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島田正樹「仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン」

公務員ライターの話を聞いたり読んだりすると、どうせ、庶務みたいな下働きみたいな仕事はしてこなかったんでしょ、と少し斜めに構えて聞いてしまう。この方は専門職というし、多分やってこなかっただろう。でも、今回ばかりは、素直に聞くことができた。ここ数年そういう仕事から離れられて、ひねくれた気持ちが消えていたのもあるかもしれないけれど、どう対処すればよいか、ということがとても具体的で、取り組んでみようという気持ちにさせるものだからだと思う。
「望まない異動でくさる前に、置かれた場所で咲こう」という章。内示を見ても一喜一憂するのは待ってほしい、というのです。仮に望む部署に異動できても期待していたような仕事ができなかったり、職場の人間関係で悩むことがあるかもしれない。逆に望まない場所だったとしても、やってみたら自分に向いていることに気付いたり、人間関係がよくて楽しく働けることもある。「つまり、希望が叶っても叶わなくても異動先で出会う人や与えられる仕事とどう向き合うかによって、私たちのキャリアは大きく変わる可能性がある」というのです。
さらに島田氏は、自ら主体的に、異動の意義を考えてみることを薦めています。実際には人事異動にどういう意味があったのか分からないけれど、自分にとってどういう意味があるのか、ということで納得して自分の仕事と向き合うことができるというのです。
これは他の章で書かれていた臨床心理学者のアルバート・エリスが提唱したABC理論というものの実践なのだと思います。Aという出来事について、その人の信念や捉え方(B)を通して、結果としての感情や行動(C)が引き起こされるというものです。異動(A)について、意味付け(B)を行うことで、納得して仕事と向き合う(C)ことができるということなのだと思います。とはいえ腹落ちするような意味付けができなければ、なかなか納得して仕事を向き合うことは難しいでしょうけれど、腹落ちするまで考えるということなのかもしれません。
私は希望しない庶務事務をやっていた時、できるだけ早く片づけて、自分がやりたいと思う仕事に取り組む時間を捻出していました。特に子育て中に庶務事務になった時は、限界がありましたが、それでもそういう仕事を週に何時間かすることができるだけで、気持ちが前向きになっていたのを思い出します。けれど、過去のこととはいえ、自分の担当事務に意味付けをしてみて、振り返ってみたいと少し考えてみました。例えば私は細かいことが苦手なので、だからそれを克服するようにさせられていたのか、とか。あるいは、庁内の多くの照会を受けて振り分けてまとめなければいけない部署にいたからこそ、自分が照会する側になる時には、受けて側の作業をできるだけ効率的にしようと心掛けることを考えるようになったとか。まだ十分にそれができているかどうかの自信はありませんが。
とても重い案件をいくつも抱えていて不安におちいることもあります。こういうのは性格によるのかもしれませんが、私は基本的にはうまくいくのだろうかと不安になるタイプ。120%の準備ができれば落ち着けるかもしれませんが、限られた時間でやるには限界があります。それに対しては「仕事に必要なのは時間の余裕より、心の余裕」という章を見つけました。

「一人で」×「大きなもの」はキケン
「一人で」「大きなもの」を抱えた状態でいることは、心の余裕を奪うことになるのです。(中略)
このような場面で心の余裕をつくるには、その逆の状態、つまり、「一緒に背負ってくれる人を増やし、背負うものを分解して小さくすること」が効果的です。

そう、同じ状況であっても、上司が理解してくれていると落ち着くものです。逆にうまく伝わっていない、理解してくれていない、あるいは、投げ出された、と感じる時はとてつもない不安に陥ります。もちろん上司の方から察してくれれば良いのかもしれませんが、それに期待していても仕方がないので、下の立場からも対処していかなければいけないのです。
その他にも、苦手な上司との付き合い方や、元気が出ないときには自分で自分をほめるなど、すごく気持ちが楽になる章がたくさんありました。自分はすぐにストレスをためてしまう方という感覚でいましたが、島田さんご自身も、その周りで関わる方々も同じような悩みを抱えているから、このような章立てになったわけで、ひょっとしたら平気に見える周りの人たちも、同じような悩みを抱えているのかもしれないとふと思ったりもしました。こういうことを乗り越えていくと、島田さんのようにのびのびと仕事ができるようになるのかもしれません。
その他、公務員としての仕事をどう自分の人生の中でとらえていくか、というところなど、とても共感できました。私自身も、自分の人生の一つである公務員としての働き方をデザインして、「誰もが楽しく暮らせる社会」という目標を目指したいと改めて思いました。


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