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「堺市営住宅首吊り事件」の真相

 「堺市営住宅首吊り事件」これはよくネットで見ることのできる、不思議で都市伝説じみた内容で語られることの多い事件だ。

 2013年6月、大阪府堺市営団地のとある棟の10階の部屋に住む21歳の男性Aの元に「関東弁の男」から「あなたの部屋で人が死んでいる」という奇妙な電話がかかってくる。Aはそのことを母親に相談しようと電話すると、姉の内縁の夫が電話に出たため、そのことを説明した。
 それを聞いた姉の夫は会社の同僚を伴い、Aの部屋に赴いた。
 6月26日夜11時ごろ、姉の夫とその同僚が部屋のチャイムを鳴らすと、見知らぬ40代ぐらいの男が出た。電話の件を話すと、「確かにこの部屋に死体がある」と男は姉の夫と同僚を部屋に招き入れた。
 室内を確認すると、カーテンレールに電気コードを引っ掛け、首を吊った状態で上半身裸の男B(46歳)が死んでいた。慌てて姉の夫は警察に通報したのだが、その間に部屋にいた男は姿を消してしまっていた。
 Bは母親の友人でAの部屋に引っ越しのため前日から泊まりこんでいたらしい。
 テレビの取材に対して家主のAとは現在連絡が取れない状態で、「向こうから電話はかかってくるが、こちらからの電話には出ない」と話している。

 この事件の不可思議な点は3点。おそらく以下がはっきりしないためにこの事件は奇妙さを増すこととなっている。
①不思議な人物が部屋におり(関東弁の男)、その者が介在する事によりBが自殺だったのか他殺だったのかが不明瞭に見えること。
②関東弁の男の素性が全くわからない上に家主に電話して来るまで部屋におり、尚且つ招き入れるまで待っていたこと。
③死体発見後家主のAと連絡が取れなくなったこと。

Bは自殺だったのか、他殺だったのか。
 カーテンレールの耐重量について調べてみると、建て付け方やカーテンレール自体の作りによりかなりの開きがあり、5kg〜80kgもの幅があった。通常のカーテンレールは5〜10kgとされ、とても成人男性の首吊りにかかる負荷に耐えきれそうにない。
 電気コードで後ろから絞殺すれば似たような痕は偽装できるが、かなり背の高い男がやらないと頚部の真ん中付近に絞殺痕ができ、不自然な痕に見えるだろう。首吊りの際は体重が下方向にかかるため、痕は顎の下にV字状にできる。これを捜査機関が見逃していないのなら自殺の可能性が高い。
 しかも、上半身裸で首を吊っていたとのことで、体液で汚れないように自分で脱いだのであろうか。だが、首吊りで汚染を起こすとしたら失禁で、後処理時に迷惑をかけたくないのならオムツを履けばいい。なお、2013年6月26日の気象を見ると日中に5ミリほどの雨が降っており、気温は20℃から22℃ほどで推移していた。暑くて脱いでなければいけないほどの気温ではなかったようだ。
 確かに首吊りは簡便で効果の高い自殺の方法だが、人の家でやらなければならないほどに追い詰められていたのだろうか。2013年6月26日は水曜日。普通の会社員であれば働いていたはずだ。
 この男性がどういう理由で人の家に泊まって引っ越しを手伝おうとしていたのかは不明だが、普通に家庭があり生活をしているものなら、平日に引っ越しの手伝いをする46歳男性はあまり多くないだろう。日雇いや派遣、または木曜日が定休日のものである可能性がある。また、家庭を持っておらず独身である可能性もある。
 余程Aの母に世話になっていたのか、46歳の血縁でもない男性が前日から泊まり込み、平日の昼間に引っ越しを行い、なおかつ家には家主はいない。この男性、何かから逃げていたのだろうか。

 さらに、死んだ人間と電話の主である「関東弁の見知らぬ男」とはどんな関わりがあったのだろうか。ただ、この男が直接的に死に関与したのであれば誰かにそのことを連絡する必要もないし、誰かを待つ必要もない。他殺であれば、自殺の偽装はほぼ成功しているのだからその場にいる必要性すらないのだ。
 むしろ律儀に関係者に死を知らせた事になるのだが、なぜ本人の家族にではなかったのだろうか。残っていた携帯の履歴にでもコールバックしたのだろうか。もしくは、この男も母と知り合いであった可能性も否定できない。
 46歳、男性、平日に休みがあり、家族を持っていない可能性がある。友人の頼みで前日泊まり込みで引っ越しに参加するが、その家の家主はいない。この男、例えば借金の取り立てや仕事の関係者である可能性が高く、発見した以上離れる方が怪しいと思ったのかもしれない。「関東弁」だったのかどうかは聞いた人の主観に左右されるため確信的なことは何も言えない。
 なお、テレビなどの報道で家主のAとは連絡が取れないという情報があるが、死に関与している可能性がある限りは警察の事情聴取を受けるだろう。変死なのだから、そこで家主が失踪していればもっと大きな事件になったはずだ。だがその情報もないことから、Aはどこにいたかはわかっていると思われる。

 この事件はあまりニュースなどで取り上げられることもなかったのだが、なぜか奇妙な部分が多いためか妄想を膨らませる事を助長し、ネットではオカルトじみた不思議事件として散見される。探してみると新聞記事となっているのを見つけることができた。

 26日午後11時ごろ、堺市堺区協和町5丁の市営塩穴団地の10階の一室で、住人男性の義兄から「知らない人が首を吊っている」と通報があった。また、発見時には部屋に見知らぬ男性がいてその後姿を消したといい、府警が行方を探している。堺署によると、死亡した男性は、窓際のカーテンレールに電気コードのようなものをかけて首を吊っていた。上半身裸でズボンと靴下を履き、外傷や腐敗はほとんどなく、死後あまり時間はたっていないとみられる。室内に衣類などが放置されていたが、荒らされた形跡はないという。

朝日新聞 2013年6月27日

義兄が「人が亡くなっていると聞いた」と言うと、男性は「そこです」と答え、義兄らが部屋を確認しているうちにいなくなったという。

産経新聞 2013年6月27日

 そして、なぜかネットでは語られていない顛末を見つけることもできた。自殺でないとしたら、完全犯罪は成し遂げられたことになる。

 司法解剖の結果、死因は首をつったことによる窒息死だった。同署によると、Bさんは26日夜、カーテンレールに電気コードをかけて首をつった状態で死亡しているのを発見された。携帯電話に自殺をほのめかすメモが残っていたことから、同署は自殺の可能性が高いと見ている。

産経新聞 2013年6月30日

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