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山梨キャンプ場女児失踪事件

 2019年9月21日に山梨県南都留郡道志村のオートキャンプ場で当時小学1年生の女児が行方不明になった。
 子育てサークルで知り合った(SNSで知り合ったというのは誤り)7家族27人は、
 12時15分ごろキャンプ場に到着、
 15時35分ごろに9人の子供が150メートル離れた沢に遊びに行き、
 15時40分ごろに女児は1人で後を追った。
 15時50分ごろに大人が沢に迎えに行き
 16時ごろに女児がいないことが判明する。
 大人たちは周辺を捜索したが見つからず通報、その後の捜索は東西15km、南北8kmにわたりのべ1700人での捜索を行われたが、全く手がかりは見つかってない。

 この事件、SNSに投稿を行っていた母親に容疑が向いたり、あまり知らない者ばかりでキャンプに行ったことに批判が向いたり、母親に向けての誹謗中傷で逮捕者が出たりとメディアやSNSを通じて少女の消息と全く関係のない方向に向いた事件でもあった。定かではない情報から誹謗中傷が起こっている。
 不思議なのが、かなり早くからかなり広い範囲で捜索が行われたにもかかわらず、何も手がかりが出ていないことだ。そもそもの開始段階から捜査の方向性が間違っていた可能性も高いが、僅か10分ほどのあいだに人が1人消えている。突然、キャンプ場から7歳の女の子が消えるはずはない。この女児に起こりうる可能性について考えてみたい。

仮説①:熊など自然動物に襲われた
 山梨の道志村周辺で出没するとすれば、ツキノワグマである。ツキノワグマは体長120~180cm、体重は50〜120kg、夜行性で昼間は洞窟や岩の割れ目で休む。雑食性で、果実や実、昆虫、小型の脊椎動物などを食べる。嗅覚は優れているが、目はあまり良くない。性格はおとなしく、子連れでもない限りはヒトにはあまり近づかない。
 確かに道志村周辺、丹沢山はツキノワグマの生息地で毎年目撃情報はある。今回の失踪事件の捜索中にボランティアの方が山中で熊に遭遇し、逃げようとして転倒し足や手首の骨折を起こしており、近くに熊が生息していることは確かだ。しかし、キャンプ場の舗装された道の途中で急に熊に襲われる可能性はかなり低い。
食物を探しているならすでに匂いでわかっているはずだし、食材を狙えば子供をわざわざ襲う必要はない。
 ツキノワグマの冬眠時期は11月ごろからと言われており少し早いが確かに冬眠前であり、食物を探していた可能性はある。しかし、1人でいたとは言え、わざわざ7歳の子供を襲うだろうか。
 熊に襲われる可能性からすると餓死寸前のツキノワグマが少女を襲ったか、子連れの熊を少女が刺激したか、ということになる。
 例えば三毛別羆事件や福岡大学ワンダーフォーゲル部羆事件に見られる食害の被害はそもそも体長3mにもなるエゾヒグマである。
 野生動物は自分より弱いものしか基本的に襲わない。手傷を負うと死に直結するからだ。ヒグマならまだしも対して大きくもないツキノワグマが派手な格好をしたヒトを積極的に襲うと思えない。餓死寸前ならリスクのより低いキャンプ場内に豊富にある食材を漁るだろう。
 確かにクマは雑食ではあるが肉を特に好む。鹿などの肉を土や葉などで隠し何度も舞い戻って食べることがあるとされ、襲われた後に埋められた可能性はある。道を間違えて山中に入っていったところを襲われた可能性も考えられるが、このキャンプ場はいくつかのキャンプスペースが道路でつながって点々とある場所である。そうそう深い山中には迷い込みにくい。
ちなみに、環境省による山梨での「クマによる人身被害」によると、平成20年からの14年間で人身被害は35件、うち死亡はゼロである。

仮説②:性犯罪者による誘拐
 7歳女児ということで、性犯罪に巻き込まれたというバイアスが生じやすいが、わざわざキャンプ場に女児を探しに来た性犯罪者に出会う確率は恐ろしく低い。
 そもそも、キャンプ場に女児を物色しに行く性犯罪者はかなり特殊ではある。但し、女児を狙ったのなら拉致に格好の場所ではある。
 2021年にオーストラリアのキャンプ場で姿を消した4歳の少女は誘拐され加害者の自宅に18日間監禁されていた。犯人は深夜にテントに忍び込み寝袋ごと連れ去ったケースであった。しかも、誘拐された女児の母親のSNSをフォローしており、そこから情報収集し犯行に至ったと思われる。つまり、個別の女児を狙っていた。このケースから今回の事件を考えるなら、SNSのフォロワーの中に犯人がいることになる。よほど女児に固執した犯行か、母親などへの怨恨か。もしSNSの情報をもとに美咲ちゃんを誘拐するためだけに道志村に追いかけて行ったとするならば、犯人はかなりヒマなやつだ。そして、自分に操作の手が及ばないか観察するためにSNSのフォロワーの中に今もいる可能性がある。

仮説③:事故の後そのまま連れ去る
 急に飛び出した女児と衝突してしまい、加害者がバレないようにそのまま車に乗せ連れ去った可能性がある。

攫うにしても車が飛び出すにしても、沢の近くのこのスペースがかなり怪しい


 例えば、1978年に事故後受傷者を連れ去った事件があった。昭和53年3月3日16:30ごろ、大阪市住之江区で、田畑作之介ちゃん(3歳)が自宅近くの道路付近で遊んでいたところ、走ってきた自動車にはねられた。はねた車から出てきた中年男性は「この子どこの子やろ?救急車を待っている時間がないから、自分の車でこの子を病院に連れて行く」と言い残し、自分の自動車に乗せて走り去った。
 その後一緒に遊んでいた子が作之介ちゃんの家に駆け込み、母親に知らせた。母親が事故現場に駆けつけ、近隣の病院に問い合わせをしたが、どの病院に問い合わせても運び込まれた様子はなかった。
 この事件は目撃者も多く、犯人の特徴を記憶していた人間も多かったがその後の捜索は進展せず、時効を迎えることになった。
 お菓子を食べて慌てて友達を追いかけた女児に車で接触してしまい、そのままどこかに連れ去った可能性がある。ただ、人にぶつかる大きな音がしたら誰かが記憶しているかもしれない。
失踪当日、19:00ごろに導入した警察犬は南の森、橋、坂の上、沢、橋では反応しなかった。臭気を追えないのは、移動が徒歩ではない可能性が示唆される。

仮説④:道に迷った
 捜索では見つかってないだけで、道迷いにより遭難してしまった可能性もある。捜索はしたが、夜露を凌ぐために洞窟などに入り、そのまま疲労凍死してしまったのだろうか。
 歩いていた女児が突然失踪した下村まなみちゃん失踪事件など、道迷いの可能性が高い。ただ、普段から臆病な女の子が道に迷ったとはいえ、わざわざ深い森に入っていくのかどうかはかなり疑問だ。
 但し、女児は遅れて友達の後を追った。先の友達たちが行った遊ぶ場所を女児は知っていたのだろうか。母親の公開された情報では、「〜先に出発した子供たちはもともと遊んでいた場所ではないところへ行っていました。(中略)前と同じ場所で遊んでいたらこんなことにはならなかったのに」といっていたので遊んでいた沢を知らなかった可能性があることが示唆されている。
 迷ったとはいえ、子供の徒歩での移動速度はせいぜい1〜2km/hほど。捜索が開始されるまでの2時間では5kmほどしかどうやっても移動できないことは確かだ。さらに、道迷いであれば、どこかを歩いていたところを目撃されていてもおかしくないが、目撃者が全くいない。この日はかなり人が少なかったのだろうか。

仮説④:神隠し
 神隠しは、人間がある日忽然と消え失せる現象で、森や神域で人が失踪することを神の仕業として捉えた概念である。神だけではなく、天狗や鬼、山姥や狐、妖怪、雨女による仕業ともされている。
 柳田國男の「遠野物語」、「山の人生」にもその記載がある。平安時代の頃から神隠しの記載があり、その正体は迷子、家出、失踪、夜逃げ、誘拐、拉致、口減らし、健忘の想定がしうる。知的障害者が遭いやすい気質があるとも言われている。
 椿荘オートキャンプ場の最も近隣の山は大室山であるが、ここは調べる限り特殊な謂れのある霊場ではない。禁足地や修験地でもないようだ。

追記
 2022年4月23日、新たな進展があった。道路脇で骨のようなものを捜索ボランティアの男性が見つけた。この男性、見つけた際に写真を撮影し、その後もう一度戻り確認して警察に相談したという。
 人骨が見つかったのはキャンプ場から東に600m離れたところである。女児を見失うまで歩いていた方向から反対側の枯れた沢である。そこに行くためには舗装されていない林道を歩く必要がある。但し、失踪の1週間後に台風が襲っているため、より高所から流された可能性はある。

 4月26日に見つかった人骨は、死後数年が経過した数センチ四方の後頭部の骨であるとされる。
 4月28日、新たにサイズ20cm、エメラルドグリーン、「SYUNSOKU」の文字の入った不明女児の履いていた靴に酷似する右足の運動靴が骨の付近で見つかる。
 4月29日、新たに左足の運動靴と靴下が見つかる。
 インタビュー映像などを見ると、「ここは探した」という発言が聞かれた。確かに、大声で呼ばれながら15キロ以上に渡って捜索隊は探し歩いていたのだから、山中で生存していたのなら気づきそうなものである。
 事実は小説より奇なりだが、数年が経過した人骨は見つかったのだから、未成年の何者かが死亡したのは間違いない。
 ただし、不明中の女児だとすると、
①連れ去った犯人が遺棄に再び来訪した。
②猛禽類により殺害され、森に長い間いた。
③道まよいで早期に疲労凍死し捜索隊が見落とした。
 ぐらいしか考えつかない。
ネット上では沢山の方々がキャンプ場の様子を映像としてアップしている。それを見ると女児の通った道で大型の猛禽類が襲ったとはどうも考えづらい。そして、様々な現地の動画を見ると、どうも道に迷いづらい。女児が行った方向から他の子供が遊んでいた場所までの距離が短すぎるのだ。
 となるとどうも誰かが連れ去った可能性が高い。一部のコミュニティでは動画に載っていた黒のデミオが怪しいとの説もある。
 5月2日、骨片ではDNA鑑定が不可能であったニュースが流れた。
 5月3日、見つかった靴下の写真を見て母親が女児のものの可能性が高いことを示唆した。
 5月4日、靴が見つかった付近で黒色のハイネックシャツと肩甲骨らしき骨が見つかった。
靴の劣化の度合いはどうなのだろうか。

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