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宮田泰介・上田昌文「実践 自分で調べる技術」

いつも常に意識しているわけではないけれど、仕事をしていると随所に根拠を求められる。ビシッと数字が出せればそれはよいのだけれど、この数字は本当にこの意味で理解してよいのだろうか、と思うこともある。XをYに変えることで、この課題が解決すると思われるからYにする、という説明で出した数字が、本当はXには関係がなく、Zという事象で起きていた課題だった、みたいな。

当たり前のことだけれど、何かを変えるのは勇気がいるし、実は、XをXのまま続けていてよいのか、ということにも本来は根拠が必要だ(でもなんとなく、継続することに関してはあまり厳しく問われなかったりするかも)。
だから、PDCAサイクルのCはとても大切。

でも、実は計画を作るときのCとしてKPI(Key Performance Indicator 重要業績評価指標)を設定するわけだけれど、実践する前の目標とかって意外と全く見当がつかなかったりする。それこそ、XをYに変えるとかの場合だったら、Xの時にこれくらいの数字が出ていたからYだったらこれくらいかな、と想像できるけれど、ゼロからスタートする場合、どれくらいの数字を出したいという目標は本当に難しい。
また、KPIに到達した場合も、しなかった場合も、その要因を分析するためには、どこがどう効いたからそうなったのか、ということが見えないと、本当のCはできないと思われる。だから、そのための調査はとても大切になる。

今の部署はシティプロモーション。色んな自治体が色んなことをやっていて、〇〇市ではこんなことをやっていたよ、とか、△△町はやってるのになんでやらないの、といった声が聞こえてくる。そういうことは人件費だけでできることもあり(これは自治体あるあるですが、マンパワーは貴重な資源として認識されにくい)、他でやっていることをやらないことをやらないといけない雰囲気がある。
でも現実的には、人的資源は限られているわけで、できることには限界があり、優先順位をつけて仕事をしなければいけない。こういう優先順位のつけ方にも根拠が必要で、調査が重要になってくる。

そんな思いもあって、この本を読んでみることにした。2年くらい前に図書館の「今日返却された本」の棚の中で見つけて、気になっていつか読もうと思って予約リストに入れていたものを、今回借りてみることにした。

調査の種類は6種類に分類できる。まず大きく量的、質的に分けられ、それぞれに3種ずつがある。

量的調査⇒統計調査、質問紙調査、測定

質的調査⇒文献・資料調査、聞き取り調査、観察

何かを調べる時には、これを必要に応じて組み合わせて、つまり、調査をデザインすることが必要になる。

本には、6つの調査の具体的なやり方と、そのデザインの方法について書かれている。特に文献・資料調査に関しては、学生時代に論文を書くときには使ったことがあるものもあったけれど、だいぶ離れていたな、と改めて思った。国立国会図書館サーチをはじめ、様々な検索ツールがその特徴と合わせて記載されていて、分かりやすかった。
それ以外のことについても、あまり意識せずやっていたことも、振り返るよいきっかけになった。聞き取り調査や観察に関しては、フィールドワーク、という形でまとめて記載されていたけれど、その章の最後に「調査倫理」という短い節が加えられていて、「調査は特権ではない」、「あたりまえですが、『調査だから』といって何か特権的に許されるものはひとつもありません。どんな調査であれ、また、どんな相手であれ、それは同じです」ということが書かれているのが印象的だった。
後半はリスクに関して調べる技術について章が割かれていて、医学論文などの調べ方、英語論文のポイントを絞った理解の仕方などについて説明されている。
最後は、その調べたことをどうまとめ、アウトプットしていくか、ということについて記載されている。

一つの調査手法を用いることで全てが説明できるわけではなくて、何かを明らかにするのにいくつかの調査を組み合わせなければいけなくて、それが調査のデザインということになるのだと思う。

今の仕事でいえば、既存の統計調査をたまにひっぱってきたりしつつ、自前でアンケート調査をやったりして、また事業のアウトプットについては測定している(ウェブのアクセス数とか動画の再生回数とか)。文献・資料調査は体系的というよりは評判になっている本を読んでいる感じ、加えて職場で購入している専門誌を読んだりしている。観察はSNS限定だけど、どう情報がシェアされたりしているかを見ていたりする。あと、新聞チェックもそういうことになるのかもしれない。でも聞き取り調査に関しては、コンテンツになりそうなものに関しては、フィールドワークしてみたりしているけれど、自分たちの発信がどう受け止められているか、については、あまりやっていなかったのかもしれない。

このアンバランスは自分の思考にも影響をするのか、今はなんとなく、何か言われた時にすぐに返せなくて、後からこう返せばよかった、とか考えてもやもやしてしまうことが多々ある。
だから調査のデザインというのはとても大事だと理解した。

そして本はアウトプットのところで終わっているけれど、私はPDCAサイクルの中のCを考えているので、そのあとのAのためのCheckでなければならないので、その続きも考えなければいけない。

最後に本の中で紹介されていたサイトをいくつか紹介します。

↑国会図書館の蔵書に加え、J-STAGE、IRDBといった論文PDFが入手できるサイトとも連動しています。

↑「世界中の本をスキャンしてデータベース化するという壮大な野望をもったもの」とのことで、日本語の本もかなり対応しているとのことです。他にGoogleは論文検索できるGoogle Scholarsというサイトもあります。

↑仕事でたまに調べていますが、便利です。

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