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夏の文庫フェア2023 3社PR小冊子読み比べ ★今年は猫分析も★

今年もやってきた、夏の文庫フェア。


1年前に同じテーマのnoteを書いた。


昨年はほぼスタートと同時にキャッチしたが、今年は気づいたのが遅かった。なので実のところ、「いつの間にか始まってた」という感覚。昨年の今頃と比べ本屋に足を運ぶのが減っているからだろう。多分。それはさておき、昨年と同じく3社のPR小冊子を集め、読んでみた。


読んでみると、昨年は気づかなかったことや、昨年との比較で気になったことなどが思い浮かび、これはこれで、今年も「楽しく発見もある読書」になった。


ということで、今年も徒然なるままに、このテーマを書き記すこととした。折角なので、昨年のレビューで書いてないようなことを書こうと思う。

この手のトピックは、ウカウカしてると、元ネタが終了してしまう。このあたり、展覧会レビューと似ている。

モノローグ

ネット上にも各出版社による同名のキャンペーンサイトがあると思うが、そちらまでは目を通してない。紙の方だけで手一杯&満足してしまった。


たまたま、ここ最近、朝倉彫塑館を観覧したりそのnote記事を書いたりしたため、今一時的に猫に対して過敏な状態にあるセンシティブこのPR冊子を読んでても「猫」という言葉や猫のイラストに出くわすと、自然と目が止まる。ということで、今回はそのあたりも分析考察してみた。名付けて「猫成分分析」



1.新潮文庫:新潮文庫の100冊

紹介する本は5つに分類/セクション分けされている。<恋する本>、<シビレル本>、<考える本>、<ヤバイ本>、<泣ける本>。


一番手は新刊。加藤シゲアキ『オルタネート』。なお、加藤シゲアキは他にも2冊紹介。今新潮社大PUSHの作家か。


レイチェル・カーソンは、昨年と同じく、『沈黙の春』ではなく近刊である『センス・オフ・ワンダー』の方。この本て、『沈黙の春』を読んで次に読むのが良い次に勧める本なのでは?何を言いたいかというと、やはり、『沈黙の春』の方を紹介&なるべく本屋に置いて欲しい、ということ。


朝井リョウ『何者』に付けられた惹句、「想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める」。この言葉、鋭い。鋭過ぎて、この言葉だけで満腹。あたかも『何者』を読んだかのように錯覚し、都合よくそのままにしておく。


★猫成分分析★

サラッと確認しただけなので、見落とし等はあると思われる。
以降も同じ。ご寛容に願いたい。

自分的に「猫作家」に分類してる作家が2名。他にも該当するのかもしれないが、私の知ってる範囲ではこれだけ。夏目漱石と赤川次郎。ただし、夏目漱石で紹介されている本は『こころ』。そして赤川次郎の方は、アンソロジー『吾輩も猫である』の著者の一人として登場。

猫が表紙の本。西加奈子『白いしるし』。もう少しあるかと思ったが。

宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』。昔作られたこのアニメ映画が、キャラが猫になっておりそのインパクトが強く、今でもはっきり記憶に残ってる。



2.集英社文庫:ナツイチ

今回は「分冊」という趣向なのだろうか、俳優が表紙の薄いのと、イメージキャラクターが表紙の昨年と同じような内容のもの、2つ置いてあった。便宜上後者を「本体」と呼ぶこととする。


薄い方

俳優5名。全員男性。そういうもの?
 榎木淳弥、神谷浩史、梶裕貴、島﨑信長、中村宗悟
→どうやらこの5名が朗読したオーディオブックを集英社が出している、ので推している、ということみたい。成る程。全員声優か。


本体

紹介作品2冊目が、ビートたけし『アナログ』。10/6に映画公開とのこと。
3冊目:新庄耕『地面師たち』 4冊目:伊坂幸太郎『週末のフール』、ともにNETFLIXで実写ドラマ化とのこと。そういう時代か。

アンソロジー『北のおくりもの —北海道アンソロジー』。このノリで四十七都道府県全て刊行されるか。期待してる。頑張れ集英社。


薄い方と本体両方共通

どっちの冊子にも、巻末最後に見開きで
 「第42回全国高校生読書体験記コンクール結果発表」(表彰式集合写真)
 「第43回全国高校生読書体験記コンクール募集のお知らせ」
を掲載。これ、昨年の冊子にもあったっけ?
→あった。昨年の掲載写真は受賞者の写ってる表彰式ではなく、選考委員の現場らしきシーン。


★猫成分分析★

まず何より、イメージキャラクターが、猫。「よまにゃ」。Noritakeイラスト。

タイトルと表紙両方に猫の本、2冊。畠中恵『猫君』。唯川恵『みちづれの猫』。

表紙に猫がいる本、5冊。うち4冊が、このフェアに合わせた特装カバー。これもNoritakeイラスト。宮部みゆき『R.P.G.』。窪美澄『やめるときも、すこやかなるときも』。川上健一『翼はいつまでも』。森鴎外『舞姫』。群ようこ『いかがなものか』は、元から猫のイラストの表紙。

「ナツイチ」キャンペーン販促品も、イメージキャラ=猫のイラスト。「よまにゃ画面クリーナー」。

・・・集英社文庫はかなり猫にあやかっている様子。



3.角川文庫:カドブン夏推し

冊子表紙。去年は映画のキービジュ/『すずめの戸締まり』で目を惹かれたが、今年は比較的ありふれたキッズ?な感じのデザインのイメージキャラ。「カドイカ」というらしい。新キャラか?それとももっと前から存在したのか??なお、今回、小説版『すずめの戸締まり』が紹介されている。


こちらも新潮と同様、紹介する本が5つに分類/セクション分けされている。<しらない世界とつながる!>、<驚きの謎とつながる!>、<語りつがれる想いとつながる!>、<心揺さぶるラストへつながる!>、<大人も子どももみんながつながる!>。関連して、冊子冒頭の見開きに、マインドマップみたいなものが掲載されている。


先頭バッターは、深緑野分『この本を盗む者は』。見開きで紹介。「話題の新刊」が先頭。


1人の作家で2冊以上遠慮なく掲載。これも推しゆえか。なるほど。


トリは坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話 [文庫特別版]』。この表紙の写真のモデルはどなたなのだろうか。あと、何がどう特別版なのだろうか。そのあたり、書かれてない。ひょっとしてこれは、「ネット検索」に引きずり込むための施策ワナか?


★猫成分分析★

小説版『すずめの戸締まり』。メインキャラの一つが白猫の「ダイジン」で、この本の表紙にも(冊子で見ると非常に小さいが)その後ろ姿が載ってる。

新装版『魔女の宅急便』。これも、メインキャラで主人公の相棒として黒猫の「ジジ」。やはりこの冊子で見ると非常に小さいが、本の表紙に描かれてる。

夏目漱石『吾輩は猫である』。説明は不要かと。

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』。「新潮文庫の100冊」の方で述べた通り。

恩田陸『ドミノ in 上海』。表紙イラスト中に、猫らしきオブジェが。

柳田理科雄『空想科学読本 「高い高い」で宇宙まで!』。表紙に猫入り。

角川文庫POPコンクール。掲載されている昨年度の優勝賞受賞作品の一つに、枠ぶちが猫のものがある。



4.全体・まとめなど

どの冊子も文庫本の表紙画像(書影)が並んで掲載されているので、まるでいつも賑やかでカラフルな本屋の文庫コーナーの平台を眺めているよう。楽しい。私がこのPR小冊子を好きな理由、これを眺めてて飽きない理由の一番は、そこにある気がする。今回の記事を書いていて、思い至った。


★猫成分分析(総括)★

新潮文庫の100冊は、猫はひかえめだった。

集英社文庫ナツイチは、猫を積極的に水増ししていた。

角川文庫カドブン夏推しは、予め知らないと、あるいはかなり注意して見ないと、見逃してしまいそうな猫が多かった。



* * *

実は今年の夏の文庫フェアに気づいたのは、「本の雑誌」最新号(2023年8月号)の記事「ホリイのゆるーく調査/夏100フェアの作家生存率を数える! 堀井憲一郎」を読んだのがキッカケ。自分と同じようなことしてる人他にもいるんだな、と思った。



以上お読みいただき、ありがとうございました。


誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。