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世田谷・アートワールド・アラカルト:沿線の物語展 完結編@世田谷美術館

会期4月7日まで。基本撮影NGのため、写真は数枚だけです。

#notice

カタログあるいは名鑑的な展覧会が、好きである。
教養第一主義と揶揄されるかもしれないが。


雑多な展覧会も、好きである。
ビシッと全体を通してコンセプトとストーリーが
貫かれているような展覧会もいいが。


もうあと数日で終わってしまうが、
ここ数年世田谷美術館がシリーズで手掛けてきた展覧会
「美術家たちの沿線物語」。
その最終部(チラシいわく完結編)

を見てきた。



美術家たちの沿線物語 京王線・井の頭線篇 | 世田谷美術館 SETAGAYA ART MUSEUM

美術家たちの沿線物語 小田急線篇 | 世田谷美術館 SETAGAYA ART MUSEUM


この展覧会、まず各種広報物(チラシ、HP、看板など)を見た段階でおやっと思う。企画展が「小田急線篇」、コレクション展が「京王線・井の頭線篇」。どういうことだろう。しかし実際鑑賞する立場からは、この「企画展」「コレクション展」の別に特段の意味はなかった。どちらも美術館自館所蔵以外に、同じ区内の郷土資料館・文学館・団体・作者・個人などから作品を集め展示していた。結局は両者併せて一つの「世田谷区(民)のコレクション」展とみなしてしまえば良い。そして展示ルートからも、この展覧会で企画展の方だけを見てコレクション展を見ずに帰るのは、かなりの例外だろう(ただし会期はズレているので、先行したコレクション展の方はすでに別件「倉俣史朗のデザイン」展のとき一緒に回ったよ、という人はいるだろう)。


脱線するが、noteを軽く眺めた限り、コレクション展/「京王線・井の頭線篇」と同時開催だった「倉俣史朗のデザイン」展は、かなり人気を博したようである。ということは、そこからかなりの人が「京王線・井の頭線篇」にも雪崩込んだものと思われる。でも悲しいかな、コレクション展に触れたレビューnoteはほとんどない(ゼロではないが)。このあたり、日本の常設展/コレクション展界隈の寂しいところ。リアル

ここで開催された「倉俣史朗のデザイン」展の、
次とさらに次の巡回先のポスターが並んでる。
かなりお茶目に感じた。

私は「倉俣史朗のデザイン」展は観てないので推測でしかないが、「企画展」と「コレクション展」の同時鑑賞が前提なら、今回の方が相乗効果が高い(合わせ技1本で満足度が高まる感じ)のではあるまいか。細かい補足をすると、「倉俣史朗のデザイン」展は1200円、今回の「小田急線篇」展は500円。今回の方がお値打ちだったりもする(大人一般料金)。

なお、例によってコレクション展は企画展(あるいは特別展)の「おまけ」で見れる。本来決しておまけではないと思うのだが、チケットシステム上はおまけとしか言いようがない。。。たまにはこの上下関係逆転しないものかなと思う。

戯言




さて、肝心の展覧会の中身と感想。


結論は、大満足。


物に釣られて………と批判されるかもしれないが、それでもまず触れたいのは、今回は来場特典で今までのシリーズ展全4部で作成された解説小冊子がセットでもらえること。

集合写真。熊手みたいになってしまったが。。

今回のような内容の資料性が高い展覧会では、これが非常に有り難い。(この展覧会というより多分にこの美術館の基本方針かなと思うが)展示室内および作品の撮影はNGでも、前もってこのような小冊子が貰えることが判っているので、会場では肝心の作品鑑賞に集中専念できる。会場内の「読み物」(セクションテキスト等)の方には、大雑把あるいは初めから関心が高い箇所に目を通すだけで済む。気になった作品あるいは気になった解説については、後で家でじっくり確認相手できる。

また、今までのシリーズ展全ての小冊子を揃って貰えるので、見逃した回の内容についても知識面では相当フォローできる。おそらく、このシリーズ展全てを見た律儀な人はきっと多くはないだろう。私など、そもそもこのシリーズ展のことを知ったのが、最終会(最終展?)ラスト1週間を切った時点だったりする。

ほかにもこの来場特典の取組のメリットについて考察は尽きないのだが、これぐらいにし話を次へ進める。




ここから、鑑賞した中から私が良かったと感じた/気に入った作品をいくつか紹介する。写真はNGなので、タイトルと素人コメント。

そういえば、この展覧会HPに展示リストは見当たらず、紙のみ。閉会後でいいので、リスト、HPにPDF掲載していただけませんかね。。。

#リクエスト


【小田急線篇(企画展)】

no.32,33 平塚らいてう 『元始、女性は太陽であった』(上・下)
文学館より出展。実物こういう本だったんだなと。

no.37 伊原宇三郎《トーキー撮影風景》
演劇の美術(舞台背景)と見紛うような大きなキャンパスがドーンで(ちょっと大袈裟だが)、まず惹きつけられる(展示レイアウトとして上手いと思う)。おそらくどこか細部が格別芸術的に凄いわけではないのだろうが、描いている当時にすれば何気ない光景を描いたものが後代からすると歴史が刻まれた感じとなり、そのイメージが見る者の脳裏に焼き付く。

no.43,44,45 黒澤明 映画『七人の侍』の登場人物スケッチ
スケッチだからこそ、黒澤監督がもっていたイメージが分かりやすく伺えるような。

no.136 仁村美津夫『おどり明暗帖』
装丁画だが、黒と線のかすれ具合やボカシ具合、ただただ「見事」。装画なら、前田青邨。筐画なら橋本明治。↓ お誂え向けにAmazonに書影があったので、リンクを貼っておく。

no.182,183 浅井慎平 《タモリ》, 《渥美清》。圧倒的有名人肖像写真モノクロデカ焼きパワー。作者蔵。


【京王線・井の頭線篇(コレクション展)】

no.22,23 富永一朗 《花咲自像》《忍法雨蜘蛛》
出会ってしばし数秒。そして「トミナガイチロウか!」「トミナガイチロウの肉筆画か!」。

no.72 川俣正 《”ピープルズ・ガーデン”のためのプラン No.8》
ちょっと大雑把に書くが、デュシャンとか大竹伸朗的な作品。これは本当に個人的なツボ。これ、というか、この手の作品は、なぜか心が躍る。

no.92,93 福田繁雄 《Look 1(3)》,《Hiroshima Appeals》
no.94 福田美蘭 《FINE VIEWS》

私はにわかなので、福田美蘭を知ったのはここ数年のこと。その父福田繁雄と福田美蘭の作品を並んで鑑賞でき、眼福。個々の作品も無論イカしてる。

no.109 石山修武 《世田谷村[1/30模型]》
全体が面白いが、サイズなりの適度な造形で落ち着いてる動物は特に。畑の上を駆け回る鶏など。

no.130~138 山村浩二 アニメーション『頭山』と、その原画等
実質一番最後の展示。まさかそれが、自分が落語の中で1,2を争うほど好きな『頭山』を翻案したアニメーションとは。生まれてはじめて、展覧会の映像展示を、頭から始まるのを待ち終わりまで見届けた。そして10分間徹頭徹尾飽きなかった。



ここから、この展覧会そのものについて気づいたり思ったりしたことを書く。結構いろいろなことに気づいたり考えさせられ、この観点でも興味は尽きなかった。

気づいたこと①。展示の高さが低め
以前別記事にも書いたが、私の身長は決して高くはない。しかしそれでも「低いな」と。おそらくこの美術館の方針として子供の鑑賞を重視しているためと推測。

気づいたこと②。キャプションにナンバリングなし
なので、会場配布される作品リストと照合するとき、同定するのがちょっとめんどくさい。「あのXX番の作品ね」みたいな覚え方・会話がしにくい。

思ったこと。キャプションのレイアウトは作品に向かって左側で、鑑賞時進行方向的に、作品より先に目にしてしまいがち。しかしこの展覧会の場合、作品が先に視界に入るようキャプションは右側にした方が、まず先入観等一切なしに作品を眺められ、いいのではないかな
と思った。
 「これは……(作品観る)……XXのYYだったか(キャプションで知る/答え合わせ)。」
という感じにしたい(して欲しい)ため。



~おまけ~

この記事を書くためにググったら、こんなのが上位でヒットした。

どんな曲だろう。YouTubeで聴けるようである。しかし興味はあるものの、キリがないので、ここまでにする。ありがたく貰って帰った解説小冊子を、これから読まなくてはならないので。



* * *
最後までお読み頂き、ありがとうございました。



以 上


誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。