実践事例:書画カメラ(実物投影機)

 今回は、ここ数年私が取り組んできた事例のうちの1つとして、書画カメラの実践について紹介します。最もアナログに近いICT機器と言っても良いかもしれませんが、多くの先生方にとってICT活用の第一歩となることは間違いありません。パソコン操作は苦手でも、これなら使える!というものです。

文部科学省のスタンス

 文部科学省が進めてきた「第2期教育振興基本計画」では高等学校を含めた全学校種に対して、各教室1台の大型投影装置(モニタ・プロジェクタ等)や学校の無線LAN環境の整備などとあわせて、書画カメラが各教室に1台と記載されていました。
 しかし、2018年度から2022年度までの「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」には、書画カメラの整備は小学校と特別支援学校のみになってしまいました。これは、「学校におけるICT環境整備に係る地方財政措置」として単年度で1,805億円が盛り込まれているものなのです。つまり、中学校や高等学校には書画カメラは整備する必要が無い、と判断されてしまったのです。

実際の導入した様子

 私は数年かけ、学校の備品購入予算を割いて貰いながら、年間に数台ずつですが、普通教室に常設でのプロジェクターと80インチのマグネットスクリーン、書画カメラを整備していきました。天井吊り下げなどしません。工事予算をかけるなら、もう1台買えるでしょ!っていう発想で、下の写真のように設置しています。(正確には、前任校なので「設置していました」かな?)

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 全教室に一度に設置できなくても、学年毎など複数年かけて計画的に整備することで学校の予算で何とかできるのが本県の公立高校の良さなのかもしれません。本来は教育委員会で一斉に整備すべきなのでしょうが。

 さて、実際の設置は下図のように設置しました。右側に伸びて撒いてあるのはHDMIケーブルです。教員用のPCを持ち込んだときにプロジェクタからのケーブルをつなぎ替える必要がないように、あらかじめ転がしてます。書画カメラ自体は、机と耐震ゲルで接着?してあります。

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高校では必要無いのか?

 高校では書画カメラは必要無いのか?そんなことはないと思います。高校生の一般教科で教員が使うのはもちろん、総合的な探究の時間など生徒がプレゼンテーションを行う機会はいくらでもあるのです。そういった場面での活用事例をいくつか紹介します。

 1つ目は、あたりまえの「資料の拡大提示」です。教科書や資料集の図を拡大提示することで、見させたい箇所がはっきりと提示できます。後ろ座席の生徒が多少見えづらくても、手元の資料と見比べれば良いのです。どこを見させたいかということをはっきり示すことが大切です。

 2つ目は、「生徒のノートの提示」です。よくある光景ですが、「前に出てきて黒板で解答して下さい」というものの代わりに、ノートを提示させて発表させるのです。ノートに解いた問題をもう一度黒板に書くのは時間の無駄です。もっと言うと、ノートに書いてあった「素晴らしい間違い」を、頭の良い生徒のノートを見て「ありきたりの正解」に直して黒板に書いてしまうことが少なくないのです。ありがちな間違え方を共有したい、「こういう間違え方ってよくあるよね、気をつけようね」と言いたいがために書いて欲しかったのです(吊し上げではありません!)。それを書画カメラを使うことで、解決できる上に、時間短縮ができるのです。

 3つ目は、「発表の機会の確保」です。班でまとめた意見を口頭で発表させるようなこともありますが、意見をメモにまとめさせて、提示して発表させるのです。PowerPointで作成する必要はありません。もちろん、そういった時間をかけた発表も大切です。しかし、グループの意見を1ペーパーでまとめる技術も同時に養え、聞き手も目で見ながら意見を聞く機会が簡単に作れるのは大きいです。

 他にも事例はありますが、このあたりにしておきます。中学・高校でも十分授業の中で活用する機会はあるはずなのです。1台あたり数万円しますので、安価ではありませんが、簡単に壊れる物ではありませんので計画的な整備で十分効果があげられると思います。

終わりに

 校内で最初に導入しようとした際に、「いまどきこんなものを買って、誰が使うんだ」とOHP世代の先生に言われたことがありました。後日、書画カメラを使った授業を見たその先生が「いいな、これ!」と言っていたのは今でも忘れません(笑)。私は、県の総合教育センターでICT関連の講座を担当させていただいているのですが、この話をいつも導入のネタに使わせて貰っているのは内緒です。
 真面目な話に戻ります。私は、つくばでの研修で講義をしていただいた、堀田龍也先生、高橋純先生のお二方の講義を元に、自分なりに実践を積み重ねている最中です。この春に異動になり、まだ環境が整っていない学校のため、環境整備をいちから再スタートしています。新たな発見があったら、書画カメラの実践事例の続きとして紹介させて頂こうと思います。

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