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ディープウェブからの呪われたゲーム「Sad Satan」の真相
何でもそうだが、黎明期のものは明確なルールやモラルが存在しないためカオティックで乱雑でアイデアに溢れ非常に面白い。そういえば普及したばかりのインターネットもカオスなものや怪しげな情報で溢れ返っていた。
この奇怪なゲーム「Sad Satan」もWebがさらに匿名化したDeep Web(ディープウェブ)と言われるものから出現したという触れ込みだ。
この呪われている「らしき」ゲームは2015年6月25日にYoutubeチャンネル「Obscure Horror Corner(OHC)」の「Sad Satan-Deep Web Horror Game-Part1」にてそのプレイ動画が初めて報告された。
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このゲームはDeep Web上で発見されたらしく、ホラー系のゲームのプレイ動画を投稿しているOHCによりpart4までのプレイ動画が投稿されている。
このゲームは異世界のような真っ暗で不気味なダンジョンを歩くだけのプレイ動画で、所々に悪趣味に見える不可解な音声や音楽、サブリミナルじみた画像が挿入されている。このプレイ内容に関する実況などは投稿者からは一切なく、終始無言のプレイである。
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Part1では同じような通路を延々と歩くところから始まる。
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ほぼ真っ暗なダンジョン内を足音を鳴らしながら進む。時折ゲーム画面がスローになったりする。不意に鹿の角が並べられた階段に男が立つ画像が挿入される。このゲームにおける挿入画像はほぼ全てが判明しており、角の並べられた写真はフランツ・ヨーゼフの写真と言われている。
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フランツ・ヨーゼフ(Franz Joseph)
この写真は、Walter Sandersが撮影したものである。Walter Sandersは1940〜1950年代の写真家だ。被写体の男性はバイエルン王国のThurn und Taxis王子家の第9王子であるフランツ・ヨーゼフの写真である。「Prince Franz Joseph」で検索すれば「鹿の角のコレクション」の名がついた全く同じ画像がヒットする。
その後、NSPCC(全英児童虐待防止協会)の画像が挿入され、何かの音声を逆再生した音が流れpart1が終わる。
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NSPCC(National Society for the Prevention of Cruelty to Children)
1883年に設立された英国の児童保護慈善団体。児童福祉に関する問題について政府に働きかけを行ったり、啓蒙活動を行っている。
Part2ではゲーム内容がやや進化したのか、青空が見える通路から始まる。
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操作方法のような文字が映った画像が写されたる。その後廃墟のような部屋で頭のない子供が写された画像が挿入される。この不思議な子供の画像もロジャー・バレンという芸術家の作品であることがわかっている。
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ロジャー・バレン(Roger Ballen)
この不気味な画像はアメリカ生まれ、南アフリカのヨハネスブルグを拠点に活動する芸術家、Roger Ballenの作品である。検索すると雰囲気のそっくりなモノクロの写真が大量にヒットする。
その後、ジョン・F・ケネディのパレードの画像が挿入される。
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その後少しだけダンジョンの通路に変化が生まれ、不思議な壁紙の広場のような所が追加されている。更にバフォメットの画像が挿入される。
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バフォメット(Baphomet)
1306年にその記録が残るテンプル騎士団により崇拝されていた神。この山羊の頭を持つ格好は1856年に思想家エリファス・レヴィの描いた「メンデスのバフォメット」から固定したイメージで、本来は神であった。現在では悪魔やサバトの象徴として扱われることが多い。
その後NPC(ノンプレイヤーキャラクター)のような奇妙な顔の少年に出会うと大きな悲鳴が入り、プレイヤーは逃げるように広場に戻る。
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すると、少年らしきNPCが6体に増え、取り囲まれているところでpart2は終わる。
Part3では真っ暗なダンジョン内を歩いていると急に暗号のような文字の画像が写される。
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その後、演説(チャールズ・マンソンらしい)のような音声が再生される。
チャールズ・マンソン(Charles Milles Manson)
1960〜1970年代にかけてカリフォルニア州で「マンソン・ファミリー」というコミュニティを率いてヒッピー文化全盛期に集団生活をしていた。ヒトラーを崇拝し、SF小説やヒンドゥー教、ビートルズなどをごちゃ混ぜにした独自の終末思想を展開し、支持者を率いて9件の殺人を犯したカルトのパイオニア的存在。
その後、ダンジョンの壁紙は進化し赤い葉と蝶の装飾がつく。
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その後、暗号文のようなものが3度表示される。
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何らかの逆再生の音楽が流れpart3は終わる。
Part4では開始直後に口と目を赤で塗りつぶされた宮﨑勤の画像が映し出される。
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宮﨑 勤(みやざき つとむ)
1988〜1989年に東京都および埼玉県で4人の女児を誘拐、殺害した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人。殺害女児の骨とともに女性を偽り家族に手紙を送ったり、殺害した女児の遺体を家に持ち帰り身体をビデオで撮ったり、裁判では自身の犯行を「ネズミ人間」の指示で行ったと嘯くチャイルドモレスターの巨匠にして極悪変態。2008年に死刑が執行された。
その後ダンジョンが開始する。雨が降っているようなエフェクトが終始かかっているように見える。
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そして天秤を持つ彫刻の画像が挿入される。この画像は天使ミカエルだと思われる。
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ミカエル
「神に似たるものは誰か」と直訳される旧約聖書に登場する天使。熾天使とも呼ばれる。甲冑を纏い右手に剣、左手には魂の公正さを測る天秤を携えた姿で描かれることが多い。
通路のドアが開けれる仕様に変化している。通路を進むと何らかの逆再生の音声が再生され、袋小路で人らしきものに出会う。
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またもや先ほどと同じNSPCCの画像が流れ、塗りつぶしのない宮﨑勤の画像が挿入され、サンタのような格好をした男性と子供の画像が挿入される。この画像はおそらくロルフ・ハリスと思われる。
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ロルフ・ハリス(Rolf Harris)
オーストラリア出身のイギリスの俳優、音楽家、タレント。ビートルズのトリビュート・ソングがヒットし有名になった。1960〜1980年代に当時8歳から19歳の女性4人に対する12件の強制わいせつ罪で有罪判決を受けた。
そして、Part2で見た広場に行き、呻き声のようなものが再生され実況は終了する。以後、Part5はアップされていない。
これら4つのプレイ動画は基本的には同じような通路を行ったり来たりしているだけで、仕掛けを解いたり、敵を倒すようなシーンは一切ない。
OHCで投稿されたオリジナル版とされるバージョンは、チャールズ・マンソンなどの殺人犯のインタビュー音声やスウェーデン狂詩曲などの様々な音声サンプルをディストーションをかけ逆再生され流されている。
スウェーデン狂詩曲(乱数放送)
ポーランドの公共安全省(後の対外情報庁)が1950年代後半から1998年まで運用していた周波数5.733〜11.525のAM放送を使用した乱数放送で、西欧圏の諜報員に暗号メッセージを送るのに使われていた。この通称は放送内でスウェーデンの作曲家ヒューゴ・アルヴェーンの管弦楽曲「スウェーデン狂詩曲第1番」が流れたことに由来する。
他にも、プレイヤーが操作している最中に、ジミー・サヴィルやロルフ・ハリスなどユーツリー作戦で起訴された者の画像や、サッチャー元首相、テレビドラマ「ハンニバル」の画像が挿入されているバージョンも存在するとネットでは言われている。しかしOHCの実況ではそれを見ることはできない。
ユーツリー作戦
2012年からロンドン警視庁が着手した有名な司会者ジミー・サヴィルに端を発したショービジネス界におけるロルフ・ハリスやゲイリー・グリッターなどによる未成年者性的虐待事件の大規模捜査作戦のこと。
このゲームはYoutubeの公開後、その謎な展開と演出、不安感を煽る内容から4chan(日本での2ch)やredditだけでなく国際的に注目を浴びることになった。
Terror Engineで制作されたらしきこのゲームは、Tor(通信匿名化のソフトウェア)のDeep Web上からゲームをダウンロードしたという曰くであった。そしてゲームのリンクを投稿したのはDeep web上の匿名ユーザー「ZK」とされた。
その後、この「ZK」は4chに新バージョンのsad satanのリンクをアップロードした。4chanコミュニティのメンバーは実際にダウンロードしプレイしたが、一部のユーザーはコンピュータの動作が遅くなったり、ゲームの起動を試みている間にコンピュータが完全に応答しなくなったなどの不具合が起こったり、プレイするごとに謎のテキストがデスクトップに生成される現象も確認されたそうだ。この不具合の多いバージョンはその後「クローン・バージョン」と呼ばれる。
その後有志により不具合を起こす原因を除去された「クリーン・バージョン」もアップロードされた。そのため、sad satanには大きく3つのバージョンが存在する。
・動画によるオリジナルバージョン「OHCバージョン」
・4chanで掲載された「クローン(ウィルス入り)バージョン」
・ウィルスを取り除き攻撃的な画像を排除した「クリーンバージョン」
が存在する。
なお、現在でもOHCバージョンは動画投稿者以外に所持者が存在していない。クローン・バージョンはOHCバージョンにはない画像も入っていると言われているが定かではない。また、クリーンバージョンにもいくつかの種類があるとも言われている。プレイした者たちの報告する実際のゲームの展開としては、ダンジョン内を徘徊した後に遭遇する微動だにせず一つの場所に立ちつづける子供のようなNPCに出会うと、プレイヤーの後を追い始めプレイヤーにダメージを与え始める。プレイヤーは自己防衛の手段やダメージを回復する能力がないため、死亡することが不可避となっており、これは要するにただのクソゲーであることは言うまでもない。
「Sad Satan」は奇怪なネットの海から生まれた呪いのゲームとして誕生はしたように見えるが、おそらくそれらはヤラセだろう。
まず、このゲームはObscure Horror Cornerが取り上げた最後のゲームであり、Part4以降以降YouTubeチャンネルの更新は止まっている。そして、オリジナルのOHCバージョンがどこにも存在しない。さらに、「sad satan」の騒動が大きくなった後、part5は公開されず、完成版のリンクが「ZK」からアップされたことからもおそらく、「ZK」と「Obscure Horror Corner」は同一人物もしくは共犯者であると推測できる。Deep webからの奇怪なゲームとして「sad satan」を紹介し、チャンネルの再生数を伸ばそうとしたのだろうか、ただの愉快犯にも見えるが。
何だかよくわからないものを提示し、好きに想像させるとそれを受けたものは各々に想像力を膨らませるし、なんなら制作者の想像を越えて遥かに面白いコンテンツを誰かが作り出してくれる。これらは、出どころをボカし本物らしく見せるフェイクドキュメンタリーやモニュメンタリーと呼ばれた映画「スナッフ」や「ブレアウィッチプロジェクト」「フォースカインド」や「アントラム」などと同じ手法だ。Sad Satanも様々なフェイクやフィクションを加え、人を通過するごとにアレンジが加えられ「呪いらしきもの」は増幅しさらに誰かのもとへ徘徊する。「呪い」よりも、「呪いについて」を好き勝手に想像し、まことしやかな何かを付与する人間の方が遥かに面白い。
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