見出し画像

【レポ】福岡アジア美術館2023.9

約3500字、写真約60枚。大きめの記事なのでお時間ある時ご覧いただければ。


~まえふり~


この秋、初めて博多を訪れた。

九州旅行で目的地は熊本だったが、せっかくなので前乗りしちょっとだけ博多を観光することにした。

さて初めての博多だが、どこに行くか。現代美術館(正確には近現代美術館)の存在が気になっていたので、この機にそこへ。福岡アジア美術館。

場所と営業時間、この日が休館でない程度確認し、向かう。行けば、どういうところかは分かる。


この日開催していたのは、「福岡アジア美術館ベストコレクション」展。この美術館を初めて訪れる自分にとってはうってつけの内容だったと、あとになって思った。

約5,000点のコレクションから選りすぐった10名24点の作品は、いずれもアジア現代アートの高みを示しています。アジアのトップアーティストにフォーカスした本展が、みなさまに新鮮な体験と感動をお届けできることを願っております。

上記公式サイトより


会場の終盤は「アートと環境ー人新世を生きる」として別立てになっていた。メインも良かったが、こっちもグッときた!



~本編~


ここから、本編。初めて訪れた美術館なので、ミュージアムレビューと展覧会レビューのMIX。


会場入り口まで

地下鉄最寄りの中洲川端駅の改札から、美術館の入居する「博多リパレイン」まで、地下連絡通路で直行できる。雨の日とか嬉しい。

同じビルにアンパンマンこどもミュージアムが同居しているのが、気になる。
余談だが、実はアンパンマンのミュージアムは日本各地に散在していることを、今回知った。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アンパンマンミュージアム


地下B2から美術館フロア7Fまで一気に。


エレベーターを降りると、インパクトの強いビジュアルが出迎えてくれた。


福岡アジア美術館の基本理念。これでバッチリ。
なお、この美術館の略称(愛称)は「あじび」。


この日開催していた展覧会やイベント。時間の制約もあり全部は回れなかった。なお、この日滞在したのは2時間弱。


「福岡アジア美術館ベストコレクション」展へ


鑑賞開始にあたり、まず確認。展覧会愛好家の嗜み。

なるほど、投稿タグは日本語と英語両方つけるのがここの流儀か。了解。


以降紹介する作品含め、この美術館の所蔵作品のデータ・解説はHPで公開されている。
https://faam.city.fukuoka.lg.jp/collections/
なかなかいい解説(パッと見会場のキャプションテキストと大体同レベル)なので、気になる作品があればぜひ。

おすすめポイント


トップは、メインビジュアルで使われていた作品。

ファン・リジュン(方力鈞)《シリーズ 2 No.3》


李禹煥(リー・ウーファン)。いかにも。

イ・ウーファン〔リ・ウファン〕《線より》

分類的には平面作品だろうが、大きさ/距離・質感・複数アングル。それらを総合して堪能しないと、意味がない作品。


ここから、パッション溢れる赤の間へ


ザ・現代美術な空間。

上:ラシード・アライーン《ソネ・キ・チリヤ(黄金の鳥)》
下:同《ティグリス》


今回一番「飲み込まれるような力」を感じた作品。

ナリニ・マラニ《略奪された岸辺》
ヒト・カラダを描くことへ執着、暗く切実で心象的で「痛み・嘆き」への直視。
テーマ・作風(雰囲気)の近さ、同じ人身大のパネルなどの点で、
丸木位里・俊の連作『原爆の図』を想起してしまうのは、
きっと私だけではないだろう。


蔡國強。ごく最近TVのアート番組(新美の巨人2023.9.9放送)で知ったばかりの現代作家。予期せずここで作品に出会え、ラッキー。

ツァイ・グオチアン(蔡國強) 「天地悠々」プラン
Project for Extraterrestrials No. 11
左のオブジェは外見通り冷蔵庫。

これも蔡國強の別の作品。

ツァイ・グオチアン(蔡國強)
《私はE.T. 天神と会うためのプロジェクト Project for Extraterrestrials No.4》
右下にテクスト。


女性の身体性をテーマとした作品の模様。

リン・ティエンミャオ《卵 #3》


主観的な観察という点で、非常に面白かった作品がこれ。以下はキャプションを無視した好き勝手な読み取りリーディング

何か命あるものを模しているようだが素材の無機物感も強く、それゆえ観るこちらの認識は揺らぎ続け定まらない。血管のように見えるが土の中でひねくれて育ってしまったイモ類(ひげ根多め)のイメージとも重なる。ひょっとしたらこの世のどこかにこういう形が実在しているのかもしれないが、ないかもしれない。これで全体なのかもしれないし、なにかの部分なのかもしれない。完全にむらなく白で統一された色調が、観るものの想像力を喚起させる上でうまく機能している。

鑑賞ポエム
イー・ブル《さなぎ》
言われれば納得の作品タイトルだが、果たして作家は当初からそれを
イメージして創作したのだろうか。後付けだったとしてもなんら違和感はない。


不穏さ・ざわざわ感をかき立てるダークブルーゾーン


ジャン・シャオガン(張暁剛)《若い娘としての母と画家》
意外に他で見ない縁取り。
何が書かれているのか。
何が表されているのか。
何が映っているのか。
意味深


以下、駆け足で。


N.N.リムゾン《話す木》, 《大地の赤い影》ほか
N.N.リムゾン《内なる声》


ディン・Q・レ《南シナ海ピシュクン》
様々に軍事ヘリが墜落を繰り返す無限地獄的映像作品



コレクション展:アートと環境 ー人新世を生きる


ゲー・ジャワナリキコーン《茶色の空気、茶色の木、茶色の海、汚い自動車》


今回1番刺さったのはこの作品。現代アートでしか表せない、現代アートとしか言いようのないナニカ。部分的要素的考察や形容なら無尽蔵に可能だが、この総体はなんと言い表せば良いのか。

スパチャイ・サートサーラー《道程 再び》
この作品実物の生々しさ。写真でも言葉でもロスなく表象は無理。
このちょこんと添えられたブーツが、ゴッホの《古靴》みたいでもあり。
レディメイドを置いただけなのに、これがあるお陰で作品の深みが異次元に。


展示ゾーン最終室

振り返りの風景


タン・ダウ(唐大霧)《米を作る人々》


マレーシアの作家、パンクロック・スゥラップのシリーズ
《パンクロック・スゥラップ》


会場出口近辺。ワークショップ的エリア。



展示会場を出ると、付帯施設エリア

キッズスペースを完備。このあたりはMOT(東京都現代美術館)と美術館としての思想・雰囲気が似通ってる。


キッズスペースの反対側がライブラリーコーナー。

アジアの近現代美術を専門とする美術館なので、そういう本を収集・提供。もちろん自館開催展の図録も。他に、アジアの旅行ガイドなども扱っており、美術だけでなくアジア研究などでも知ってればうまく活用できそう。


カフェからショップへと続く。

アート系のチラシ・広報物が非常に充実。魅惑のチラシ・センター以下は一部だけで、もっと膨大にこれでもかというぐらい頒布されている。この辺りもMOTと似ている。


ロビー展示の巨大絵画。一眼でタイの現代アートだなと。

パンヤー・ウィチンタナサーン《魂の旅》


ここのカフェ・ショップ・キッズスペース・図書室は展示会場の外なので無料でそこだけの利用も可。これらサービスの詳細はミュージアムHPでご確認いただければ。



~おまけ~

観覧料は200円。安い!
すべて自館コレクションで構成しているからか。
それにしても安い。


出展作品リストについて。「福岡アジア美術館ベストコレクション」展の方は、会場に見当たらなかった。HPにも掲載なし。スタッフに確認まではしていないが、たぶん元々配ってないのだろう。コレクション展の方は紙のリストあり。ただしHPへの掲載はなし。


ちょっと失敗したこと。今回一秒でも鑑賞時間を稼ぐため、地下鉄改札から美術館7Fへ最短ルートで直行した。ところがこの美術館のエントランスは1Fで、そこにあるこの美術館の「看板作品」を見逃した。同じように初めて訪れる人はご注意を。

1階のエレベーター前には、中国のアーティスト、ブ―・ホァ(卜樺)《最良のものはすでにある》という壁画作品があります。縦4メートル、横11メートルの巨大壁画の中には福岡ならではのモチーフが隠されているのですが、いくつ見つけられますか?

https://faam.city.fukuoka.lg.jp/about/ajibifun/first/ より



* * *
最後までお読みいただきありがとうございます。
興味持たれたら、美術館へぜひ。


以 上

誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。