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清水義次監修「まんが あなたもできる! 公民連携のまちづくり 岩手オガールで芽吹いたパブリック・マインド」

いつかこのまちを出て、どこか違う場所で暮らしたい。そんな気持ちを漠然と持っている人がいたら、この本を手にとってもらいたい。多分、引っ越したら幸せになれるかもしれないと思っているということは、自分がまちの中で生かされているということを知っているからなんじゃないからと思うからだ。
オガールがどんな風にしてできたかについては、猪谷千春氏の「町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト」の方が細かく書かれているけれど、この本は今の姿から始まっている。どうしてこんな素敵な場所になったのか、その秘密が明かされる形になっている。この場所が素敵だなと思った人が、手にとって、じゃあ、自分のまちもこんな風にできたらいいな、という気持ちになったらいいという願いが込められている気がした。実際、監修者である清水氏のこんな発言が引用されている。

「日本はたいていの地域で恵まれた条件が揃っています。インフラがしっかりとあるのです。(中略)日本ならどの地域でもやればできるのです。あとは、自分たちはどう自分たちらしくあろうか。自分たちの土地の特色をどう出そうか。そう発想していけばいい」

オガールという言葉は、地域の方言で育つという意味のおがると、フランス語の駅「gare」を掛け合わせたものだという。そういえば未来予想図の書き出しも「魅力的なブールバールのある街の朝は」と始まっていて、フランス語の大通りという言葉が使われている。少しだけフランスで生活したことがあるのだけれど、その時に感じたのは、誰も自分の住んでいる町が好き、だということ。私がフランス語を教わっていた先生も、どこのブーランジェリーがおいしいか、どこのマルシェがいいか、そういうのを話し始めたらすごく楽しそうで、いろいろなことを教えてくれた。パリのオルセー美術館ももともとは駅だったし、駅舎を利用したレストラン「ラガール」もある。駅だけでなく、古いものをリノベーションして使うということが自然に行われていた気がする。まちを大切に思う文化が根付いているのだと思う。通りには色んな花が植えられていて、すごく予算がかけられているのだろうなと思った。一方で、犬の糞は通りの随所に袋が設置されているけれど、うまく機能していなくて、全てがうまくいっているわけではないのかもしれないけれど。
この本を読むと、ただ自分がまちに生かされているだけじゃなくて、まちに対しても自分から影響を与えることができるのかもしれない、という気持ちになれそうな気がする。それはどんなに小さな行動であったとしても、例えば、どこで飲み物を買うか、ということくらいだったとしても、影響を与えることができる。思いついたことを実際にやってみて、それが実感できたら、「住みたい町は自分たちでつくる!!」の最初の一歩になる気がする。

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