見出し画像

i.lab社内R&D 「Voice Mask」プロジェクト:連載② アイデア誕生の背景

こんにちは、i.labです。

特許取得を機に活動を再開したi.lab社内の取り組み「Voice Mask」プロジェクト。連載第2回目の今日は、Voice Maskの原型となったアイデアが生まれた背景について迫ります。

連載1回目を見逃した方はこちら↓

アイデアが生まれたのは2016年初春。もう5年も前のことです。当時の様子やアイデアが生まれた背景について、i.lab代表取締役の横田にインタビュー形式で伺ってみました。

画像4

i.lab:それでは横田さん、本日はよろしくお願いします!

横田:よろしくお願いします。

元アイデアは、発話者の音を周囲に漏らさないスピーカー

画像4

(図1. Voice Maskの元となったアイデア)

i.lab:Voice Maskの元となったアイデアはどのように生まれたんですか?

横田:i.labではクライアントとのプロジェクトでも用いている方法論やプロセスを使って、未来の生活にあったらいいな、を考えるアイデア創出活動を定期的に行っています。当時もその活動の一貫で、i.labスタッフ全員で合計100案ぐらいかな、アイデアを出しました。その後、新規性や実現可能性、他観点で有望なアイデアを3〜5個ぐらいに絞りました。その中の一つに、「発話者の音を周囲に漏らさないスピーカー」のアイデアがあったんです。個室空間に設置したスピーカーから音源(発話者の話声)と逆位相の音をぶつけることで音を打ち消すことができるんじゃないかと考えていました。

実はこのスピーカーのアイデアは、私が2010年のi.school(旧称:東京大学i.school)のワークショップ「製造業の未来」で出したものが原型となっています。その時はグループワークでボツになりましたが(笑)。人知れず可能性を感じていたアイデアだったので、社内でのアイデア出しの時にしれっと忍び込ませていました。

i.lab:一番最初に出した時はボツになってたんですね(笑)。見事な復活劇!最初はある一定空間の中で発生した音を消音する発想だったのは驚きました。その後、どのようにして特許出願時のアイデアになっていたんですか?

「空間に拡散された音を消す」から「自分の声を周囲に聞こえにくくする」への発想の転換

横田:新しいアイデアを出した時には必ず踏むステップですが、まず類似アイデアの探索や技術的な実現可能性についてデスクトップ調査を行いました。その中で、ヤマハが「スピーチプライバシーシステム」というアイデアを既に製品化していることを知ったんですね。音量で会話をかき消すのではなく、ヤマハ独自開発のマスキング音を被せることで元の音を包み隠すという技術です。

i.lab:なるほど、音のカモフラージュですね。既に類似製品があると調査でわかったわけですが、その後どのようにアイデアを改良されたんですか?

横田:アイデアそのものを改良していくだけでなく、なぜそのアイデアが必要とされるようになるのか、社会の大きな潮流や未来の兆しについても思いを巡らしました。i.labが得意とする「機会領域」の探索です。確かその頃は、SiriやGoogleアシスタントなど音声を用いて端末を操作するという技術が出始めた頃だったんですね。じゃあ、その技術が普通になった暮らしって何なんだろうと、i.labスタッフと一緒に思い浮かべてみたんです。自宅やカフェ、コワーキングスペース、公共交通機関など、あらゆる場所で音声で端末操作するシーンを具体的に描写してみました。シーンをもとに議論しているうちに、「自分の声を周囲に聞こえにくくする」ことができると色々メリットあるんじゃないかと盛り上がりました。付き合いのあった弁理士事務所にもディスカッションに協力いただきながら、改良版のアイデアができあがっていきました。

画像3

(図2. 弁理士事務所との打ち合わせ時にホワイトボードに描いたイメージ)

画像3

(図3. 改良版のアイデア)

マスク的なもので口元を覆い、周囲に聞こえる音を小さくする/ごまかすことは技術的に可能

i.lab:技術的な実現可能性はどのように考えられたんですか?

横田:消音についての基礎的な知識はありましたが、プロダクトとして本当に機能するかについては正直わからないこともたくさんありました。デスクトップ調査と並行して、音響分野の研究をしている専門家と壁打ちをすることにしました。
当時、私とi.labスタッフ数名は東京大学i.schoolで文科省のEDGEプログラムに企画・運営として関わっていて、その中の一つに、様々な分野で活躍する若手研究者向けに、自らの研究が切り開く未来の社会シナリオを具体的に想像するプログラム「i.school EDGE」がありました。そこで音響分野の研究をしている博士課程の学生と知り合ったんですね。早速、荒削りの僕らのアイデアについて壁打ちしてもらえないかとお願いしたところ、二つ返事で快諾いただきました。その時いただいたコメントの一部が以下です。

・3次元的に拡散する会話を消音することは技術的に難易度が高い。
・マスク的なもので周囲に聞こえる音を小さくする、ごまかすことは技術的にできなくはない。マスク型の消音機器は聞いたことがない。
・消音の度合いは、曖昧にした音として周りに聞こえにくくするか、全く聞こえなくするかのどちらか。全く聞こえなくするのは技術的に難易度高い。
・会話する音をどう拾うかということと、音をどう消すかということはトレードオフ

i.lab:マスク型装置は専門家視点でも斬新な発想だったわけですね。

横田:そうなんです。壁打ち後も課題は山積みでしたが、一旦は理論的なところで整理ができそうだと感じたので、弁理士事務所にご協力いただいて、出願する運びとなりました。

- - - - - - - - - - - - - -

Voice Maskが生まれた背景について、振り返ってみましたがいかがでしたでしょうか?次回は、アイデアの完成度を高めるプロセスについてお話していきます。更新をお楽しみに!

Voice Maskを一緒に具現化してくれる仲間を募集中!

i.labでは、Voice Maskの実現に向けて一緒に協業していただける技術者や研究者、企業を募集しています。ご興味がある方は以下までお問い合わせください!

問い合わせ先
メール:h-suzuki<at>ilab-inc.jp
担当者:i.lab ビジネスデザイナー 鈴木斉