即時抗告棄却文の「重箱の隅をしつこくつつく」和歌山毒物カレー事件(7)
平成29年(く)第121号、「事実認定につき職権判示をした上死刑の量刑を維持した事例(和歌山カレー毒物混入事件)」これは即時抗告に対しての棄却理由が書かれた文章である。
和歌山毒物カレー混入殺人事件はこの大きく3点を証拠とし、林真須美死刑囚の犯行であるとしている。
林真須美死刑囚はこれを不服として即時抗告、弁護側はヒ素の鑑定などに対して不十分さを指摘し、罪状の再検討を申し立てた。
はて、この3点は十分にファクトチェックが行われた「真の事実」なのだろうか。この3点について述べられている内容を見ていく。そして、さらに上記の文章には続きがある
和歌山毒物カレー混入殺人事件は「動機なき犯行」とも呼ばれている。裁判の中では自分の用事を優先してカレーの調理に参加しなかった林死刑囚についての話を、他の主婦が陰口を言っていたのをガレージ前で聞いて激昂した、ということに建前はなっている。
他の主婦の悪口を聞いて、腹が立って無差別テロを感情のままに行ったって、普段から恐ろしいほどの嫌がらせでも受けていたのだろうか?
動機が解明されなかったものだから、この事件には「状況証拠はあるんだから、動機は必要ないでしょ?」という表現が随所に出てくる。
怨恨で個人を殺害したのが色々な人の話からすぐにわかるのであれば動機の解明は不要かもしれないが、しかしこれは「毒物を使用した無差別殺人」だ。この事件は、無差別殺傷事件で、テロ行為に近い。
テロリズムの実践者は思想を持っている。暴力による革命を志す政治思想を持つ赤軍派や、破滅的な宗教思想を持つオウム真理教のように思想を体現するためにテロ行為は行われる。
最近では無差別巻き込み事件と呼ばれる者も出現した。秋葉原通り魔事件や京都アニメーション放火殺人事件のように、特定の個人を狙わず死刑を狙って社会全体に対してテロ行為を行う新しい形態のものもある。
その他にもグリコ・森永事件などの劇場型犯罪や、毒物を使ったテロ行為は青酸コーラ無差別殺人事件やパラコート連続毒殺事件のように毒物を混入させ社会不安を誘うことが快感であるかのような犯行が多い。そのどれも当てはまらない。
テロ行為に関してはその動機の解明が不可欠だと思うが、このカレー事件に関しては「状況証拠が揃ってるので、動機の解明は必要としない」と明言してしまっている。
毒物を使った「保険金詐欺」と毒物を使った「無差別テロ」は明らかにその犯行の質が違う。この文章の中では動機についてほとんど触れられることはないのだが、いくつかそれに触れる部分がある。
ん?
林死刑囚は「ヒ素で無差別殺人を行ってもその証拠は残らない」と思っていることになっており、検察の不思議妄想が全開だ。さらにこのような文章もあった。
爆笑してしまったのだが、この表現では「ムカついたらついついヒ素使っちゃう」ということになるのだが、ついついヒ素使っちゃうテロリストってアメコミのヴィランとして登場しそうなレベルだ。
動機の解明を必要としなかったと何とも格好良く言っているが、検察側の妄想ストーリーを突き進むと意味のわからないヴィランが出来てしまうため、それ以上の脚本の執筆をやめたのだろう。「動機の解明の必要はない」のではなく「キャラクターの設定に難渋」したのだろう。少なくとも林死刑囚にとっては、「動機を語りたくない」のか「動機がない」のだ。
Ⅰ.まず、亜砒酸が自宅から見つかったことについて
この文章の中ではさまざまな角度からヒ素について科学的検証を行い、御SPring-8様が何度も御登場あそばされる。
私は化学的な検証結果に対しては素人である。アンチモンやビスマスやらスペクトラムやら吸光法などと言われても解説できるほど賢くない。その上、この棄却文章では申し訳ないが私の頭が悪いため何を言っているのかさっぱりわからない。
私なりに調べた結果、基礎的なことしか言えないが、砒素は鉱物(重金属)であり、形成されるまでにさまざまな他の鉱物も含まれる。
事件に使われた砒素は中国で数億年前に鉱床が形成されたものであり、他の鉱物も混ざるのだ。この他の鉱物がどれだけ含まれるかを測定することによって、原材料や違いがわかる。カレー事件ではこれを検査することで幾つかの容器の亜砒酸が同じかどうかを区別しているのだ。
しかし、その分析についてはそもそもの定義が怪しい。
まず、断っておきたいのが、このカレー事件では以下の砒素たちに焦点を当てている。
①緑色ドラム缶(兄宅)
②ミルク缶(兄宅)
③せんべい缶(重記載缶)(兄宅)
④円柱状の茶色プラスチック製容器(H1タッパー)(兄宅)
⑤ミルク缶(J1ミルク缶)(以前に住んでいた家のガレージの棚の上にあった)
⑥プラスチック製小物入れ(請求人のキッチンシンクの中にあった)
⑦青色紙コップ(祭り会場のゴミ袋の中にあった)
⑩カレー
ここでこれらの砒素に対して異同識別をするために吸光法やSPring-8を使用した。異同識別とは簡単に言うと「AとBは同じものか、違うものか」を識別することだ。
まず前提がとても重要だ。検察庁が東京理科大学教授である中井氏に依頼した内容は「⑩カレー、⑦青色紙コップ、⑥プラスチック製小物入れ、①緑色ドラム缶の亜砒酸が同一の起源かどうかを識別すること」である。
あれ?
すなわち、「⑦青色紙コップと⑥プラスチック製小物入れの砒素が同一かどうか」ではない。もっと言うと、「同一の起源か」というだけで、「同じものか」ではない。
もし、⑦青色紙コップと⑥プラスチック製小物入れの亜砒酸が「同じ」であれば決定的な証拠となっただろう。
さらにこの、「組成上の特徴を同じくする」というものはかなりの曲者だ。何度も言うが「同じ」ものではなく、「特徴が同じ」なことがわかっただけだ。
これらは「原料鉱石に由来する微量元素の構成が酷似していることから、製造段階において同一である、すなわち同一工場で、同一原料鉱石を用いて、同一工程で、同一機会に製造されたと言える」とし、「バリウム」も共通して含有していることから、「異同識別3鑑定の分析結果からは、東カレー鍋中の亜砒酸が嫌疑亜砒酸と製造段階において同一であることを推認させる複数の事情が認められる」とある。「推認させる複数の事情」ってこれ、「色々よく似てるからまあほぼ多分同じ」ぐらいにしか私には読めない。
さらには「亜砒酸が貴重なものであることに加え、上記の亜砒酸のどれかが青色紙コップを介して東カレー鍋に混入された蓋然性が高く、他の特徴を持つ亜砒酸がカレー鍋に混入されることは難しい」すなわち、①〜⑦の中からのどれかがコップを介しカレーに入った、と言いたいらしい。
ちなみに、「蓋然性」とは難しく表現しているが、「必然性」が「100%の確率で起こることと」すれば、蓋然性は「多分」「おそらく」「いつもそうとは限らないが」という意味である。まあだいたい起こる、という何とも忍びない表現なのだ。
さて、本当に亜砒酸は当時貴重だったのだろうか?
60缶も出回っているのにも関わらずそこがどう希少なのか逆に説明していただきたい。少なくとも3トンの同一起源の亜砒素がどこかにある。
その他の59缶は全て他県にあるのなら和歌山に1缶しかないドラム缶は希少ではあるかもしれないが、どうもそうでもない。
公判での証言では同じ製造業者の亜砒酸は、和歌山市内で多い月には1トン(50kg入りドラム缶で20缶)が販売されていた。
要するに、これら60缶の亜砒酸も、SPring-8にかければ紙コップの亜砒酸と起源が同一となるわけだ。これでは、②〜⑤をいくらSPring-8にかけても意味がない、①が起源なのはこの周辺では当たり前だし、他60缶とも同じだ。この60缶は本当に近隣には存在しなかったのだろうか。
さらに、これらの亜砒酸は濃度が違う。薬品などであれば経年劣化により濃度が低下することが考えられるが、これは重金属のためそれ自体が劣化することは考えられない。濃度が低いものは何かに混ぜられていたためと考えた方がよさそうだ。
しかし、この青色紙コップの亜砒酸は掬われたとされるプラスチック容器より濃度が上昇している。青色紙コップに移ると3倍以上の濃度に回復する。
プラスチック容器の砒素を科学的に処理したのだろうか。
元々ヒ素は殺鼠剤として明治時代から使われていた。毒性が強いため少量で殺鼠できたからだ。しかし人体への影響が強すぎるため徐々に使われなくなる。
兄はシロアリ駆除として砒素を譲り受けていた。シロアリ駆除では砒素と何かを混ぜて「毒えさ」を作るのだそうだ。巣を壊滅させるために餌として運ばせるからだ。実際にその手法についても記載がある
「白アリ薬剤」と書かれたプラスチック容器は濃度が薄くても当たり前のことだ。これではむしろ捏造の可能性を濃くさせる事実だ。これではシロアリ駆除業者の兄の家からガレージや林死刑囚宅に持ち込んだ可能性すら疑われる。
彼らの脚本は最初から雲行きが怪しくなってきた。
Ⅱ.林真須美死刑囚は本当にヒ素を「取り扱って」いたのか
頭髪に砒素が付着していたので砒素を取り扱っていた、という何とも短絡的な理由だ。そしてそれを補強するかのように、他の砒素は近隣には存在せず、砒素を所持していたものたちはカレーへの接点がなかった、と主張している。
さらに、自宅周辺からもヒ素が検出されている。
この検出された砒素の濃度に関しては裁判資料を調べないとわからない。
しかしbroadcreation氏の情報では、
「旦那の林健治さんが過去の保険金詐欺がバレないために証拠隠滅として、砒素を処分してしまったらしい。自宅裏の用水路に家中の砒素を排水に流しており、翌日に魚が溝川に浮かんでいたと報道されている」
ということだ。この報道記事を見つけることはできていない。だが、ヒ素を捨ててしまったことは素直に認めている上に、捨てたのは林死刑囚ではない。人は自分が不利になる嘘はつかない。この証言は真実である可能性が高い。林死刑囚と砒素の接点がどんどん薄くなっていく。
そして毛髪鑑定だ。
毛髪については過去の記事で考察しているためそちらを参照していただければ嬉しい。
何にしても彼女はヒ素を日常的に取り扱っていたとはとても思えない。彼女がプラスチック容器から砒素濃度を高め、イライラしたら砒素を使うほどのテロリストなら、ヒ素は被った後のように毛髪の至る所にくっついてそうなものだが。
Ⅲ.ウロウロする熊のようなもの見たことについて
事件のタイムテーブルなどに関しては前の記事を参照していただきたい。ここで強調したいのは「請求人(林死刑囚)のみ」というところだ。
当初の新聞記事ではカレー鍋全てに青酸が投入され、投入が疑われた時間帯はおそらく17:00〜18:00頃だったのではないかと発表されていた。
青色紙コップは祭り会場のゴミ袋の中から見つかっており、紙コップからは指紋も採取されていない。紙コップと容疑者を結びつけたのはSPring-8だけだ。
そのため、カレー鍋への接触状況だけが容疑者へ繋がる情報となった。カレー鍋周辺のタイムテーブルの作成方法は以下のように行われている。
それらの供述内容から、林真須美死刑囚が最も怪しい人物として浮かび上がってきた、ということらしい。なんだか、小学校で給食費が無くなった時のようなことをしているのだが、集団でそのようなことを行うとリスキーシフトが起こりがちだ。
発言力の強い人間や、影響力のある人間の証言に強く引っ張られてしまう可能性が高い。犯人が集団の中にいればいくらでも有利に扇動できる。
是非、公判記録の供述内容を見てみたい次第だ。しかし、何度も言っているが、0時20分から1時までの間に砒素を混入したのなら、その後の次女を含む人たちの味見はもう博打だ。誰かの味見により祭り会場に運ばれる前に中毒者が発生し、その後の犯行が止められる可能性もある。
自分の子供も死ぬかもしれないことを果たしてその場の激情だけに駆られてやるだろうか?それならもうやぶれかぶれの行動だ。
そして、最重要の証言とされる女子高生の目撃証言である。女子高生はガレージの斜め向かいの家に住んでいた。この女子高生は自宅2階の両親の寝室のベッドの上にうつぶせの状態で、窓越しにガレージにいた林死刑囚を目撃したということである。以下のような証言をしている。
まず、女子高生が昼間に両親の寝室に入りベッドの上に寝転んでいることがかなり不思議に思える。いったい何をしてたのだろうか。なお、この女子高生の証言は最初は「1階で見た」と言うことになっていたが、なぜか2階に移動している。
そしてこのガレージでは、2つの鍋を並べてカレーが作られていた。上記証言で目撃された蓋を開けたカレー鍋は、2つのカレー鍋のうち、砒素が混入されていなかった方の鍋である。なぜこれが重要目撃情報とされるのか理解に苦しむ。完成したカレーを覗いたのではないかとしか思えないのだが。
さらに目撃した人物の服装について、白いTシャツを着ており、首からタオルを掛けていたと証言している。しかし、林死刑囚はその時は黒のTシャツを着ていて首からタオルも掛けていなかったと証言している。
この証言は、一審での公判期日外に行われる証人尋問での次女の証言と一致している。次女を林死刑囚だと見間違えているのだ。
さらに窓とガレージの位置関係からも目の前に植木があり、実はさっぱり見えなかったのではないかという考察もある。
何にしても見えたとしても西カレー鍋の限局した周りの様子が少しわかるだけで、しかもそちらには何も投入されていない。もう何の話かわからない。ウロウロしてるのをただ怪しんでるだけだ。
なお、向かいの家の2階からガレージまでは約16mほど離れているらしい。しかもガレージのアクリル板を通し、窓はカーテン越しに見たというのだ。普通に考えてもそんなに遠くでは誰だかもわからないだろう。
上写真では白いシャツを着ている、というぐらいしか視認できない。何か怪しい動きをしているというだけで死刑にされてしまったのではたまらない。
この証言は捏造である可能性がかなり高い。この現実味のない視界は狭山事件の万年筆を彷彿とさせる。さらにこう続く。
もう開いた口が塞がらない。
一応、「事後情報効果」について述べる。これは何らかの出来事を目撃した後に、「その出来事に関連した情報に触れると、事後に接触した情報とオリジナルの記憶が混同した内容を報告することがある」というものだ。女子高生の証言は事後情報効果というよりは、捏造で脚色された可能性が高いように思う。
次に、目撃しながらも裁判で証言しなかったという少年が存在する。内容はかなり検察側に有利な証言だが、実際には証言していない。
一時報道が加熱したときに週刊誌で取り上げられ、その後この少年が消えたように見えたのか少年に関する陰謀説がなぜか始まったのだが、私は陰謀説の内容は興味がない。
供述調書によれば少年はこう話している。(長文です)
まず、とにかく長い。そして酷いくどさだ。
人間はこんなに事象を細かく覚えてられない。おそらく調書を作成する時点で細かく脚色したのだろう。この元少年はYoutubeのdigTVというチャンネルに出演しているのだが、ここで話している内容は聞くとすんなり耳に入る。
あれ?
林死刑囚がガレージに来たのは午後0時20分ごろとされている。事実をやんわりと歪曲するために何とかして辻褄を合わせるよう供述調書の上では言い訳が始まる。
①「マスターはいつも開店準備が出来ると、開店前の午前11時50分頃に、すぐ近くの自宅に着替えなどをしに帰ります。開店後の午後0時15分~20分頃の店に戻ってきており、この日も同じくらいの時間に自宅に行ったと思います」
②「店ではお客さんが早くから待っている場合には午後0時前であっても5分くらいなら早めに店を開ける事もありますが、反対にお客さんが来ていないからといって、午後0時より遅く店を開けるという事はありません。ですから、僕が店を出たのは午後0時より前に間違いありません」
③「僕は店のをドアを開けた時に若い感じの男女のカップルが開店を待つようにして立っていた事を覚えています」
④「本当は早く店に戻らないといけないのですが、店に戻れば後はずっと忙しく働かねばならず、この日は寝不足でしんどかったので、もう少しここで休憩してからマスターが戻ってくるより前に店に戻ればいいと思い、もうしばらく、その場にいることにしたのです。僕は、しゃがんだ格好で地面の方を向きました。それから僕はウトウトしてしまいました。この時にウトウトしていた時間の長さについても分かりません」
⑤「店に戻った正確な時刻は分かりません。ただ、マスターがまだ戻ってきておらず、僕は良かったと思って何事もなかったような顔をして仕事に行った事を覚えています」
⑥「また僕が店を出る時にいたカップルのお客さんの前に既にお好み焼きが出されて食べ始める所でした」
時間に関する説明がくどい上にすごく変だ。
マスターはいつも11時50分に着替えに戻り午後0時20分ごろに店に帰ってくるらしい。少年は午後0時より前に店を出た(客が並んでいた)が休憩中居眠りしてしまい、起きると林死刑囚を目撃する。
店に戻るとマスターはいなかったが、客は店に入っていた(つまり午後0時を過ぎていた)要するに午後0時20分ごろであったことを言いたいのだろうが、実際のインタビューでは、
「11時40から50分ぐらいやったような。ただ12時オープンやからそれまでに帰るっていうのがあったから」
これで充分通じる。現在マスターはすでにお亡くなりになっており、本当に毎日着替えに帰っていたのか確認する術ももうない。
しかし、店がオープンする午後0時にマスターがいないのは何ともおかしい。すでに客はお好み焼きを食べ始めるとこだったというなら、奥さんが作ったのであろうか。
さらにこの手法で「重ねられたコップ」も脚色されているとしか思えない。
「僕は林真須美さんが僕に見える側の「手」つまり、右手に何か物を持っているのに気づき、それで僕は「何だろう?」と思ってよく見るとそれはピンク色のコップの形をした物である事が分かりました。ピンクの色は遠くから見て白ではなく、ピンク色だと一応分かるほどの色でしたが、パッと目につくほどには濃くない程度の濃さのピンク色でした。透明のコップの中にピンク色の液体が入っているというのではなく、コップ自体に色がついているのだという事は見て分かりました。僕は林真須美さんが右手に持っているのがピンク色をした紙コップだと思いました。そして、僕が気になったのは、その紙コップの上のフチの所が随分と高さがあるように見えた事でした。フチの所がごっつい紙コップやなぁ~変な紙コップやなぁと思ってもっと良く、その紙コップをじっと見ました。林真須美さんは紙コップを持った手を前後に振らず、下にだらぁ~っと下げた状態で持っていたので、よく紙コップを観察する事が出来ました。よく見ると、その紙コップのフチが二重か三重になっているのが見え僕は紙コップが2個か3個くらい重ねられているのだという事が分かりました。」
「僕は目が良く僕の視力は、つい最近測った所「右が1.5・左が0.9」であり、色盲の検査などもしましたが、異常ありませんでした。検証の際にも林真須美さん役の刑事さんが紙コップを何個か重ねて持ちましたが、僕の位置から、その紙コップはフチが重なっている事がよく見えました」
やはり過剰にくどい。そもそも少年が見たのはピンクのコップだ。何とかして犯行に使われた青色のコップを出演させるためには「重ねる」しかない。
わざわざ視力の検査まで受けているが、睡眠不足の少年が「コップの縁が高い」などと詳細を不思議に思って記憶しているだろうか。それほど印象に残り詳しく記憶していたのに、その後のインタビューでは「紙コップ」としか答えていない。
しかも、わざわざ中のコップだけ抜いて毒を入れる冷静さと計画性があるのであれば、それを会場内のゴミ箱に捨てるのもなかなか不思議だ。何だか検察側の犯人像は行動に一貫性がまるでない。
なお、アメリカではイノセンス・プロジェクトというものがあり、239件の免罪事件の75%は不正確な目撃証言によって起こった冤罪事件と判断している。さらにその75%の中には死刑が19件もあった。
散々にグトツアイト法やら、X線マイクロアナライザーやらICP-AES分析やらフォトンファクトリーやら放射光分析装置やら超低温ー還元気化ー原子吸光法やらの分析結果を語ったのち、最後に棄却文は以下のように結んでいる。
ここまで有力な状況証拠とされる情報たちが怪しいにも関わらず、それでもまだ有罪が譲れないのは1100億円の御SPring-8様のお陰だ。砒素が同一起源から由来してるものという判断が全ての怪しげな状況証拠を「どうも有罪っぽく錯覚」させている。
さらに、「同一起源のドラム缶」の残りは全てどこにあるのだろうか。
「プラスチック製容器の砒素」と「紙コップの砒素」が「同一」かどうか再鑑定をすべきだ。この事件は保険金事件やメディアがバイアスとして大きく影響していることは間違いない。様々な先入観を捨ててもう一度「本当の事実」から事件を考えなおす必要がある。
なぜなら、もし冤罪であれば「カッとしたらヒ素を使うテロリスト」はまだ生きているからだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?