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~開けば、知らないミュージアム2~ 【書評】せとうち美術館ネットワークパスポート&アート通信

ライフワークで書いているに過ぎないのだが、シリーズ第2段。意外な、あるいは使い方によっては、知らないミュージアムを探すのに役立つ面白いツールの存在に気づくことは、ままある。このシリーズ、意外に伸びるかも。

良いツール、面白いコンテンツも、知らなければ存在しないも同然である。
museumもエフェメラも。

シリーズコンセプト。前回投稿より一部変えて再掲。



今回紹介するのは、つい先日とある美術館に行ったとき、配布されていたもの。配布と書けば何やら格好いいが、要はテイクフリー/「ご自由にどうぞ」。


発行日:2023.4(※「パスポート」の方)とあるので、まだ「新刊」と言って差し支えない。なので、本記事はある種新刊レビュー。


発行は本州四国連絡高速道路(株)内に設置されたせとうち美術館ネットワーク事務局。正確かわからないが、いわゆる道路公団(一昔前の言い方)による地域振興事業のアウトプットの一つと理解している。

「せとうち美術館ネットワーク」は瀬戸内企業である当社のメセナ活動の一環として美術館や博物館など、文化芸術施設をネットワーク化し、瀬戸内地域の交流促進と活性化、こどもの美術鑑賞教育の普及を図ること等を目的に平成20年10月に6施設より発足し、現在では81施設で構成されています。

上記HPより


パッと見たところ、冊子で書いてある内容はほぼHPにも載っているようである。この記事では冊子の方のみレビューする。HPの方はチラッとしか目を通していないので、そのあたりはご了承いただきたい。

印刷物と違いHPはコンテンツ量が見積もれず、レビューが書きにくい。

#モノローグ


紹介する資料は2点、いずれも見出し画像に写しているもの。「パスポート」は、主として参加ミュージアムの名簿/名鑑/便覧。「アート通信」は、主として刊行時(最新)の展覧会情報を伝えるもの。メディアとして、綺麗に使い分けて情報発信されている。以下、もう少し詳しく。

パスポートは、訪問記念スタンプ帳(最近の言い方だと「御朱印帳」)と参加美術館の名鑑と、共通割引き券が合わさったモノ。よく旅行やフェスに行かれる方には、珍しくない代物なのかも。私的には結構目新しい。

アート通信は、概ね参加館の展覧会ポスターを大集合させたようなもの。よく展覧会の出口に次回予告&近隣の展覧会のポスターが所狭しと貼ってあることが多いが、それをもっと沢山集め、タブロイド印刷し、ちょっと耳寄り情報を書き加え、綴じた感じ。ビジュアル・インデックスとして便利なことこの上ない。



パスポートの方について、読んでみて面白かったことを幾つか。

p.6-7 MAP
・せとうち美術館ネットワーク参加全館の所在が、地図形式で一望。Google Mapで自分で同じようなことをするより、遥かに生産性/視認性が高い。範囲は兵庫・岡山・広島・山口・大分・徳島・香川・愛媛・高知なので、「瀬戸内」の言葉のイメージよりも、広い。

p.19 no.08 香雪美術館
発行時点長期休館中のミュージアムであっても名簿として載っているのは、データブックとしてありがたい。なお、中之島香雪美術館は知っていたが、この神戸の方は、知らなかった。もともとこっちが本家なのかな?

p.49 no.38 広島市現代美術館
そういえば、ここはついこの前、3月18日にリニューアルオープン。最初の展覧会は特に気合が入っているだろうし、注目。6月18日まで。

p.64 no.53 大塚国際美術館
みんな大好き大塚国際美術館。

p.76-78 no.65 地中美術館 / 66 ベネッセハウス ミュージアム / 67 豊島美術館
直島 / 豊島 / ベネッセアートサイトからは3つ掲載。行ったことは無い。いつになったら、行けるだろうか。

‥‥‥こんな感じで楽しめる。



その他考察。

これだけ良い資料なので、発行部数や配布場所が気になる。どのくらい、どのような場所で配られているか。いらぬお世話かもしれないが。個人的にこの手のモノは、全国の公共的情報拠点(図書館、ミュージアム、役所、観光案内所、学校など)に広く展開されるとよいのになと、常々思う。なんとか機関互いの刊行物交換流通網に載せて。

”せとうち美術館ネットワークリーフレットは本四高速道路のサービスエリア、有人パーキングエリアや、下記のせとうち美術館ネットワーク参加施設で配布しています。”

HPより引用
もしかしたら、関東でこの冊子を入手できたのはかなりラッキーだったのかも


図書館のことを書いたので、もう一丁。こういう資料は、ただの使い捨てではなく優れた情報資源ととらえ、図書館も積極的かつ継続的に収集・保存・OPAC登録・閲覧に供すべきだろう。一般紙や雑誌をそうしているように。とくに、紙の本・雑誌が質・量とも明らかにやせ細ってきた昨今は。このケースでは「同じ内容がネットにも上がってるでしょ」と反論を受けるかも知れないが、印刷物は印刷物ならではの利便性や優位性があることは、言うまでもない。そもそも、物理的な印刷物として視界に入ったからこそ、こうして存在に気づけたのである。(こういう気の利いた印刷物が好きなので、鼻息が荒くなりました。失礼いたしました。)



ミュージアムや展覧会好きの方には、運良くこれを見かけたら有り難く頂戴し(乱獲禁止、節度遵守。ミュージアムや展覧会の愛好家にはそんな酷い人はほとんどいない、そう信じたい)、目を通した後も保管し、長期旅行時の計画などに活用されることをお勧めする。


なお、ぐるっとパス(東京・ミュージアムぐるっとパスミュージアムぐるっとパス・関西のガイドブック/チケットブックなども、同じような用途に適している。なので、捨てられない(^_^;)。できれば、ぐるっとパスも、チケットブックだけでなく同様の「アート通信」をつくり、無料印刷物として広く配布してもらいたい。
確認したところ、東京・ミュージアムぐるっとパスではHPに展覧会リストがPDFで掲載されているが、残念ながら全くビジュアルではなく、これでは惹き付けられない、生産性が低い。
ミュージアムぐるっとパス・関西の方は、下記のようにガイド・ブック内に頑張って展覧会一覧まで掲載し、それが売りにもなっている模様。手元にないので、これ以上はどんなものか分からない。。

https://museum-grupass-kansai.com/gruttokansai_benefits/index.html より



以 上


誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。