜報機関の推定でアルカィーダとIS、ならびにタリバンに潜り込んだウィグル人の若者は数千名。シリアへ出向いて熾烈な武闘の訓練を受け、テロ戦争を戦ったのがおよそ千名と見積もっている。

 米国防省は、タジキスタンにも中国軍主導の訓練基地が置かれており、カブールの動きを監視しているという。
      ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎   

樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@

【知道中国 2194回】        
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港76)

       ▽
 廟街を右手にして渡船街を北に進むと西貢道と交差する。この辺りから先が跌打医(骨接医)、中医(中国医術医院)、中薬行(漢方薬局)などが集中している油麻地と呼ばれる下町で、午後3時頃からブラつくと、街角のあちこちで車座になった労働者の集団に出くわす。多くは車座の真ん中に置いたどんぶりにサイコロを投げ込むチンチロリンを楽しんでいたが、中にはカード博打に打ち興じる集団も見られた。

 香港島の香港仔、?箕湾、銅鑼湾と同じように、油麻地にも「蜑民」が操る船が台風などを避けて停泊する「避風塘」が設けられていた。

 岸壁に立つと、はるか前方に波よけの突堤があり、船は突堤の左右両側に設けられた開口部から出入りする。岸壁から突堤までの海面には水路で仕切られた係留区画が設定されていて、大型船は外側の突堤寄り(右手から左手に「西1区」から「西5区」まで)に、小型船は内側の中央部(同じく右手から左手に「東1区」から「東6区」まで)に、渡し船などの小型船は岸壁沿いに、船の種類と大小によって別々の係留場所が定められていた。

 そこは生まれてから死ぬまでを船の上で過ごす蜑民にとっての生活の場であった。油麻地でも避風塘は一種の水上都市であり、雑貨屋・電器屋・八百屋・レストランなど生活必需品を商う船が行き交い、結婚式場となる光郎艇、教会船、船の上の学校なども見られた。

 当時の香港は、現在の国際金融都市へと変貌を遂げる前段階として、宗主国であるイギリスの殖民地から距離を置いた一個の独立した工業都市へと飛躍するための離陸期にあったように思う。だから香港社会の構造変化は蜑民にも及ぶことになり、漁業や港湾荷役など船を拠点にした生活から船を捨てて陸上生活へと、彼らを取り囲む社会・生活環境も大きな変貌を遂げようとしていた。

 当時は船上から陸上へと生き方(まさに《文化》である)の移行期であり、係留されている船の数も少なくなりつつあったように思えた。
であればこそ1911(明治44)年11月に訪れた与謝野鉄幹の目にした香港の港湾風景──「湾内の水は草色の氈を敷き詰めた如く、大小幾百の船は玩具の様に可愛い」く、「入江は幾百の支那ジャンクを浮かべて浅黄色に曇った」──は遠い昔に消え去っていた。 

 とはいうものの中国人技術者の父とベルギー人の母の間に生まれた医師で小説家の韓素音(ハン・スーイン/1916~2012年)の原作を映画化した『慕情』(1955年)、それにアメリカ人建築家と悲しい過去を持つ香港の女性であるスージー・ウォンの恋愛模様を描いた映画『スージー・ウォンの世界』(1960年)──香港を舞台にした代表的なハリウッド作品がスクリーンいっぱいに描き出す西欧人から見たエキゾチックな、言い換えるならステレオタイプの香港の風情を、時に微かながらも感じられることもあった。

 いまは埋め立てられ跡形もなく消えてしまった油麻地の避風港だが、当時はどす黒く澱んだ海面には得体のしれない浮遊物が浮かび、流れ出た油でギラギラと異様な光を放っていた。

時に腐って腹が破裂寸前にまでパンパンに膨れた豚の死骸なんぞも浮かび、辺り一帯の空気は澱み、得も言われぬ生臭さを発していた。まさにゴミ捨て場の一歩手前である。

 ところが夜になると辺りは激変する。どす黒い海面は近くのレストランや夜総会(ナイトクラブ)の華やかなネオンを照らして厚化粧し、海面はキラキラと輝き、なんとも艶めかしい風情を醸し出す。昼のあの異様な悪臭も気にならなくなるから不思議だ。

 香港生活を始めて半年ほどが過ぎた頃、友人から油麻地での夜のクルージングに誘われた。とはいえ洒落たものではなく、真ん中に麻雀卓1台を置いた小型船に乗り込み、麻雀に興じながら避風塘を行ったり来たりするだけ。

じつは麻雀牌を握ったことすらなかっただけに4人の遊ぶ姿を眺めながら、ビールの独酌で暇を潰すこととなったわけだ。
    
  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)宮崎さんが昨年だされた本で、ミャンマーのチャオピュー現地へ実際に行かれたルポが写真付きでありました。一帯一路の目玉として騒がれても、現地ルポがどの新聞にも無かったので、たいへん教務深く拝読したのですが、さて本日(2月7日)の日本経済新聞に拠りますと、以下のような状況だそうです。
 タイトルは「ミャンマー、脱中国暗雲」です。
(引用開始)「借金をして返せなくなれば、重要インフラの管理権が中国へ渡る疑念がミャンマーでは根強い。象徴例がインド洋を臨むチャオピューの港湾計画だ。雲南省から国境を越え、870キロメートルの石油・天然ガスパイプラインがつながる。マラッカ海峡を経ずに中国内陸部へ運べる中国にとって戦略的な要衝だ。ただ15年には72億ドルと目された事業規模は民主政権下の18年11月の既報合意時に五分の一に縮小した。ミャンマーの要望で港湾需要が判明した段階で次の投資を決める仕組みに変えたためだ」(引用止め)。
 ということはペンディングになったまま、ということで、ミャンマー政府は一方的な中国偏重ではなく、意外に実利的実務的なのですね。
  (GH生、横浜)

  ♪
(読者の声2)貴誌前号の関連して、まずトルコのエルドアン大統領の最近の発言から。
「家族は我々にとって非常に神聖なものだ。欧米世界は家族の構造を壊してしまったために土台から揺らいでいる。我々は政府として女性、子ども、若者、老人、障害者に奉仕し、我が国民一人一人を支えていることを示している」
「自国(アメリカ)で上院を襲撃した人々をテロリストと呼ぶ者が、トルコで学長職を襲撃しようとする者を『権利を求める人々』と呼ぶことは、ダブルスタンダードだ」
https://www.trt.net.tr/japanese/toruko/2021/02/05/erudoanda-tong-ling-mi-nodaburusutandadonifan-fa-1578203
 インドではグレタが農民デモの扇動に関わっていたとしてインド各主要メディアがトップニュースで問題視。
https://www.moeruasia.net/archives/49676342.html
 森喜朗元総理のいわゆる女性蔑視発言では在日欧州各国大使館がそろって「抗議の男女平等ツイート」
https://www.moeruasia.net/archives/49676373.html
 昨年の種苗法改正案が審議された際に共産党を中心とする勢力が芸能人まで担ぎ出して一斉ツイート、女優さんは柴咲コウ作員とネットで笑われた。欧米主要メディアもネット企業もいまやオーウェルの小説の「真理省」であることがバレてしまった。
かつてソビエトの指導者たちはノーメンクラツーラ(赤い貴族)といわれましたが、いまや欧米の支配層は「闇の貴族」でしょうか。
著名なミュージシャン・俳優の故デヴィッド・ボウイは死の直前に「グーグルこそイルミナティ。イルミナティはグーグル」という言葉を残した。「グーグルが支配する未来はファシストのディストピアだ。反体制派の居場所はなくなり、言論の自由も存在しない。グーグルは我々の顔を永遠に踏みつけ続けるだろう」
「グーグルは闇の国家だ。従来の戦争、スパイ、諜報機関は全て忘れろ。全ての問題はグーグルが支配するインターネットにある。奴らは人々の感情、思考から、我々が得るべき情報の選択、果ては、誰に発言権があるかまで決めているのだ」
https://tocana.jp/2017/08/post_14164_entry.html
   (PB生、千葉)

   ♪
(読者の声3)コロナ騒動で空路が途絶して、僻地に逼塞しています。マスクはウレタン製しか許さないマスク警察さえ都会に出没しているようです。
猫も杓子も、コロナ脳からワクチン一神教へ、そんなご時世、「正論三月号」(特集武漢ウイルスとの闘い)に、問題の肯綮を突く論文を読みました。
コロナ狂騒は、令和戦争ともいえる多方面の重大な損害を、国民の現在から未来におよぼしている、無用のつくられたフェイク騒動です。
 〇東京大学名誉教授唐木英明氏・獣医学─
「基礎疾患がある高齢者5000人の救命のために、それに近い数の自殺者を出し、24兆円の経済被害を出し、76兆円の予算を必要とする対策が、社会的に容認されるのか、インフルエンザで死亡する一万人には健康保険適用以外の対策がないこととの整合性はあるのか、厳密な検証が必要である。」
〇八幡和郎氏─
「厚生労働省でも地方自治体でも、医療行政の主導権を握っているのは、「医官」と言われる医師の資格を持つ公務員であって、政治家や事務系の官僚とは別の論理で動く医学ムラの人たちだ。むしろ厚生労働省の医官は、お医者さんの世界が霞ヶ関に送り込んだ代理人と言うべきだろう。」八幡和郎氏。
エボラやペスト並みの扱いをやめるようにとの、退任前の安倍総理の要請は実現していません。岩盤のセンターピンは厚労省の医官閥です。菅総理でも動かせない彼らは、それでは「科学」の立場を背景にしているのか?
この間、動画発信などを通じて、精力的にコロナ戦争で発言してこられた松田学さんが、武漢コロナの真実を明かした「決定版」を発信されました。ぜひご覧ください。厚労省の方針がいかに迷妄に満ちているか、コロナの本質は風邪一般と同様血栓である、このごろの学者は読むべき論文が多すぎるので蛸壷営業になる、などきわめて興味深いです。ユーチューブ 
https://www.youtube.com/watch?v=kypR8PT983w

フェイスブック版 
https://www.facebook.com/manabu.matsuda.731
 ブロガーの藤原かずえさんの疫学的な解析も、フェイクの濃霧を切り裂くエレガントな光明です。これも決定版が登場しました。
武漢コロナの感染は気温の低下にともなって増大する現象であって、緊急事態もGoToも無関係だった。ツイッター
https://twitter.com/kazue_fgeewara/status/1358025640973271045


 気概のあった昔の日本人は、「堂々男子は、死んでも良い」などとうそぶいていました。まったくヘンな世の中になりました。  (半ボケ、石川県)

  ♪
(読者の声4)ヨーロッパの国が森喜朗氏を非難するとはあきれ果てました。彼らは、あの発言がポリティカリーインコレクトだというのでしょうが、
それでは彼らは、多数の隣国を馬鹿にした話を含むフランス小話(イストワール)を禁止なりして、やめたのでしょうか。
この小話は、特にベルギー人をひどく馬鹿にします。無数と言っていいほどあります。やめてないと思います。そういうあなた方が、森さんにケチをつけられるのか。森さん、こんなことで凹んではだめです。
日本でもこういう風にバッシングにあっている人を、自分は安全なところにおいて叩いている人が大勢いますが、卑怯この上ないですね。
どなたかおっしゃったように、今まで贔屓ではなかった森氏を応援したくなります。    (関野通夫)


(宮崎正弘のコメント)森嘉郎氏は金沢二水高校、早稲田大学と、じつは小生の直系の先輩です。批判は山のようにありますが、世間の誤解をもろともせず、正義感と責任感の強い政治家だと思います。
◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○

🐧

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021) 2月7日(日曜日)  通巻第6789号 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~中国のウィグル族弾圧は「人類の恥」とエルドアンは発言したっけ
  ワクチンと引き換えにウィグル独立運動活動家50人を「取引」か?
*************************************トルコのコロナ感染者は250万人。死者は2万6000人。
 中国は30万本のワクチン供与を一月末までに供給するとトルコ政府に約束した。だが、約束は果たされず、「通常の遅れ」とは異なる背景があるのではないかとするAP電(2月5日付け)をインドの『ザ・タイムズ・オブ・インディア』が大きく伝えた。

 中国共産党の凄まじいウィグル族弾圧を米国が「ジェノサイド」と定義した。バイデン政権は、この言葉を継承するとブリンケン国務長官が発言している。
2016年にトルコのエルドアン大統領は「ウィグル族への弾圧は人類の恥だ」と中国を非難した。

 このトルコの力強い支援発言と亡命者の受け入れ態勢により、多くのウィグル族はイスタンブールを目指した。いまでは5万人のウィグル族コミュニティができた。
「独立を目ざすテロリストの地下組織がある」と中国がトルコ政府を強く抗議してきた。ウィグル族はトルコ人と同じチュルク系であり、言葉もほぼ共通である。
 そもそも現在のアナトリア半島に棲み着くトルコは、その昔、中央アジアにあったチュルク系の突厥、鉄勒などが、ウズベキスタン、キリギスなどへ南下し、ペルシアからセルジュクトルコの傭兵となり、いつしかオスマントルコ帝国を築き挙げた歴史がある。

 トルコ政府と中国の微妙な関係、政治的雰囲気の変化を敏感に感じ取ったウィグル独立運動活動家の一部は、すでにドイツのミュンヘンなどへ散った。
トルコでの政治活動がやりにくくなり、トルコ警察と公安が監視を強化し、ちょっとでも政治的な動きをすると拘束される。すでに50名が、不当に拘束されたと独立運動関係者は言う。

 「中国はワクチン供給を意図的に遅らせ、50名のウィグル独立運動活動家と引き換えに強制送還をさせる裏取引が進んでいるのではないか」と消息筋はみている。

 だが、もしそうだとすれば、嘗ての『人類の恥』はエルドアンへのブーメランとなる。このところ、イスラム復古の著しいトルコの実情の加え、西側への反目と不満を募らせているトルコが、露西亜から武器を購入し、中国の経済支援を当てにしてきた。
 人道を尊重する建前があっても、中国を非難しなくなったドイツ、その偽善を摸倣しようとするのだろうか。
      ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~聖武天皇は熱く仏教を敬い、光明皇后はキリスト教を信じた。「えっ?」
  八世紀に蔓延した疫病(天然痘)は新羅からもたらされた
 ♪
小名木善行『日本建国史』(青林堂)
@@@@@@@@@@@@@@@

 『肇国史』でないところが親しみやすい。庶民レベルの感覚で謎の多い古代史から中世を説いた。
 昔々、「『太平記』読み」という職業が存在した。辻にたって流れるように太平記を語る。紙芝居のように、ちゃんと料金を取って成り立ち「はい、今日はここでお仕舞い。明日のお楽しみ」となる。
 本書はまるで流れるようなリズムで、難解とされる『日本書紀』を元に、辻に立つ講釈師のごとくに誰もが分かる会話調で語りかけるのである。評者(宮崎)自身は日本書紀より、古事記を重視して愉しむ方だが、本書はその区別の認識も何時しか忘れてしまうほどに快調な音律がある。
 そして学者が語らない、あるいは意図的に重視してこなかった細部を抉り出しつつ、一方で左翼歴史家がばらまいてきた嘘の解釈をばっさりと、それもやさしい言葉を用いながら斬って捨てるという離れ業を同時進行させる。
まず朝鮮半島の歴史の大きな誤りを正す。
稲作も土器も、ましてや古墳も朝鮮半島からもたらされた文明ではなく、すべて日本から向こうへ伝わったこと。そもそも五千年の長きにわたって朝鮮半島は人が殆どおらず、南は倭人が行って稲作を始めた。
「つまり古代において朝鮮半島には、倭人と遊牧系混血族の高句麗の二種類の民族が半島の北と南にいた」(中略)「高句麗が半島を統一し、その一派が新羅に入り込み、その新羅が唐と結んで半島の倭人達を追い出して、いまの朝鮮半島になる」(33p)。
神武肇国は八紘一宇、稲作の普及により、民を豊にすることだった。
ところが稲作に従事しない狩猟、漁労、鉱山関係は、神武天皇が樹立したヤマト政権に不満を抱き、歯向かう。それが「熊襲、土蜘蛛、蝦夷の問題」という。
疫病対策もまつりごとの中心だった。
古事記には崇神天皇の御代に半分の国民が死んだと書かれ、日本書紀には国民の大半が死んだと書かれている。また著者は八世紀に大流行した天然痘で藤原四兄弟まで死んだが、この疫病は新羅からもたらされたことを指摘する(142p)。
なぜか悪行天皇といわれた雄略天皇は、当時大挙渡来した外国人のなかに悪いのが多く混ざっていたため「悪人達を次々と捕縛、投獄、死罪にし(中略)自らが必殺仕置人。こうしてわが国は雄略天皇の時代にすっかり治安を取り戻します」(101p)。

 さて本書で吃驚仰天した箇所は、光明皇后が景教に深く帰依したとしていることで、これはキリスト教ネトリウス派。西欧では異端視され、迫害された歴史がある。
 文献が明示されていないので、真偽は不明だが、この景教をもたらしたのが秦氏で「日本各地に大避神社と号する神社を建立します」という。「だいひ」はダビデと読んだ(143p)。
 これは牽強付会、大避神社は秦河勝を祭り赤穂にあるが、景教との関連はひとつも語られていない。景教はペルシアから唐に伝わったうえ、禁止されてもモンゴルには拡大していった。空海が唐に留学の折、影響を受けた形跡はあるものの、神格と人格をわけて考える宗教解釈は、日本の仏教に都合の良いように解釈されて混じった可能性があるとしても、年代が合わない。
 これまでの歴史文献で、このような指摘は無かった。光明皇后は深く、熱く仏教に帰依し、疫病防疫に活躍されたとされてきたのだから。
 もしこの説が正しいとすれば、氷解する謎解きが一つある。
 奈良の聖武天皇陵は佐保山南陵。隣接する佐保山東陵は光明皇后である。過日、撮影にいったことがあるが、壕もない平地で静寂を極めていた。
飛鳥の小高い丘の上にある天武・持統天皇の共同御陵のことを思うと、なぜ聖武天皇陵から百メートルほど左奧に光明皇后の陵墓が別れて祀られているのか。現地で参拝したときに何故かと思っていた。しかし本書の説くように聖武天皇が仏教徒、皇后がキリスト教だったとは! 
この説には古典文献などの裏付けがもっと必要だろう。
 光明皇后は、施薬院という無料の医療所を設けられている。信長の時代の南蛮寺(キリスト教会)とて、新興宗教の一セクトの扱いであり、デウスが大臼、マリアを慈母観音と認識していたのだから、八世紀の日本の宗教状況は、そういう側面もあったのだろう。
 ともかく本書には物語風の面白さがふんだんにある。
           ★☆★☆★ 
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@

【知道中国 2193回】       
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港75)

   ▽
 当時の住所は香港九龍渡船街文蔚楼24楼××号で、文蔚楼に向かって左隣は文昌楼。同じように「文」の字を冠した名前で、同じデザインの高層アパートが左右に2棟、前後に3列で6棟が並んでいた。
1階に種々雑多な商店が入った所謂「下駄履きアパート」と言ったところ。住民の社会階層は中の中程度だったろうか。

アパート群の前は広い駐車場で、その一角に路線バスの発着所があり、その先が佐敦道碼頭(ジョーダン・フェリー)だった。九龍と香港島を結ぶ海底トンネルが未完成だった1970年代初頭は、トラックはここからフェリーで香港島に運ばれていた。

アパートの裏手は海で、「蜑民」と呼ばれる船上生活者にとっては住まいであり職場でもある船──罟仔艇(小型巻き網漁船)、蝦艇や大眼鶏(エビ底曳き網漁船)、?艇(大型巻き網漁船)、唐家?や七棚?(大型トロール漁船)など──が係留されていた。

近くに航海の安全を守る神様の媽祖を祀る廟があり、媽祖の誕生日にあたる旧暦3月23日、赤や金色に彩られた「花座」と呼ばれる巨大な移動神祠を乗せた船が集まり、鳴り響く爆竹の硝煙が立ち込める一帯は暫しの華やぎに包まれたものだ。

 香港の民俗学研究書では「花座」は英語でPortable Shrineと訳されているが、幅は3~4mで高さは6~7mほどあったように記憶する。日本人的感覚では、縁起物の熊手の超大型で超ハデ版と表現するのが適当だろう。
 
 廟の前に広がる広場では、夜の帳が下りる頃になると三々五々と屋台が立ち始める。たしか毎晩であったと記憶するが、アセチレンガスの灯りに誘われて出掛けた。生活雑貨、衣類、古道具や古本などが売られ、大道芸も演じられていた。「自拉自唱」などと銘打って胡弓を拉きながら唱う芸人もいたが、素人芸に毛の生えたレベルに過ぎなかった。

 とはいえイカ、鳳爪(鶏の足)、香腸(中国式ソーセージ)、串に刺した魚団子など種々雑多なスナック類を食べながら、夜の数時間だけの摩訶不思議な空間に浸ったものだ。食べ物屋の中でイチバン顔なじみになったのが、天ぷら屋のオヤジだった。

 天ぷら屋といったところで屋台などを構えているわけではない。屋台が立ち始める頃になると、どう見ても手製としか思えない粗製乱造気味の台車に商売道具の鍋、七輪、廃材を小さく切り刻んだ燃料、油、うどん粉、水などを乗せてやってくる。
車道と歩道の境目辺りの定位置に七輪を置いて、火を熾し廃材をくべる。鍋の油の温度が上がるのを待ちながら、干しエビや刻んだ菜っ葉類を放り込んだうどん粉を水で溶いた。

油が適温になった頃、オヤジはやおら立ち上がり、飛び跳ねる高温の油滴から守るために、両足を厚手の紙で包み、何か所かを紐で縛った。
それから腰掛に座って天ぷらを揚げ始めるのだが、熱せられた油の入った鍋は体の正面で、両足の間に位置するわけだ。

オヤジは箸を使わなかった。硬めに溶いたうどん粉を右手で取り、油でギトギトになった鍋肌に10cm20cmほどの大きさに塗り付ける。しばらくすると鍋に付いた面が揚がり、熱された油の中にズルズルと滑り落ちる。
そこでパチパチと油が足に飛び跳ねるが、厚手の紙に守られ火傷することはない。創意工夫。必要は発明の母とは、よく言ったものだ。

 練ったうどん粉を右手で鍋肌に塗り付け、左手で揚げあがった天ぷらを取り出す。紙に包んだアツアツの天ぷらを肴に、ビールを口にしながら、オヤジの寸分の隙も無いワザに見惚れる。商売繁盛。鍋から立ち上る油で黒光りしたオヤジの顔は、明るく輝いていた。

半世紀が過ぎた今になって思い起すのは、やはり当時の香港に沸き立っていた生きることに対するガムシャラな活力だ。あのエネルギーもまた、当時のクロフォード・マレー・マクレホース香港総督による「香港の黄金時代」を象徴していたようにも思える。
    
  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(読者の声1)森嘉郎元首相・東京五輪組織委員会会長が「女性が参加すると会議が長引く」と本当のことを言ったら、世の中バッシングの嵐。日本はつぐづく本当のことを言えない、偏狭な、息苦しい言論空間が出現しています。
これじゃ、トランプの発言を封じる言論弾圧と変わりません。思わず森さんを支援したくなりました。(KO生、中野区)

(宮崎正弘のコメント)嘗て「日本は神の国」と本当のことを発言したらバッシング、森嘉郎は「しんきろう」と呼ぼうなどと、ひどいものでしたね。
 古事記が描いているように神代と人代に編集は別れているとはいえ、高天原と神武天皇は交流していました。正月参賀で国民の八割が神社へ行きます。だから日本は神の国です。
   ♪
(読者の声2)下記は読売紙の記事の再録です。WHOが武漢に入りましたが、ロシアの専門家は、「研究所の実験室は設備が良い。ここからウイスルが漏れたとは考えづらいと話した」とのことです。 
 (引用開始)「WHO武漢調査、調査団メンバーが「武漢ウイルス研究所からの新型ウイルス流出に否定的発言」との報道が中国メディアに相次ぐ。ロシア人の
疫学専門家ウラジミール・デトロフ氏が「研究所の実験室は設備が良い。ここからウイスルが漏れたとは考えづらい」と話したと人民日報系の「環境時報」が報じた。中国国営の英字紙「チャイナ・デイリー」は英国人専門家の映像を発信。米CNNテレビが「研究所でウイルスが作られ、漏れたのか」と尋ねたのに対し「証拠はない」と答える場面を流した。中国政府はウイルスの起源が中国だとする見方に強く反発しており、調査団の発言を利用して世論を誘導する狙いが透けて見える」(引用止め)  (TK生、愛知)
  ♪
(読者の声3)先日のテレビ(未来ネット「いわんかな」)でミャンマーのクーデター、「あれは良いクーデター」とおっしゃっていましたが、西側が制裁すれば、ミャンマーはますます孤立を深めますから、中国の出番になります。決して良いとは思えませんが?  (TY生、さいたま市)

(宮崎正弘のコメント)オバマは「アフガニスタンは良い戦争」と発言したことがありますが、ちっとも良くなく、戦後初めて海外派兵したドイツは戦死者を出してから、撤退。トランプはアフガニスタンからの撤退を決めて実行に移していたのに、バイデンになって、また撤退をやめました。泥沼です。
 「良いクーデター」の見本はタイでしたが、あのとき、西側は黙っていた。エジプトのクーデターも抗議らしいことはなく、シシ軍事政権は言論封鎖をしていますが、イスラム原理主義が共通の敵ということで、西側の沈黙が続きます。
 トルコはクーデターが失敗に終わったのに、西側はトルコを非難し、一部制裁を強めたり典型的なジグザグ路線。西側はトルコ軍のクーデターでエルドアンの退場を臨んでいたかのよう。NATOの重要メンバーであるトルコを、結果的に露西亜、中国寄りにしてしまいました。
 こんどもミャンマーに関して、バイデン政権は人道を盾に制裁を口にしていますが、国連の足並みが揃わず、おそらくこのまま制裁のジェスチャーくらいで終わりそう。
でないと中国の跳梁跋扈がまた本格化しますからバイデン政権もそれくらいの計算はできていると思います。
  ♪
(読者の声4)貴著『こう読み直せ、日本の歴史』(ワック)を読み直しています。日本のマスコミは、コロナの報道ばかりで、しかし肝心なことは伝えませんね。
京都大学の上久保教授によれば、「ただの風邪」とか。順天堂大学免疫学の奥村教授によれば『毎日、味噌汁を口にしていれば大丈夫』とのこと。政治家もマスコミの連中も読書しませんな。  (KN生、鹿島市)
   ♪
(読者の声5)令和三年2月6日 通巻第6788号で、世界の論客の紹介がありました。そして、2000年代にはソ連崩壊を予測したエマニュエル・トッドが含まれていました。
このソ連崩壊予測について、日本人にも予測した論客が数名いた、舶来信仰ではなく自国の論客にも目を向けるべきでは、という趣旨で書かれたようですが、これだと彼の真価が誤解されてしまうと案じました。
 彼がソ連崩壊予測の論文を書いたのはまだ若い頃でしたし、それは彼が有名になるきっかけを作ったに過ぎません。彼の業績で真に優れたものは、家族構造と社会全体の基本的価値観とが関連しており、基本的価値観から導かれる思想・イデオロギー、更にはそこから生み出される政治体制までもが、社会の最小単位である家族構造と深く関連している、という理論です。この理論を土台に思索を深めれば、世界で起きている事象の背景がより深く理解でき、さらにはある程度将来の事象も見えて来ます。この理論こそが彼の真価です。
 残念なことに、彼以外に人類学的データに精通し、かつ政治・社会に対する対極的な視点を持つ論客が現れなかったため、この理論も彼とともに忘れ去られそうな状況ではありますが。
 とにかく彼はもっと評価されていい人物だと思いますし、彼の理論を実践できる人材の育成がなされるべきではないかと常日頃感じています。
それから日本文学について一言。日本文学は現在決して衰退しておりません。文学の主流のジャンルが変化しただけだと思います。現在、主流となっているのは、ライトノベルやネット小説だと思います。それらの中には作者の深い知性、諧謔、ユーモアなどを感じさせる作品も少なくありません。
それこそ舶来信仰に囚われているせいで、こうした日本の大衆的な文学の勃興に気づけないでいるのではないでしょうか。自国の人材に目を向けろ、と言いながら、自国の人材に気づけずにいるのだとしたら、皮肉なことだと思います。
(根無し草)
  ♪
(読者の声6)コロナ騒ぎに外国の大統領選挙騒動で 皇室 憲法 国防論議ははやらなくなりました。古来、我が国は「何事もなし崩しをもって尊しとなす」国柄であります。
 現行のマッカーサー憲法改正を真正面から論ずる方もおられますが、まず無理でしょう。
養老律令を700年間維持したまま令外官の検非違使庁を肥大化したような武家の幕府将軍政治を明治維新までやってきたのが日本国であります。
 憲法9条の下の自衛隊も似たようなものであります。そのうちなし崩しの核武装もありえます。
 皇位継承問題もしかり。継体天皇の御先例あり。万一の時には竹田恒泰先生辺りがおわせられます。オリンピックの森前総理は現在も奮闘中でありますが まことに日本国は神の国であります。
 祓いたまえ清めたまえ守りたまえさきわめたまえで コロナもいずれ収まり、国際運動会はやるにせよやらぬにせよ来年の今頃には忘れられているでしょう。
   (YN生)
◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○

🐧

★謹告 パソコンが壊れて修理に手間取りました。ようやく再開です!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021) 2月6日(土曜日)   通巻第6788号 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~もっとわが国の足下を照らそう
   外国人の未来予測は日本には当てはまらない
*************************************

 嘗て未来学者のハーマン・カーンは、「21世紀は日本の世紀」と言ったが、この予言は前倒しされ、1980年代は「日本の黄金時代」だった。以後は右肩下がりである。
 GDP競争では十年以内にインドにも抜かれ、転落の道が示されてきた。

 90年代に活躍したのはズビグニュー・ブレジンスキー、ジャック・アタリ、そして第三の浪を書いたアルビン・トフラーの三人組だった。
 前者二人はグローバリスト、後者はハーマン・カーンの亜流だった。

2000年代になると米国一極支配を説いたフランシス・フクヤマ、ロバート・ケーガン。ソ連崩壊を予言したエマニエル・トッドらが世界中のメディアからうんと持て囃された。しかし足下を照らせばソ連の崩壊は丹羽春喜、那須聖、小室直樹らが予測していた。とくに丹羽論文は英訳され、米国で大いに注目されていたのだ。

 近頃の「四人組」と言えば、経済ではポール・クルーグマン、スティグリッツ、近未来予測ではアラン・ブルーム、そしてニーアル・ファーガソンだろうか。
日本のメディアの悪い癖は、これら著名な外国人の予測を有り難がって、大きくページを割くが、日本人で同様な予測をなしている論客には見向きもしない。

舶来信仰は、物質的には収まったかに見えて、日本人デザイナーが見直されているものの、映画といえばハリウッド、邦画はさっぱりふるわず、文学は川端、三島以後、明らかに衰退した。

幸いにして次の大河ドラマは渋沢栄一、映画になったのは二宮金次郎。文学、歴史では古典や古事記の静かなブームが起きてきた。
夜明けは近い?
      
☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆      書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~まさに『コロナは序の口』だ。自由が脅かされている
   台湾は日本の生命線、アメリカは最後まで守る気はない

  ♪
門田隆将 v 石平『中国の電撃侵略 2021~2024』(産経新聞出版)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 危機は深刻、それも目の前、香港の次は台湾であり、「中国が台湾を侵略するか、どうか」ではなく、バイデンという途方もない利権屋の登場によって「それ(中国の台湾襲撃)は何時か?」という時間の問題となっていると、凄まじい危機の到来を警告する。
 台湾は日本の生命線、アメリカは最後まで守る気はないから、台湾がやられたら次は尖閣である。
まさに『コロナは序の口』でしかなく、世界の自由が脅かされている。
 ところがアメリカのSNSは、トランプ大統領のアカウントを永久閉鎖して、言論の自由を奪った。
 「異論を許さない全体主義にアメリカが確実に向かっている」(門田)
 あの親中派のメルケルさえ、是には驚いて正論を吐いた。
「表現の自由の制限を運営会社の経営陣がするのはおかしい。これが出来るのは立法者だけであるべきだ」
 そのメルケル発言の重要性を門田氏は繰り返す。
 「人類が長い時間と多くの犠牲をもとに獲得した崇高な言論の自由に私企業が『制限を加える』ことなど許されるはずがない。(中略)その自由を守るべき立場にあるジャーナリズムは、アメリカも、日本も、これを『肯定』し、『圧殺』する側にまわったことを私たちは忘れてはなるまい」。
 ついで石平氏は中国国内から飛び出した或る学者の意見を注目する。
 「中国人民大学國際関係学院副院長で、同大学教授の?(てき)東昇(中略)は、著名な学者というだけではなく、中国政府と非常に濃密な関係があり、共産党の対外工作、対外宣伝に深くかかわっている」。
 この?教授が何を発言したか。
 一 1992年から2016年まで(トランプ登場前まで)、米中間でどんなに深刻な問題が起きても、われわれ(中国)はそれをコントロールすることができ、米中関係はわれわれの『手の内』にあった
 二 その最大の理由は、アメリカの上層部にわれわれの味方の人間がいること、米国の権勢核心層に中国の老朋友がいる
 三 アメリカの政治エリート上層部をわれわれに繋げるのはウォール街であり、米国の政界と権力中枢に強い影響力を持つウォール街はわれわれの味方である。
 ところがトランプの登場により、この手法が通じなくなって、米中貿易戦争が始まって「ウォール街はじつはあの手この手で中国を助けようとしたが、力が及ばなかった」。
ところがコロナ禍でバイデンとなった。
「バイデンの息子はあちこちでファンドを造って商売しているが、誰が彼のためにファンドを造ってあげたのか。その背後にあるのは『取引』だ」と?教授は堂々と自慢したのである。 
 いやはや、本書はほかにも内部情報が満載、日本人が知らない事態が舞台裏で進んでいることを思い知らされた。
         
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)立春近しで野山もなんとなく赤みを帯びてきました。コロナが低調になると良いのですが。
 さて中共企業の上場に西側が群がっているといいますが、これはまさにレーニンが毒づいた「資本家は貪欲なので、自分のクビをしめるロープでも売る」とのべた言葉が想起されます。担当者は目先の利益と保身しか見えず大蛇の口に入ってゆくのでしょう。
 日本は兎に角再軍備、核自衛です
    (落合道夫)

(宮崎正弘のコメント)天武天皇の勅語を思い出しますね。「それまつりごととは、軍備なり」。

   ♪
(読者の声2)政府がのたまう「人類にこの災難に打ち勝った勇気と希望をあたえる為にオリンピックを是が非でも挙行する」。
一見、「高邁そうであるが幼稚な」態度は、多くの日本国民に「コロナが一段落すれば日本も世界も以前のような経済環境に戻るんだ」と誤解させる大きな原因となっているのです。
 1945年3月の東京空襲後も、日本人が疑いながらも 「日本が勝つ」と 言っていたのと同じ現象だと思う。
 五輪よりも、財務省は国民へもう一度10万円の給付金を出した方がいいんじゃないか。
底辺はかなり困っていると思う。
財務省の官僚にはわからない感覚ですか、ね。
   (Z生、逗子)

   ♪
(読者の声3)ミヤンマー軍部の勝利 スーチー逮捕
ついに20世紀最悪の偽善者マザーテレサに次ぐ最低の偽善者スーチーが倒された。感慨無量だが、アメリカ愚衆国は「売電」(バイデン)だから徹底的に軍部を批判するだろう。日本はこのスーチーを支持してはならない。この元MI5のスパイ欧米の手先 この実像は恐るべき衆愚主義を仮面にした英国エリート主義で祖国への愛などまったくない指導者なのだ。
欧米の民主主義なる偽善と欺瞞に騙される日本よ、自らが大東亜戦争の結果見事にアメリカに嵌められた歴史を直視するが良い。スーチーのノーベル平和賞ほど茶番はないのである。
スーチーは父アウンサン将軍が黒幕英国の手で暗殺されていながら、その親殺しの英国という地で学び英国人でチベット研究者のマイケル・アリスと結婚した。実際、彼女の夫は英国情報部部員であり、まさにミヤンマーを欧米に取り込むため逆ハニ─トラップしたといわれている(高山正之説)
たしかに暗殺されたアウンサン将軍は親日の偉大な将軍だったが、この娘はまさに欧米の走狗に過ぎない。
  (奥山篤信)
◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○

🐧

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021) 2月2日(火曜日)通巻第6787号 <前日発行>  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「中国のアフリカ外交が常に上出来とは思えない」
  リンダ・トーマス・グリーンフィールド次期米国連大使が議会証言
*************************************

 「わたしはジョージア州の孔子学院に招かれて講演したことを後悔しています」
 次期米国連大使の上院指名公聴会(1月27日)で、リンダ女史は、こう口火を切った。リンダは米国務省で35年の外交経験を積んだベテランであり、とくにオバマ政権の八年間、彼女が米国のアフリカ外交を決める部署の幹部だった。

それゆえ、2019年に孔子学院でなした講演は、上院でつるし上げを食らう絶好の材料だったが、機先を制して彼女は「大きなミステークだった」と言った。
 2019年といえば、まだ米国内の対中路線は、ちょっとだけ暖かさが残っていた。だからリンダはアフリカ諸国への中国の投資を前向きに評価し、ウィンウィンだと誉めあげていたのだ。

 公聴会で飛び出したミット・ロムニー上院議員の質問にもあるように、ジョージア州のサバンナ州立大学付属「孔子学院」で、リンダは中国とは協力的な姿勢での対応が大事であると力説していた。その後、孔子学院は閉鎖された。
  
 外交委員会につどう共和党の面々は対中強硬派が揃い、中国政策をいかに展開するのかと彼女に質問を浴びせかけた。とりわけ国連は世界外交を展開する本場であり、アメリカの国益にそぐわない発言を繰り返したリベラル女性が国連大使とは何事かという批判精神がある。

 リンダは米国と中国は徒らに対決するだけではなく、もっと実務的であればよいのであり、また米国が国連のWHOなどから脱退したのはマイナスであると発言した。

 アフリカ大陸における中国の影響力の浸透ぶりは、旧宗主国の欧州各国ばかりか、米国にとっても脅威であり、55ヶ国のアフリカ諸国のうち、54ヶ国が台湾と断交した。

また国連での決議に「まとめ買い」が容易なため、過去に中国は札束外交と多大な投資をなしてきた。
就中、中国はコンゴのレアメタル鉱区、南スーダン、アンゴラ、ナイジェリアの石油鉱区を抑える傍らで「一帯一路」と称するインフラ建設のプロジェクトを持ちかけ、あちこちに高速道路、鉄道、水力発原所、病院、工業団地、学校、大統領官邸そのほかをつくった。

 「バイデンのアフリカ戦略は対応型でアフリカ諸国の動向を見てから是々非々で対応しようとするものであり、トランプのように原則を決めてからの外交とは異なったものになるだろう」とジョージ・ワシントン大学のディビッド・シン教授は言う。
なぜなら「彼女がリベリア大使の時、中国と調和的な外交しか展開しなかった」。それゆえ上院でのタカ派的発言は「なんとしても指名を得たいが為の言い逃れだ」と手厳しい(MSNニュース、2月1日)。

     ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)東京オリンピック会開催への政府のこだわりが、さらなる日本経済の弱体化を誘引していると思います。
主催国の目的の一つはその経済効果にあります。しかし菅内閣の「是非ともやるんだ」という態度は、国民に誤ったメッセージを強力に与えていることに総理は気付いておられないようです。
 これほどコロナ禍で甚大な苦境に直面した世界は、当然これまでの環境とは大きく異なることは火を見るより明らかですあり、一刻も早く日本の経済界は業態は勿論、経済構造の変革に乗り出さねば、ますます世界の競争に負けてしまいます。
 ところが政府の「人類にこの災難に打ち勝った勇気と希望をあたえる為にオリンピックを是が非でも挙行する」と云う「高邁そうであるが幼稚な」態度は、多くの日本国民に「コロナが一段落すれば日本も世界も以前のような経済環境に戻るんだ」と誤解させる大きな原因となっているのです。
それ故、現在の業態維持や当面の苦境を支援する方法ばかりが政策として打ち出されています。
この誤ったメッセージは単に観光・飲食業者に留まらず、どうやら、世の中の変化に最も敏感でなければならない総合商社や大手企業にまで及んでいて、既存の体制を全て洗いなおさねばならぬという切迫感が抜けている状態です。
 「『日本企業の敗北が、中国当局が公言している通り次世代情報通信技術、先端デジタル制御工作機械及びロボット、航空宇宙設備、海洋建設機械、ハイテク船舶、先進軌道交通設備、省エネ、新エネルギー自動車、電力設備、農薬洋機械設備、新材料、バイオ医薬、高性能医療機械といったおよそすべての産業界で起こる』と平井氏は危険を警告する」と貴誌ご紹介の『経済安全保障リスク』(育鵬社)にはかかれているようですが、オリンピックで「消費を喚起する」などという「ありふれた」レベルを追い求めている場合ではないのです。
 菅総理にはリーダーシップがないなどの意見を散見しますし、西村コロナ?担当大臣や通産大臣たちも何をしているのでしょう。
総理は一刻も早く「世界は元には戻らない」と表明し、世界的視野からのわが国のグランドデザインを国民に打ち出さねばなりません。それが今我が国が求めているリーダーの姿なのです。  (SSA生)

  ♪
(読者の声2)大河ドラマ「麒麟が来る」。あと一回でお仕舞い。いよいよ大団円に近付きましたが、戦闘場面を全部飛ばし、地図で簡略化。迫力のないこと夥しく、しかし、信長に徹底的にいじめ抜かれる明智の場面を多用していますね。
 これじゃ通説どおりの怨念説で番組は終わるのじゃありませんか。正反対に信長の天皇に対しての不敬の数々から蹶起に及んだとする宮崎さんの分析ですが、大河ドラマの筋運びとは明確に違いがあって、俗説採用ということで幕切れになるのではと思いますが。   (TY生、茅ヶ崎)


(宮崎正弘のコメント)劇を盛り上げる活動場面が信長の光秀打擲シーンばかりでは、と嘆かれるのも無理なきかな、というシナリオです。
ただし誠仁親王を二条城にうつしたのは、おかしいと光秀と細川藤孝が疑問を呈し、諌言に赴こうとしたり、八上城の攻防戦でとうとう光秀に降伏した敵将を光秀は許したのに、信長は勝手に斬に処した。家康の信長への不信もでていました。こうした細かな所で、配慮していましたね。
武田勝頼の敗北に関しては完全にスルーでしたが。。。
次回、いよいよ本能寺、どこまで真実に迫るものを描けるか、注視する積もりです。なお誠仁親王に正親町天皇が信長死後も譲位せず、結局、信長の野望は失敗だったのです。光秀の理解者は天皇でした。
◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○

🐧

★「ロビンフッド」はアウトローの義賊(下段参照)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)2月1日(月曜日)   通巻第6786号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~アントの上場は見送られたが、こんどは新興ヴィデオアプリ「快手」に注目
   2月7日、香港で50億ドル調達へ。予約募集に世界の投資家が殺到
*************************************

 クァイショウ(快手)という新興企業が北京に誕生してから八年しか経っていない。北京海定区のベンチャーで、背後で同社を支援しているのはテンセント。業界トップのTIKTOKとは競合関係になる。創業者は元グーグルのエンジニアで、クァイショウ最大の株主は21・6%を保有するテンセントである。

 TIKTOKはインドから追い出され、米国でも投資禁止措置が取られている。「快手」もすでにインドでは排斥されているが、何の規制もない日本ではユーザーが増えている。日本ではファーウェイ(華為)、シャオメイ(小米)のスマホが廉価のため、好まれるという現実がある。

 さて「快手」は何の会社かといえば、「ヴィデオ共有モバイル・アプリ」と呼ばれる新手のショート映像を送り合うプラットフォームで、すでに会員が1億2000万人という。投資家が眼を尖らせるのも無理はないだろう。

 他愛もないことに若者達は時間とエネルギーを費やすものだが、なにしろスマホ一台で何でもやってのける時代だから、新現象の流行も、迅速、というより神速である。若者たちしか知らない商売が迅速に発展しているわけだ。

 この「快手」が2月7日に香港市場でIPO(新規株式公開)すると発表したので、背後のテンセント株価は6・4%の高騰を示した。
 上場予定は54億ドル、おそらく初値は20%ほど高くなり、61億ドルを調達するだろうと香港市場の専門筋は見ているようだ。
 すでに同社株式購入を予約したはキャピタル集団、テマサク、アブダビ投資公社など世界有数の投資集団であり、初値は暴騰に近いのではないと言われている。

ところが一方で、中国政府はアントの上場を延期させた。アリババとは対決姿勢にあり、波乱含みである。

そのうえ、中国当局は2020年度だけでも、18489のウェブサイトを閉鎖し、5451のオンラインプラットフォームに警告を発した(数字は『ザ・タイムズ・オブ・インディア』、1月31日付け)。いずれも政府に批判的な文章や画像を乗せたという理由である。

となると、クァイショウとて、反政府ビデオが大量に混入するだろうから、いずれ当局との対決は不可避的ではないのか。それとも自主規制を自動的にかけるAIシステムを開発済みなのか。
      
  ♪
樋泉克夫のコラム 
@@@@@@@@

【知道中国 2192回】               
 ──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港74)
 
       ▽
 香港での生活に慣れてくると、酒の上での「バカ話」にも事欠かなくなってくる。いや正確には枚挙に暇がない、と言うべきデス。
 ある夜、といっても時計はとうに12時を回っていた。2段ベッドの上段でウトウトしていた頃だった。ドアがギ、ギ、ギーッと鳴って千鳥足の同室のTさん。もう目が飛んでいる。その後ろからビールやら竹葉酒などを抱えた酔眼の日本人留学生が2人。そのうちの1人が、やおら窓を開け放って大声で、「お~い、ヒイズミ~、起きろ~、帰ってきたぞ~」と。

 すると隣室から「は~い」と素っ頓狂な大声が。どうやら睡眠中の大家のSさんを叩き起こしてしまったらしい。

 狭い空間に3人が車座に座り酒盛りが始まり、これに2段ベッドの上から合流する。他愛もない会話とホラ話がワイワイと始まったのだが、20分ほどすると突然ドアが荒々しく開いて、Sさんが入ってきた。
まさに闖入、いや正確には怒髪天を突く勢いである。「キミたち、親からカネをもらって留学している。勉強でしょう。酒を呑んでばかりいて、恥ずかしくないか!」。
仁王立ちのSさんが放った日本語の怒声である。

 たまたま2段ベッドの上段だから、幸運にもSさんと目を合わせることなかった。とはいえ上から見下ろしたSさんの白い肌の首筋の辺りには血管が浮き上がっていた。相当に頭に来ていたに違いない。それもそうだろう。安眠を妨害されたのだから。
 
 Sさんの有無を言わせぬ剣幕に気後れして、3人は「ハイ、ハイ、スイマセン、スイマセン」と平謝りの態。4人のやり取りを二段ベットの上から眺めていて、笑うに笑えず。連日連夜とまで頻度は多くはないが、日本人留学生の深夜の酒盛りにSさんの堪忍袋の緒が切れてしまった次第である。
当然ながら、やはり「猛省するは我にあり」だろう。とはいえ2週間ほどが過ぎ、ほとぼりの冷めるころには、再び性懲りもなく酒盛りである。

 酒は買ったものの、つまみを買う金がない。そんな時は、帰りがけに店先でカボチャやスイカの種をポケットに詰め込んだ。万屋の店主が見て見ぬふりをしてくれたのである。

 ある時、日本人留学生の1人がどこからかバリカンを手に入れてきて、「これで頭を刈れば床屋代が節約できる」と。浅知恵の極みだった。かくて5人ほどでキレイさっぱりしたところで、誰言うことなく「節約した分で飲もう」。
もちろん衆議一決。異論があろうはずもない。授業をサボって、午後2時頃からキャンパス近くの路地裏の上海料理の屋台へ。

 全員でカネを出し、先ずはビール。次いでウイスキー。床屋代を節約したのだからと、もう1本。時間は過ぎて5時半近く。その日、Tさんも日本語のアルバイトがあった。そこで2人して、おっとり刀で第一日文に。とはいえ、2人とも酔眼朦朧。なんとか教室で授業を始めたが、隣の教室の様子がおかしい。

 行って見ると、Tさんは黒板を背に教卓にうつ伏して高鼾だ。学生は異口同音に、「先生、クサイ。酒クサイよ」。授業が終わる頃、Tさんはやおら目を覚まし、「おい、呑みに行こう」。もちろん断る理由など全くナシ。

 キャンパスの近くで腰を落ち着けて飲んでしまうと、時の過ぎるのを忘れがち。気づけば夜中の12時を過ぎている。それから千鳥足で文蔚楼の下宿まで2時間ほど歩いて帰るのはシンドイ。そこでキャンパスに戻る。じつは校舎に沿った歩道の並木の1本の幹を攀じ登ると、学生寮につながる2階の廊下に降り立つことが出来た。それから学生寮にお世話になる次第。
 もちろん、手土産代わりにビールを持参するのが礼儀と言うもの。

その夜もビールを抱えて「あの立木」を目指したのだが、我が目を疑った。頼りの立木が消えていたのだ。酔いが醒めるやら、頭に来るやら、恨むやら。致し方なくビールを抱え文蔚楼の下宿にトボトボと歩いて帰るしかなかった。

 後で知ったのだが、学生寮の風紀の乱れを警戒した学生課が伐ってしまったらしい。やはり天網恢恢・・・である。
    
  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆  ☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆⌒☆     
  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   ♪
(読者の声1)資本主義自由経済制度の根幹は、「自由な情報、自由な金・物の動き」であるが、近年米国の情報・報道機関は「思想・情報・真実の統制」を公然と行う。
そして今、「個人の投資を制限」するという米国において稀有な規制が始まった。過去には株が暴落すると、一時的に「売り」を制限することはあったが、今回は「買い」を禁止する、という奇妙キテレツな規制がなされた。
 50年ほど前には、銀行・金融機関とは、水や電気を供給するような地味な儲からない制度であったが、あっという間に国を支配する巨大な団体になった。
ありとあらゆる「商品」を生み出し、客の利害などは無視し、倫理なしの運営をしているが、これに組み込まれた政府は、何もしない、あるいは規制を崩し、援助する。巨額な政治献金(賄賂)は万能である。
 かつて「違法」であった「空売り」という手段がある。弱い傷ついたと思われる会社の株を共謀して大きく「売り」、株価が下がり、倒産させてしまう。これは簡単で、短期に儲かる。餌食にされた企業は防衛の策はない。規制・監督署も無視する。
 今回は数社がハイエナの目標になり、大きく「空売り」を始めた。ところが、個人の小規模の投資家が束になって反撃に回った、つまり売りに対してそれ以上に買い支えた、のである。「巨額な空売り」に賭けているヘッジファンドにとっては想定外で、巨額の利益が大損に転じた。ウオール街において、客・国民は常に搾取の対象であって、このような「百姓一揆」的な主人に対する合法的な反乱は許されない。
 そこで、「買い」を禁止したのである。
 これは「言論統制」の金融版とも言える。政治の世界では、トランプ氏による反・体制・アメリカ第一主義であるが、今回の叛乱にも、共通点がある。ウオール街は、政治家、連邦準備制度を支配し、国益を無視し、中共の最大の後援者にもなった。
 痴呆症バイデン偽大統領にしては、電光石火の攻撃であり、就任後、僅か1週間で40程の大統領令を公布するなど、オバマ・クリントンの第3次政権の大胆な、かつての公約「米国を根本的に改革する」の速度が尋常ではない。
すべての摩擦・抵抗がゼロの状態では、早い。
(KM生)


(宮崎正弘のコメント)ウォール街が異常事態に陥っていますね。700ドル近い暴落。週明け、東京市場も、津波のように荒れるかも。
 問題はGAMESTOP株の急落から暴騰、空売りしていたファンド筋が大損し、個人投資の意見交換サイトで交わされ、ネット証券「ロビンフッド」(正式名ロビンフッドマーケット)が俄然衆目の的になるという新椿事。
メディアは「個人投資家の勝利」と言っていますが、この「ロビンフッド」の創業者はパイジュ・バートというインド系とウラジミール・テネブというロシア系の奇妙なコンビという取り合わせも不思議です。
 ふたりは2011年におきた「ウォール街を占拠せよ」の抗議行動に深い衝撃を受けてスタンフォード大学で「誰でも株式の売買を手数料無料で出来る」仕組みを考え、投資家が創業資金を調達して創業したベンチャーの典型。その後、クラウド・ファンディングで1300万ドルを集め、会員希望が忽ち50万人。新しいフィンテックに期待が集まったのでした。
ロビンフッド・マーケットという社名も良かった。なぜなら欧米における概念では、ロビンフッドとは弓の名手。森に住むアウトロー集団の首領で義賊だったからだ。まさに市場を荒らす義賊?
 同社は最近ビッドコイン取引の行い、またネット銀行を開業している。既存の銀行、証券は真っ青となる。
 日本でも個人投資が、外資系が牽引する東京市場に攻撃を仕掛ける仕組みが出来ると、つまり日本版ロビンフッドが誕生すると面白いのでは?

 ところで話題をすこし飛ばして、バイデンの報道官、つまりホワイトハウスのスポークスウーマンは「ジェン・サキ」です。
この人はジョン・ケリー選対本部、民主党広報を渡り歩き、オバマ政権で国務省の報道官、そしてバイデン・ハリス選対で活躍し、ホワイトハウスへ。つまり世界の顔になりました。政治信条は典型のリベラルですね。
 家系は移民の掛け合わせのように複雑で、アイルランド系、ギリシア系、ポーランド系が混ざっているようです。名前の「サキ」は英語ではPSAKIです。

  ♪
(読者の声2)宮崎さんが最新作の『バイデン大統領が世界を破滅させる』(徳間書店)で予想したように、バイデンは中国問題に関しては人道を前面にだしていますが、通商面では「議会承認の必要のない政策変更を大統領命令で、姑息に次々と実行するだろう」。
 まさにバイデンは就任十日間で、40本もの大統領令を乱発(トランプは同期で7本)。姑息な、議会承認を不要な抜け道で、次は何をやらかすつもりでしょう。
   (JJセブン)


(宮崎正弘のコメント)当面はコロナと環境保護、つぎに懸案のSTARTはロシアとの合意を得られたので、いよいよ今週から中国制裁の詳細討議に移ります。注視が必要です。
◎☆◎○☆○◎☆◎○◎☆◎○☆○◎☆◎○
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆宮崎正弘の新刊!  ◆宮崎正弘の新刊!  ◆宮崎正弘の新刊! 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ♪♪
・『バイデン大統領が世界を破滅させる』(徳間書店)
https://www.amazon.co.jp/dp/4198652554/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_RTfXFbGZ5RZ6F   👇


・『中国解体 2021』(徳間書店) 
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198651728/biz-journal-22/ref=nosim/   👇

・『WHAT NEXT(コロナ以後大予測)』(ハート出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4802400993/   👇

 ♪♪♪
<< 宮崎正弘の歴史評論シリーズ >>
・『こう読み直せ! 日本の歴史」(ワック)
https://amzn.to/33cPInF   👇


・『一万年の平和、日本の代償』(育鵬社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4594086195/   👇


・『神武天皇以前(縄文中期に天皇制の原型が誕生した)』(育鵬社)
https://www.amazon.co.jp/dp/459408270X/   👇


・『明智光秀 五百年の孤独』(徳間書店)
 https://www.amazon.co.jp/dp/B07PWLGXRS/   👇

・『西郷隆盛 日本人はなぜこの英雄が好きなのか』(海竜社)
https://lohaco.jp/product/L02120204/   👇


♪♪
<< 宮崎正弘の対談シリーズ >> 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮崎正弘 v 渡邊惣樹 『戦後支配の正体 1945-2020』(ビジネス社)他一冊。
宮崎正弘 v 石 平  『ならず者国家・習近平中国の自滅が始まった!』(ワック)
宮崎正弘 v 西部 邁 『アクティブ・ニヒリズムを超えて』(文藝社文庫)  
宮崎正弘 v 渡邊哲也 『コロナ大恐慌中国を世界が排除する』(ビジネス社)他三冊。
宮崎正弘 v 田村秀男 『中国発の金融恐慌に備えよ!』(徳間書店。韓国語版もあり)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ、中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 高山正之 『世界を震撼させた歴史の国 日本』(徳間書店)他一冊。 
宮崎正弘 v 河添恵子 『中国、中国人の品性』(ワック)  
宮崎正弘 v 宮脇淳子 『本当は異民族がつくった虚構国家 中国の真実』(ビジネス社) 
宮崎正弘 v 藤井厳喜 『米日露協調で、韓国消滅! 中国没落!』(海竜社)他一冊。
宮崎正弘 v 室谷克実 『米朝急転で始まる中国・韓国の悪夢』(徳間書店)他三冊。
宮崎正弘 v 福島香織 『世界の中国化をくい止めろ』(ビジネス社)他三冊。
宮崎正弘 v 馬渕睦夫 『世界戦争をしかける市場の正体』(ビジネス社)
宮崎正弘 v 小川栄太郎『保守の原点』(海竜社)
宮崎正弘 v 佐藤 優 『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆◎○☆○◎☆  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?