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駒村康平編著「社会のしんがり」

 ここに収められているのは、地域の困窮と闘う11人のしんがり、とのこと。福祉といえば、戦い、というイメージよりは、平和とか、やさしさとか、そんな感じがしていました。でもそれは、絶対にあきらめられない、戦いなのだということがよく分かりました。

 この本は、2014年から2018年にかけての5年間、慶應義塾大学経済学部における全労済協会寄付講座「生活保障の再構築——自ら選択する福祉社会」の講座の内容を収録したものとのことです。毎年14回にわたる講座のカリキュラムが組まれ、例年登場する方もいれば、1回のみの方もいます。本の中に収録されている方以外の取り組みも非常に興味深く、460ページにわたる分厚い本でしたが、それぞれの想いが強く、とてもひきつけられました。
社会課題と一括りにいっても、その中身は多岐に渡ります。子ども・若者、貧困・社会的孤立、障害者問題、この3分野に加えて、多岐に渡る課題を解決するための地域社会の取り組み、という括りで、全部で11人の講義の内容が紹介されています。

第1章 子ども・若者の貧困と地域の居場所づくり
NPO法人さいたまユースポートネット代表 青砥 恭

第2章 逆境から自立する子どもにチャンスを
児童養護施設から自立する子どもが直面する課題
東北福祉大学特任教授 池上和子

第3章 生活困窮者への伴走型支援のかたちを探る
東八幡キリスト教会牧師 NPO法人抱撲理事長 奥田智志

第4章 ひきこもり等で孤立する子ども・若者をアウトリーチで支援する
NPOステューデント・サポート・フェイス代表 谷口仁史

第5章 発達障害の人の困りごとを解決するのはユニバーサル社会の第一歩
元一般社団法人発達障害ネットワーク事務局長 橋口亜希子

第6章 ダイバーシティ社会・障害者雇用支援
日本財団国内事業開発チーム シニアオフィサー  竹村利道

第7章 障害者雇用の新潮流
オムロン京都太陽株式会社 前代表取締役社長 宮地功

第8章 生活保障の再構築と全員参加社会の構築—自ら選択する福祉社会
秋田県藤里町 社会福祉協議会会長 菊池まゆみ

第9章 制度のはざまから社会福祉を見直す
大阪府豊中市 社会福祉協議会 事務局次長兼福祉社会推進室長 勝部麗子

第10章 生活困窮者と家計相談支援ー野洲市が取り組む相談支援
滋賀県野洲市 市民生活相談課長 生水裕美

第11章 個人で生きる社会から江戸時代の社会へ 共生社会の実現へ向けてー地方都市の生き残りをかけた挑戦
三重県名張市長 亀井利克

たくさん事例が出てきたので、考えるというよりはつい情報に飛びついてしまい、まだ消化しきれていませんが、少しずつ自分の地域のことと照らし合わせながら、考えてみたいと思います。

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