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南学「統廃合だけでは対応できない! ポストコロナ社会の公共施設マネジメント」

去年の4月、緊急事態宣言が出て、色んなところで公共施設は休館となった。イベントは軒並み中止となった。そういう感染症があることは今までも想像はしていたけれど、それが現実のことになって、急に様々な変化が起きた。テレワーク、学校でのタブレット授業ももっとゆっくり進むと思っていたのが、一気に進んだ。オンライン会議やセミナー、飲み会。今までなら聞くことができなかったような話も自宅で、家事をしながら聞いたりもできる。不謹慎かもしれないけれど、ワンオペのイクメンママにとっては、この4月から翼が生えたような実感がある。飲み会なんて、年に1回親に頼み込んで出るか出ないかだったのが、全国各地の同業者との飲み会に自宅から参加できたりもした。
そんな中、行政サービスも変わりつつある。オンライン相談を始めるところが増え、講演会もzoomで開催されたりした。参加者は想定されていたよりも多かったりして、驚いた。その上、つつましい日本人も、チャットで質問できるとなると、ハードルが下がるのか、いつもよりも多く書き込まれていた。今まで参加できていた人が参加できなかったかもしれない。そんな風に言う人もいるだろう。でも、乳飲み子抱えて参加できない人が、子どもをおんぶしながら見ていたかもしれない。体調が芳しくなく参加を断念してた人が、ベッドの中で聞いていたかもしれない。リアルに開催したら遠方過ぎて参加できなかった人も参加できるかもしれない。
コロナの状況にもよるだろうけれど、例えば、デジタルに弱い人のためのリアル開催も併用しつつ、オンライン開催するとか、そんな選択肢ができてきたらいいなと思う。そうだとしたら、これからの公共施設はどんな風になるのだろうか。
そんな視点で公共施設について考えているのが、この本だ。著者は以前から、行政サービスについて「縮充」の時代が来ていると言っていた。つまり、社会課題は増える一方で、財政は厳しくなり、超高齢社会に突入して挽回することもなく、必要なサービスを厳選したり統合したりすることで、充実させていくことが大切ということ。しかしコロナでさらに制約が強くなり、課題も増え、となると、改めて必要なサービスは何かということを考えなければいけなくなってくるのだと思う。さらにその提供方法についても、今までと同じようにやればよいというわけではない。
公共施設はあくまでも行政サービスを提供するための手段であり、それがないとできないものではない。講演はオンラインでもできるし、相談も市役所に行かなくてもできることが分かったし、意外とzoomのチャット機能の方が質問が出ることも判明した。このコロナという状況下で分かったことを、今だけだから、これが終わったらまたもとの社会に戻せるから、ということで考えてはいけない。折しも、多くの自治体で、人口増加時代にたくさん作った公共施設が更新時期を迎え、今後どう公共施設の量を最適化するのか、ということを考えなければいけない時代になっている。コロナを経験しているのだから、より深い縮充を目指すという強い決意をしなければいけない。

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