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絶滅した爬虫類である魚竜は卵胎生で繁殖していた

https://bit.ly/36TVr3g

これは動物学ではよく知られている事実なんですが,ぜひ読んでもらいたいという気持ちを込めて,ここで紹介します

脊椎動物は,胎生である哺乳類を除き(例外的に単孔類という卵生哺乳類は現存しますが)基本的にはすべて卵生,しかしながら,中には卵胎生で仔を産むものもいます(卵としてではなく母体の中で孵化し産まれること,そのため胎生のように母体から栄養を得るのではなく,基本的には自身の卵黄で育つ)例としては,グッピーやマムシ,軟体動物ではタニシ,昆虫ではアブラムシなど,系統分類学的なまとまりはなく散在してみられます

タイトルに挙げた魚竜(イクチオサウルス)は中生代ジュラ紀に生息していた水棲爬虫類で,その姿形はイルカそっくり,つまり,完全に水中生活に適応していたため,卵胎生で繁殖していたとしか考えられません〜絶滅したので生態を観察したり飼育したりできない,なのになぜこのように断言できるのか?これを別の質問に置き換えてみると「ウミガメはなぜわざわざ上陸して産卵するのか?」です

中学校2年生理科「セキツイ動物のなかま」の単元で学習する(した)内容で,脊椎動物は魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類の5つに分けられ,魚類は水中に住む,両生類は水中に産卵するけど成体は上陸できる,爬虫類になると陸上で産卵し生活する,これは鳥類も同じで,哺乳類も陸上で暮らすが,先述の通り胎生,といった具合に水中から陸上へ進化とともに生息場所を変えながら卵も水中から陸上に適応していった,よく知られていることかとは思いますが,これが理解できていれば最初の問いの答えは簡単です

爬虫類は陸上に適応した卵しか産めないので(だからウミガメはわざわざ上陸して産卵するんです)もし魚竜が水中で産卵したとしたら卵は溺れて死んでしまいます,ならばウミガメのように上陸すれば…けれども,完全に水棲に適応したイルカのような形態の魚竜はもはや上陸することはできない,よって,ずっと水中で暮らしていたのなら卵胎生で繁殖していたとしか考えられない(実はこれ,化石の証拠もあります)ということです

魚竜と同じようなことは,絶滅した水棲爬虫類の首長竜(プレシオサウルス)にも当てはまることなので,この仲間も卵胎生であったと考えられています(これも化石の証拠があります)ところで,世代は違えど誰しもよくご存じ「ドラえもん のび太の恐竜」に登場するピー助は,フタバスズキリュウという首長竜がモデルなんですが,これはのび太が卵の化石を発掘し,タイムふろしきで蘇らせてピー助が誕生することから始まるストーリー,けれども,首長竜は実際には卵胎生で,しかも上陸することもできませんでした…(ドラえもんや藤子・F・不二雄先生のこと批判してるわけじゃないですよ!悪しからず)さらに,恐竜というのは系統分類学的には鳥盤類と竜盤類のことを指すので,魚竜や首長竜,それとかつて空を支配していた翼竜(プテラノドン)など,いずれも恐竜ではありません

(*これは以前,別ブログに掲載したものを改訂し,再掲しています)

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