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花の死臭

勉強は数字で見えるから楽しい
共通テストの過去問で8割取れるようになった。自分の場合は英語に全振りすればいいから楽だ。
しかし課題は時間と集中力の持続だ。正答率よりもまずは全問解くことを目標にしよう。
何に憚ることなく勉強だけしていればよかった頃が懐かしい。それでも勉強はしてなかったけど。
これまでの私の勉強というと関心を持ったごく狭い範囲の書物だけをひたすらに読むか嫌々にやっているふりをするの二択だった。
勉強とはつまり情報を体系化し理解するための訓練だ。
「二次関数なんてなんの役に立つんだ」とうんざりしたことがあるが、二次関数が役に立つかと勉強の意味は関係ない。なんなら古代シュメールを勉強したっていいしバイクの改造を勉強したっていい。
勉強の仕方を覚えることが目的なのだ。こんなことを当時の私に言っても胡散臭い顔をするだけだろうが。
だから当時の私に今の私が言えることは
「黙ってやっとけ」

説得力がない。わかっている。

林吉博伝
明治42年長野県大高の校長の息子として生まれる。
幼少期から水泳と柔道と文学に親しみ東洋大学中国哲学科で中国思想と中国語を学ぶ。
同じ頃に東洋大学印度哲学科にいた坂口安吾とは短歌サークルで顔見知りだったが、その不真面目な生活態度から毛嫌いしていたという。
その短歌サークルに参加していた早稲田の女学生(聴講生)であった女性と学生結婚。卒業後は中学校の教員となる。
折しも満州開拓ブームの頃であり師範学校の教員として満州に渡る。
中国語に堪能であったことから現地の住民と親しく交際していた。
ある日、現地の子供が川で溺死してしまっが流れが急であったことから遺体が回収できないことを不憫に思った林は自ら川に入り遺体を回収したところ大変に感謝されたという。
敗戦直前に現地招集される。その時に妻子は親交のあった中国人の家族に託していた。
間もなく敗戦しそのままソ連軍の捕虜となる。送還の列車に乗せられるが北へ向かっていることからソ連へ連れていかれると察した林は貨物車にあった物資をかっぱらい大河に飛び込んで脱走。
各地にいた現地の友人に助けられながら語学を活かし行商をしながら徒歩で朝鮮まで脱出し帰還船に乗って生還。
先に帰国していた妻は本気で幽霊だと思ったという。
その後は再び教員の仕事を求めて北海道に渡る。
ある夏に同僚が遺書を残し失踪した。何日も山を探したところ既に死んだ同僚を発見。麓に引き返していては夏場ということもあり遺体が荒れることを不憫に思い、そのまま遺体を背負って遺族に届けるが引取を拒否され更に更に不憫に思い自宅に連れて帰り葬式を上げたという。最も不憫なのは突然夫に遺体を持ち帰ってこられた妻であろう。
その後も教員を続け高校の校長で定年を迎えた。
それから数年後に身を患う。死の直前に昏睡から覚め呼び寄せた5人の息子に自分の身体を清めさせた後に往生。
林吉博は私の曽祖父である。

リズムの乱れ
些細なことでリズムが崩れるとなかなか持ち直せない。たとえばプリンターの不調。
それだけでなく気分も沈む。
と思っていたらインクを交換したら復活した。思わずにやけてプリンターをとんとんと叩く。些細なことで持ち直す。

松屋猿
今日松屋でとてつもなく下品で醜い女を三人見た。下品な女を想像して思い浮かぶである人間像がそのまま具現化したような下品さであった。むしろ猿に近い。
しきりに誰かの悪口を大声で喋り猿のうめき声のような笑い声を上げていた。人語を解する猿だ。美しさからも知性からも見放された猿である。
人の悪口を言うことは下品である。そして私は人の悪口が大好きである。従って私は下品な人間である。
ただパブリックな場所や立場の時はできるだけ悪口を言わないようにしている。友人といるときも控える。なぜなら下品だと思われたくないからである。
しかしあの三人にはそれすらない。人は服を着るから人であるように、慎みをなくした人は人ではない。
思えばこの手の猿どもと関わりたくなくて最初の高校を辞めたのだ。猿の調教施設のような学校だった。あそこでは人間扱いされなかった。
ところで牛丼をむさぼりながら三匹の猿が話していた悪口に「あの子友達少ないよねー」というのがあった。(猿は人よりも猿であるから集団に依存する。そこではどれだけ他の個体と関係しているかがアドバンテージになるのだ。だから猿社会では「友達少ない」が悪口になる)
そうだ、この猿どもは気が付いていない。その子は友達が少ないのではなく、お前たちがその子に友達に選ばれなかったということに。友達になる価値すらないことに。
私は彼女に得も知れぬ共感を覚えた。人間は猿と友達にはならない。猿どもはそれに気が付かず下品に餌を食っていた。
その様子を見て私はとても愉快に気持ちになった。私は人を(内心で)罵倒するのが大好きだ。一匹の猿が大きなゲップをした。他の二匹がウキキ!と騒いだ。
最高だ。私は不味い鰻丼を食べながら笑みを堪えた。

教会
知らない間にあれやれこれやれというお役目が増えていく。役割があるというのは良いことだ。

聴き齧る
Audibleの話。
立て続けに谷崎潤一郎を聴いている。特に『卍』が良い。読み手の関西弁のイントネーションが美しくむしろ紙で読むよりも印象的。

本を読む
しばらく勉強以外のことをしていなかった。する気力がなかった。最近は本を読んだり音楽を聴く余裕が出てきた。

雨の匂い
濡れたアスファルトと土と草の匂い。エゴ・ラッピンの「ナイトフード」がよく似合う。

休む
何もしない日。帰ってきてずっと布団でスマホをいじっていたら11時。逆に疲れる。

花の死臭
壁に枯れた花を飾っている。飾っているというよりも画鋲で刺しただけだが。もう三ヶ月くらい経つ。生きている花は不安定だが死んだ花は安定する。切り花の香りは死臭だと思う。死んで乾いてしまえばもう香りもない。


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