見出し画像

ロバート・ラムスセン 蓮沼孝 石原正雄 編著「戦略を形にする思考術 レゴ®シリアスプレイ®で組織はよみがえる」

 いくつの時だったかは覚えていないけれど、我が家にレゴがやってきた。既に私は小学生になっていて、他にもいろいろ興味が出ていて、ブロックで遊んだりすることはなかった。けれどもレゴにはすごいものがついていた。それにはつぶらな目でにっこり笑った親指くらいのサイズの人形だった。なんてかわいいんだろう。私も3歳年下の弟と一緒にいろいろ作ってみた記憶がある。
 今回、職場内のプロジェクトチームの運営で、レゴを用いたワークに関わることになった。発案者は私たちの上司。自身がレゴ®シリアスプレイ®のファシリテータの資格をプライベートで取り、その手法を使いたいということだった。私たちは事務局としての参加だったけれど、一部を体験させてもらった。実は、数年前に職場の同僚が休みの日にレゴを使った研修に参加してきたという話をしていたので、そういうものがあることはうっすら知っていた。なので、とても楽しみだった。メンバーは20代、職場内で手を挙げてきた7名。レゴを用いたワークに慣れるための最初のセットや、その後のワークのためのもっとたくさんの種類のレゴをファシリテーター自身が容易してきてくれた。進行の手伝いや写真撮影などの合間に、私たちもワークに参加できるよう、最初のセットは私たちの分もあった。容器の中には、小さなピンク色の花や、旗もあり、今の時代はこんなパーツもあるんだ、とワクワク感が止まらなかった。
 最初のワークは「タワー」というお題を与えられて5分間で作る。5分は長いようで意外と短い。自分がイメージしたことを最後まで作ることはできなかった。参加者も途中までしかできなかった、という人が多かったけれど、それぞれ作ったものは全く違っていた。どんな考えで作ったのか、作品を見せながら、お互いに説明し合った。
 プロジェクトチームのメンバーはその後も様々なワークに取り組んだ。最終的には、それぞれが作った作品2種類、全てのメンバーの分をつなぎ合わせて、最後、プロジェクトのゴールイメージを共有した。大切なのは、それぞれの作品の中に表れている個性や考えを尊重すること、そしてそれを理解し、共有すること。メンバーの個性や考えは本人が意識しているものだけでなく、形を作り上げることで顕在化する無意識のエリアについても掘り起こす。そのチームで最大の効果を出すためには、それぞれの個性や価値観を尊重し、それをみんなが描くゴールのために使っていくということを意識させつつ、ゴールの共通認識を持つということなのだ。
 どこの組織でもそうなのかもしれないが、よくうちの職場では、「自分ごとで取り組まないといけない」と言われる。やる気がない、みたいな感覚で、責められている感じがした。だから私はその言葉が好きではなかった。私たちの自分ごとは何かということを問われることもなく、ただ組織の考えを押し付けられている。なので私は勝手に「やらなければいけないこと」を自分が納得できるように解釈しなおし、自分のやりたいことと重なるようにして、仕事をしてきた。
 でも今回のワークは、それでいいんだ、自分が納得できるような形で仕事してよいんだ、と言ってもらえているような気がした。それで、そもそもこのレゴ®シリアスプレイ®がどんなものなのか、ということを知りたくて、開発者が書いた本を読むことにした。
 特に印象に残ったのは、開発者のロバート・ラスムセンが「組織の中で、会議の時間で、黙ってしまう人にこそ光を当てて、その人の意見を汲み取るべきだ」と考えていることだった。確かに会議において、発言者の発言だけで会議の流れが進んでしまい、自分の考えをうまく表現できない人は置いて行かれることになる。結果として、そういう人たちの意見だけが採用される。けれど仕事をする時には、会議で発言しなかった人も、参加することになる。その際、黙っていたアイデアを使った方がもっと成果が上がったかもしれない。また黙っていた人が、会議で決まったことに完全に納得していなければ、どこかひずみが生じて、成果を最大にできないかもしれない。さらに日本人編著のお二人によるまえがきの中で、この手法は日本人に向いているのではないか、書かれていることも印象的だった。
 このレゴ®シリアスプレイ®を色んな場で使うことができたらすごく楽しそうだし、成果が得られそうだ。まずは、すぐにできることとして、何かをする時には1対1で対話をしながらできるだけ関わる人の価値観や考え方を尊重しつつ、取り組んでいきたいと思った。また、仕事の場だけでなく、家族や、あるいは一人で自分の潜在意識と向き合う方法などについても書かれていたので、新しいパーツを買い足してやってみたいな、と思った。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?