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マウスで数式を解く?Graspable Math

私は高校で数学の教員をしています。授業での活用のため、Function ViewGeoGebraといったグラフ描画ソフトについて色々と調査したり、研修会を行ったりしています。その中で、今夏、出会ってしまったのが、タイトルにあるGraspable Mathというブラウザーで動くソフトウェア(Webアプリ)でした。

Graspable Mathとの出会い

私はここ数年、夏休みに県の総合教育センターでの教員対象研修会において、GeoGebraの研修会の講師をさせていただいております。その研修会の資料を作成している中で、「GeoGebraノート」について調べていました。

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そのとき、上の画像にある、右上の見慣れないアイコンの「Graspable Math」ってなんだろう?と思ったのが出会いでした。

検索して見つけた「Graspable Math」のWebサイトがこちらです。

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英語ばかりで、何ができるのかさっぱり分かりませんでしたが、わかりやすいチュートリアルが準備されており、すぐに理解できました。さすが数学は世界の共通語!文字が読めなくても、何となく理解できるのです。しかも、直感的に操作できるというのは、開発者さん達がしっかりと考えた証だと思います。このアプリに対する意気込みが伝わってきました。そんなこともあってか、チュートリアルを進めるにつれてワクワクしてきました。

とりあえず、何が出来るの??

私のワクワクは言葉で伝えるのが非常に難しいので、まずはGraspable Mathの概要を下の動画で見てみてください。これで全部分かります。公式のYouTube動画です。(音声は無し。2倍速でも十分雰囲気がわかると思います。)

この動画から分かるのは…

・項の順序が入れ替えられる
・共通因数のくくりだしと、分配法則
・分数の約分と、2つの分数に分けられること
・足し算などがマウス操作でできてしまう
・手書きが式に変わる(多分、現在のバージョンでは使えなくなった?)
・Wikipediaから式を貼り付けられる(Chromeの拡張機能)
・式変形を見せたり隠したりできる
・式変形をしてきた過程で、どこから来た数か文字かを辿れる

という感じでしょうか。この動画は2015年に作成された動画なので、現在のバージョンとは少し違っているようですが、基本路線は変わっていません。マウス操作だけで、足したり、掛けたり、移項したり出来てしまうのです。

設定画面では、掛け算の記号を「×」と「・」を変更出来たり、三角比で度数法と弧度法を切り替えたり、-1乗の表現に式変形を許可するか、など細かな設定も用意されています。

グラフが必要であれば、画面内にGeoGebraオブジェクトを挿入してドラッグ&ドロップだけでグラフも表示できるのも素晴らしいですね。

Graspable Mathには、「ページ」という概念が無いので、ウィンドウ内で縦にスクロールさせながらどんどん書き込んでいけます。無限に広い黒板があるのと同じですので、授業で役に立つと思います。
あらかじめ間隔を空けて問題を配置しておけば、授業もスムーズに進められると思います。書いたり消したりする必要もありませんし、ページを行き来する必要もありません。そのため、1問で1ファイルではなく、1回の授業で1ファイルにしたり、1単元で1ファイルなんていうことも可能です。

GeoGebraとの組み合わせの例

下の図は、3x+4y=0の不定方程式を満たすxとyの組み合わせは1次関数上の点の組み合わせであること(解が無限に存在すること)を説明するために示したものです。作業手順としては
・左側の式変形を4行目まで行う
・それを右のGeoGebraエリアにドラッグ&ドロップするとグラフが描ける
・GeoGebra内で点 A=(a,f(a)) を作成
・その点AをGeoGebraのエリア外(画像では下側)にドラッグ&ドロップ
・点のx座標とy座標を左の式変形の4行目のxとyのところに代入

複数のアプリを切り替えずに、1つのアプリの中で完結できるのには感動しました。

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上記の作業を、逆に、冒頭の「GeoGebraノート」の中で「Graspable Math」オブジェクトと「関数グラフ」オブジェクトを挿入して試してみました。それが下の図です。こちらの「Graspable Math」オブジェクトは機能が少ない上に、GeoGebraとの動的なデータの連携ができないのが注意点です。(右側のGeoGebra内のスライダーを動かしたところ、左のGraspable Math内では赤字になりました)画面がごちゃついているように見えますが、使い方によってはこちらのほうが便利な場合もあるかもしれません。


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本題から若干それてしまいますので、GeoGebraノートについてはこれくらいにします。

リモート授業にも…

黒板とチョークでは書いたり消したり、カメラの画角を考えたり、文字の大きさを考えたり、大変ですよね。でも、これを使えば式変形を簡単に示すことができるのです。しかも、あらかじめ式を用意しておくこともできるし、その場で手書きを加えることもできる。

たとえば、関数や式変形に関する内容であれば、Microsoft TeamsでGraspable Mathの画面を表示させながら(配信しながら)授業を行うことで黒板で授業をするのと同様な授業も可能です。状況に応じてアーカイブを残すことも出来ますし、リアルタイム配信せずTeamsで録画だけしておいて後日配信を行う、なんていうこともアリだと思います。

最後に

2020年12月時点では、Graspable Mathにスマートフォン・タブレット用のアプリは無いようです。そのため、これを使うにはWebページにアクセスする必要があります。

先生が授業の板書代わりに使うのはもちろんですが、ほとんどの操作は非常に簡単ですので、作成したファイルを生徒が扱うのも簡単にできると思います。(一部、慣れが必要な操作があります)
1人1台パソコンがある環境であれば、面白い授業展開ができそうな気がしませんか?使い方については、機会があれば解説したいと思います…。

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