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麓幸子 日経BPヒット総合研究所編「先進20社が実践する女性人材育成の戦略と施策 なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか」

2年くらい前にネット記事でこの本(あるいは麓氏または他の著者)が紹介されていて、かなり長いことスマホのタブを閉じないでいたのだけれど次の行動にうつさず、さらに購入してからも、他の本に紛れて後回しになり、ずっと読んでいなかった本。この正月休みに読みました。
書かれたのは2015年。日経womanの女性が活躍する会社Best100 2014ランキングの上位企業を中心に、そのダイバーシティ施策と効果について、まとめたものである。政府は、2020年の女性管理職の割合が30%という目標(略して2030)を掲げていた。まえがきの中では、「トップのコミットメントがあり、奏功性の高い施策を打てば、今から5年後の2020年、皆さまの会社でも、女性管理職がどこの職場でも普通に活躍している状態になっているのではないかと思います」と書かれているけれど、身の周りではあまりそういう雰囲気は感じられない。
なので、「2030年までの可能な限り早期」と目標年度が先送りされて2年、改めて読んでみたいと思った。

資生堂、住友生命保険、日本IBM、パソナグループ、ANAなどの様々な取り組みや目標、数名の社員の生の声などが紹介されていて、最後に、麓氏が総括として「女性管理職を増やすために組織が実行すべき5つの施策」を次のように挙げている。

トップがコミットメントしている。
数値目標を持ち、育成計画を作成し実行する
男性管理職の意識変容を促し、女性に成長機会を与える上司を増やす
女性の意識変容を促し、キャリア意識を高める取り組みをする
組織全体の生産性を上げる働き方改革を実行する

ほとんどの企業が、これらのどれかを実践していたのではなく、複数、あるいはすべてを実践していた。そして、それぞれが別々に動いているわけではなく、相互に連携している。
例えば、トップがコミットメントして、女性の登用を進めるという発言をすると、男性管理職の意識が変えられるとともに、「励みになった」という女性社員の声があったりして、女性のモチベーションに繋がったりもしている。また、女性が子育てしやすいように、時短や転勤なしなどの制度をしっかり整備しても、結局は離職してしまうという経験から、キャリア意識を高めるために、若いうちから育成計画を作成し、成長機会を与える人事を行うといった取り組みがされている。

本当は、女性だろうが男性だろうが、昇進したい人もいれば、そうではない人もいるわけで、また持っている能力も様々なのだと思う。けれど、現実は、人事における結果を全て、男だから、女だから、と片付けてしまい、結果としてこのような状況になっているのではないか。
自分が係長になって、小さなチームを構成する立場になって、マネジメントというのは難しいということだ。とりあえずこの場をしのげればいいというのなら、一番優秀そうな人に重めの仕事を任せて、後は適当に割り振るという方法もあるのかもしれないけれど、次年度以降のことを考えるとそういうわけにはいかない。その優秀そうな人が異動したら、もうその人が持っている仕事ができなくなる、というわけにはいかないし、他の人が自分たちは補佐的な仕事だけさせられている、と感じてモチベーションが下がってしまうのは恐ろしい。そもそもあらゆる方向に長けている人なんているわけではなくて、大胆かつ慎重、スピード感かつじっくりみたいなことはないわけだから、何が得意か、とか、これまでの経験などを踏まえながら、考えなければいけないし、チームの中でどう補い合うかということを考えなければいけない。
なんていうことを真面目に考えていたら、男だとか女だとか、そんな雑な分け方なんてしていられないのではないかと思う。もちろん私のやり方が良いのかどうかも分からないけれど、
また、もう一つ思うのが、よく育休明けの職員は使いにくいみたいな話もあるが、あれはどうなんだろうか。子育て世代や若者に選ばれるまちづくり、なんて掲げている場合には、むしろ、その現場を知っている人たちが、自分たちの感覚を活かした仕事を担ってもらう、という考え方も必要だと思う。育休時代は、昼間のスーパーにいき、子育て施設に行き、公園を散歩し、とにかくまちに出る。時短でも復帰すれば保育所を利用しながら、子どもが病気になれば、小児科にかかり、病児保育に預け、配偶者と協力しあって子育てと仕事の両立を図っている。子育て世代の現実を、いやというほど知っているのだ。
じゃあ、一日中パソコンの前に座っていて仕事をしている人は、何を知っているというのだろうか。もちろん仕事の合間に現場に出たり、プライベートで勉強したり、土日に育児や子育てをしている人もいるかもしれない。それだったらどっぷり浸かっているほどではなくても、肌感覚みたいなものは身についていると思う。
でもそうでもなくて、ただ組織の中の情報や、新聞などの二次的情報だけを頭に詰め込んで、パソコンの前に座っていたり、会議室でしゃべっているだけの人だったとして、社会の何が分かるというのだろうか。むしろ、私から見れば、固定観念に縛られ、世の中のリアルな流れに気付いていないのではないかと思ってしまう。

とはいえ、この本を長いことそのままにしていたのは、自分自身の今の立場に不満を抱えていないからなのだと思う。それは、意識が足りないということになるのだろうか。
諸外国では、育休後に昇進したりすることもあるそうで、育休を取った年数分、いや、それ以上に女性の昇進が遅れる日本とはだいぶ違う。急に変えるのはいろいろとひずみが出そうだけれど、「2030年までの可能な限り早期」に女性の登用率30%達成という目標をさらに先延ばしすることのないように、自分の立場からできることも考えてみたい。


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