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小紫雅史「市民と行政がタッグを組む!生駒市発!『自治体3.0』のまちづくり」

私が市役所に入庁した頃は、市民はお客様、という感覚を持たなければいけないと言われてきた。民間が顧客満足なら、市役所は市民満足を目指さなければいけない。そんな風に指導されてきた。電話でも窓口でも、何か課題があって市役所を訪れ、それが解決できたり、納得してもらい、帰ってもらうことと、達成感が得られた。そういう努力をしていても、市民にはまだお役所仕事だ、とか、上から目線だ、と言われたりして、悲しい思いをすることもある。
それが少しずつ、変わってきているのは、何となく感じていた。例えば、市民意見を聞くためにワークショップを開催する。市民はどんな風なまちにしたいか意見を言う。最後の感想のところで、「私たちが提案をしたんだから、あとは行政が頑張ってください」という感想を言った方がいた。もちろん時間を割いて、私たちの都合で開いたワークショップに参加していただいたことはとてもありがたいことだと思う。でも何だか落ち着かない気持ちになった。これは違うんじゃないか。せめて私たちの税金をどう使っていくか、今後も見守っていくとか、形になったら自分たちも積極的に取り組みに参加するとか、そういう言葉だったら、納得できたかもしれない。

この本の本である生駒市長の小紫雅史氏は、そういう違和感レベルをブレイクスルーして、「市民を単なる『お客様にする』自治体は崩壊する」と言い切っている。市民と行政がタッグを組み、ともに汗をかくことを「自治体3.0」と言う。それは感覚的なものではなく、市民意識調査の結果に裏付けられている。市民の定住意向率は84.7%ととんでもなく高い数値が出ている。その性質を見ると、まちづくりに積極的に取り組んでいる人の定住意向や満足度が高い。もちろん定住意向が強いからまちづくりに取り組むということも考えられるが、生駒市は住宅都市であるから、利便性により選んでいる人も多くいると考えられる。だから必ずしも定住意向が強ければまちづくりに取り組むとは言い切れない。
「住めば都」とか「郷に行ったら郷に従え」ということわざがあるけれど、ひょっとすると、住むとか郷に従うとかいう言葉は、まちに積極的に関わるという意味だったのかもしれない。

もちろん、生駒市は様々な面において先進的な自治体で、いちはやく副業解禁をアピールしたり、シティプロモーションが有名だったり、採用が特徴的だったりと特筆すべき施策は枚挙にいとまがない。けれども、本の中で取り上げられている事例の中には、様々な自治体でも取り入れられているものがあったりする。ただそこで、市民にどんどん活躍していただく、というマインドがあるかないか、というのが大きな違いが出ている気がした。
市役所の外に人脈を広げていくと、どんどん素敵な人につながっていく。私のように思う存分にはフィールドワークできない人間であっても、少しずつ、色んな人と知り合うことができるようになった。そうすると、色んな人が色んなことを考えていることが分かる。まちのことを本気で考えている人がたくさんいる。
市役所は、そういう人たちがどんどん活躍できるようにしなければいけない。そして、そんな風にまちづくりにそこまで関心はないという人でも、ちょっとだけまちのために何かできるようなしくみのようなものがあって、ちょっとまちのためにできたなという気持ちになれて、その体験の積み重ねによって、まちに生きている感覚を育てているような感じになったら、まちにたいする気持ちが変わってくるのではないかなと思った。

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