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木下斉「まちづくり幻想ー地域再生はなぜこれほど失敗するのかー」

狂犬チャンネルを登録し、木下斉氏のnoteもフォローしていたから、購入したら誰かにおススメしようくらいの感じだったけれど、その都度読むのとは違い、一気に木下氏の考えをおさらいできたのは、とても良かった。
このまちづくり幻想、という言葉、地域が衰退する典型的な構造として「はじめに」の中で図示されていて、まちづくりに取り組もうとする前提の考え方である土台の思考が「幻想」になっているから、だから、ヒト・モノ・カネ・情報をインプットして、行動を起こしても、結果として失敗してしまう。そのおおもとの間違った土台のことを「まちづくり幻想」と呼んでいる。挙げられている事例は「よそ者・若者・馬鹿者」が地域を変える、とか、地域おこしといった言葉が出た辺りから言われ続けてきたことで、そのものが悪いのではない。けれど、それを文字通り受け止めて、「よそ者・若者・馬鹿者」がいればいい、あるいは、それがないからうちの地域はうまくいかないという言い訳に使われてしまうと、もはや幻想といわざるを得ないという。
その他にも事例として挙げられている「まちづくり幻想」は行政の中ではよく言われていたことだし、まだそれに凝り固まっている人もいる。国の予算を獲得することが偉いと思っている人もいる。まちなかにフィールドワークにも出ずに「うちの地域にもこういう人がいるといいのだけれど」みたいなことを平気で言う人がいるのもがっかりだ。残念ながら、完全に自分のものになっているわけではないから、そういう人にうまく理解してもらうことができないものももどかしい。
一方で、木下斉氏の本を読んだり、自ら勉強したり、まちに出ている仲間もいる。そういう人たちと話しているととても前向きになれるし、心強い。こうした仲間たちと一緒に少しでも手を動かし、進めていくことで、実績を積み上げて、幻想に凝り固まっている人たちに理解してもらわなければいけないのだろう。もちろんそれでもうまくいかないこともあるのかもしれないけれど。
この本の中で特に秀逸だと思ったのは、第5章の「まちづくり幻想を振り払え!」という部分。具体的にどのようなアクションを起こせばよいのか、ということが12項目にわたって書かれている。アクション1から5にかけては、自治体職員がすべきことになっている。私が実践できているかなと思えることは、「役所の外に出て、自分の顔を持とう」くらいだけれど、これについてももっと実践して、他のことにもどんどん取り組んでいきたい。
狂犬チャンネルを見ても、noteを読んでもいつもそうだけれど、励まされるし、悔しい思いをした相手の批判を代わりにしてくれてすっきりしたり、まだまだ自分は足りないと勇気づけられたりするけれど、この本もそうだった。明日からも頑張りたいし、この本で仲間を増やしたい。

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