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日高由美子「なんでも図解――絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術」

最初に「おわりに」のことを書いてよいのか分からないけれど、とても印象的だったので先に紹介します。講座を始めたばかりの頃「今日はとても楽しく、開放感を覚えました。でも僕の会社では、今日習ったことを使えるとは思えないんですよね」という感想を残して帰って行った若いビジネスパーソンがいたとのこと。最近になってようやく、グラレコを用いた会議やWSを聞くようになったけれど、実際は会議は重苦しい雰囲気の中で言葉のやりとりで行われることが多く、まして当時は「図解しながら議論したい」なんて、とても言い出せる雰囲気ではなかったでしょう。その言葉がきっかけになり、参加者の仕事につながるスキルをどう再現性のある形で伝えるか、を考え、感覚的・感情的な表現で伝えがちな講座の内容を見直し、徹底的に具ラッシュアップしたそうです。
私が最初にグラレコを知ったのは、2017年、他の自治体でやっていた研修に参加させてもらったのがきっかけ。他からの参加を受け付けることだけでも新鮮だったけど、その会場で、講師とは別にホワイトボードに向かい、講師の話をイラスト入りで記録する方がいたこと。とても素敵なイラストだったけれど、当時の私は、講師の話を全部理解するためにはやっぱり文字の方が情報量が多いのではないか、と考えたりしたものでした。
次の年、異動した職場で、グラレコをする同僚がいました。まだ練習中だから、と言って、会場の後ろでホワイトボードに書いていたのだけれど、あの講師や研修を開催した方以外でも、こういうのを大切にする人がいたんだ、と驚きました。その辺りからは、認知して気付くようになったというか、もう次々と、グラレコをする人たちが見えてくるようになりました。
その同僚は職場に提出する報告書にも、レジュメの隅にグラレコを書いたりしていました。供覧されてきたそれを見て、「これ、出しちゃうんですか?」と私は尋ねると、「いいんですよ」と笑っています。その同僚はすごく仕事ができて、上司たちからの信頼が厚いから、何をやっても許されるだろうなと考えたりもしました。そして、やっぱり身近な人がやっているということに刺激されて、私も自分でこっそり書いてみたりするようになりました。さらに、マネをして、研修の報告書の一部に、全体をコンパクトにまとめたグラレコを加えてみたりもしました。レジュメそのものがものすごく長くて読んでもらえないことがあったので。でもどう思われるか心配で、テキスト文書をつけましたが。その辺りから、講義を受ける機会があれば、ノートテイクは必ずグラレコでやる習慣が身に付きました。
とはいえ、これまでグラレコで作成したのは、ほとんど自分のためでした。だって、何だか恥ずかしいし、うまく伝わるか分からないし。
でも、この本を読んで、そろそろコミュニケーション手段としての図解にチャレンジしなければ、と思いました。自分のためだけでは、雑になりがちだし、そもそも、記憶を呼び起こすトリガー程度ですむわけなので、上達しないのも当たり前です。仮に自分の記録であったとしても、時間を隔てた自分が今と同じように理解できるかは分からなくて、だから、誰にでも伝わるようなものを書かなければ、そもそもちゃんとした記録にならないわけなのだ。グラレコの本来の意図を知って、こそこそ書きながら、もう5年近く、誰かとその場で共有するということをやってこなかったのです。
本では、図解のメリットや効果について、本の中での受講生である田中さんの体験談を通じて説明しています。そして、田中さんも私と同様に見せる自信がないので、絵心がなくても大丈夫、と説得しています。いくつかの考え方や図解のルール的なことが提示された後は、実践。短い文章があり、それについて時間内に図解をする、という練習問題が用意されていました。やっぱり自分で手を動かして書いてみると、なんとなく分かった気になっても実は身についていない、ということが明らかになります。私が書いた図と同じものが事例として出ていることもあり、そのどこに分かりにくいか、を指摘してくれるのはありがたいです。
誰かと一緒にできたら楽しいだろうな、と思いました。講座だとグループで見せあえるので、いろいろな気付きがあるかもしれません。
さらに、動画の音声を聞きながら書く練習、といったことも用意されています。1分くらいの話でも図解をするのはとても大変で、思ったように記録できないし、構造も複雑化するので、表現するのが大変でした。解説を見ると、こんな風に書けばよかったのか、と納得します。
全部の問題をやってみたら、もう次は、自分が日常で、仕事の中で聞いた言葉を、図解して共有しながらトレーニングしていくしかないです。というわけで、ひとまず、この本から得た一番大事なことを図解してみます(見出し画像に掲載しました)。

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