ダッシュじゃなくてプライムなんです

画像1

英語の記号「´」これ何って読みますか?例えば「A」と類似しているものを表す「A´」は,多くの場合「エイ・ダッシュ」と読まれるのではないかと思いますが,ダッシュ(dash)という記号は「—」なので,その読み方は正しくなくて「´」という記号はプライム(prime)と読むのが正解(ちなみに,アポストロフィ(apostrophe)と答えた学生さんもいましたが,それは省略を表すlet’sとかdon’tだったり,所有を表す-’sで用いられる記号のことなので別物ですね)で,これ何の話しかというと,DNAについて講義したときのことです

DNA(デオキシリボ核酸: Deoxyribonucleic acid)とは,デオキシリボースという糖がリン酸基を挟んで5´位と3´位の炭素で結合すること(=ホスホジエステル結合)によって長い鎖となり,そのデオキシリボースそれぞれの1´位の炭素に4種類の塩基(A, アデニン; T, チミン; G, グアニン; C, シトシン)のいずれかが結合しずらずらと並んでいる高分子で,この塩基配列という文字列がすなわち遺伝情報なので,DNAは「生命の設計図」と例えられますが,むしろ設計「文」と言うべき,つまり文字列は文章なので一方向にしか読めない逆に読むと意味不明,という重要な意味があります(DNAが生合成されるのも「解読」されるのも同じ向き)この方向性はデオキシリボースの炭素の結合を示す「5´→3´」で表わされますが,ここで「´」はダッシュではなくプライムですという話しをしたわけです
 次に,通常二本鎖(二重らせん)構造をとるDNAでは,向かい合った鎖の「AとT」および「CとG」の決まった塩基どうしだけが水素結合できるので,片方の塩基配列がわかればもう一方の塩基配列はおのずと決まる,これが「DNAの相補性」というもうひとつ重要な性質なのですが,同時に相補鎖は方向が逆だということも理解しておく必要があります

例題: 「ATTCGACCCTG」の相補鎖の塩基配列を書け

では,このDNAの塩基配列をわかりやすいよう二本鎖で表すと

5´-ATTCGACCCTG-3´
3´-TAAGCTGGGAC-5´

となるので,この下の行の塩基配列が答えになるのですが,これをそのまま「TAAGCTGGGAC」と書いてはダメで(ところが,高校生物ではそれでも正解としているようです…間違ってるんだけど)5´→3´の方向に読まなければならないので,その方向に左から右に書き直して「CAGGGTCGAAT」これが正解です

こんな感じでDNAの方向性を示すときに使う「5´→3´」英語なら「from five prime to three prime」なんですが,結局,やっぱり日本語で説明するときには「ごだっしゅからさんだっしゅへ」ってゆってしまってますけどね

(*これは以前,別ブログに掲載したものを改訂し,再掲しています)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?